石じじいの話・奇石趣味変態列伝3
石じじいの話です。
さらに、石変人が登場します。
石と一緒にため池で泳いで溺死した人がいたそうです。
初夏の爽やかな日。
奇石趣味の男性が、日ごろ大切にして自慢していた大きな翡翠を背中に背負って、池に泳ぎに生きました。
家人は、まさか、その石を背負って池に入るとは思わず、「あ、いってらっしゃい、おはようおかえり」と気軽に送り出しました。
彼は、池の底に沈みました。
死体の背中には、おんぶ紐によって、翡翠がしっかりと固定されていました。
さて、これはどういうことなのだろう?
事故死?
自殺?
まさか、他殺ではないだろう。
しかし、池に泳ぎに行ったというのは、家人の証言しかなく、池で彼が溺死したところの目撃者はいませんでした。
自殺する動機はまったくないと思われました。
まあ、人は、他人が思い当たる動機もなく突然自殺することは多いのですが。
事故死といっても、「大事な石といっしょに泳ぎたい」という考えは、常人の理解力を超えています。
結局、事故死ということになったそうですが、生命保険の支払いで、非常に揉めたそうです。
予想されることです。
彼を溺死させた翡翠は、縁起が悪いということで、家族が捨てようとしたのを、じじいが譲り受けました。
それを売って、じじいは儲けたそうです。
「じいちゃん、人が死んでもうけとったんやないか?」




