石じじいの話・奇石趣味変態列伝2
石じじいの話です。
まだまだ、石変人が登場します。
借金を自分の集めた石で払おうとした人がいたそうです。
まるで、ヤップ島の石貨のようです。
その人は、奇石趣味の人で、じじいの上得意の一人でした。
彼は、事業のために、多額の借金を背負っていました。
ある日、債権者が、その借金を彼のもとに取り立てに行くと、彼は言ったそうです。
「よし、払ってやろう!この石でな!」
そう言うと、彼は、部屋の片隅にある木のりんご箱を指さしました。
債権者は、「ほうほう、この箱の中に札束があるのか!」とホクホクしたのですが、彼の気体は粉々に砕かれました。
たくさんの石によって。
箱の中には、石ころがぎっしりと詰まっていたのです。
珍しい価値のある石が?
いや、どこにでもある普通の石が。
そこらの河原にいくと、たくさん手に入る砂利でした。
唖然としていた債権者は、気を取り直して怒りだしました。
「あんた!ぞえなよっ!こがいな石もろうてなにんなるんぞっ!きちXいになったんかっ!」
彼は、平然と言いました。ちょっと憮然として。
「何を言うとるんぞ。こがいな珍しい石には、なかなかお目にかかれんぞ。舶来もんで日本では見つからんのぞ。」
嘘です。
部落の端を流れる川で手に入るものです。
いや、そこでは、もっときれいな石さえ手にはいります。
このときの交渉は決裂。
その後、何度も返済交渉が行われますが、「石で払う!」の一点張りでした。
結局、どうなったか?
彼は、死にました。
「事故死」です。
それで返済すると主張していた石の入った木箱を、天袋に入れようとしていて、手と足を滑らせて倒れたときに、その箱で首の骨を潰されたのです。
なぜ、天袋へ入れる?
鍵がかからないのだから、貴重品を入れるには適さないでしょう。
それほど、河原の石がだいじなら、金庫に入れておけばいいのです。
ほんとうに事故死か?
じじいだけでなく、他の人たちも疑いをもったそうです。
なにせ、彼の死によって、借金はきちんと返済されたのですから。
石を、借金を返さないというような不道徳なことに使った罰だと言う人もいたようですが、まあ、笑い話のようなものでした。
彼の死後、彼の収集していた「価値のある金になる石」は、石じじいの仲介によって、すべて現金にかえられました。
そのときに、じじいは、少しのコミッションをもらったようです。
持ち主が借金の返済にあてようとしていた「くず石」は、じじいがゆずりうけました。
というより、川へ捨ててくれ、と頼まれたのです。
じじいが、あらためてその「くず石」を調べてみると、たった一つですが、非常に貴重な石が混じっていて、それで、じじいは儲けることとなりました。
望外の喜びです。
しかし、その石を売ったお金だけでは、持ち主の借金の返済は不可能であり、まさに、「焼け石に水」だったそうです。




