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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・雪の怪談

石じじいの話です。


皆さんのお住まいの地域では、雪が積もりますか?

じじいの故郷は南の地方なので、雪はそれほど降りません。

しかし、標高が高い山岳地帯だったので、冬は寒かったですね。

私が子供の頃は現在よりも冬は寒く、数年に一度、1メートル近い積雪がありました。

じじいによると、石探しのためには雪は困りものでした。

雪が1センチでも地面に積もると岩石がよく見えないのです。

雪を露頭から払う作業が重労働でした。

しかし、その地域が有名な岩石・鉱物・化石の産地であり、採集する競争相手がいる場合は、雪、というよりも雪が降る冬は、だいじな季節でした。

深い積雪があると石探しは無理なのですが、少しでも雪が融ける冬の終わり(早春)になると、競争相手を出し抜くために、「危険な」雪山に出かけることになります。

そこに、怪異が待っています。


夏に、豪雪地帯に石探しのためにおもむいたときに、地元の人から聞いた話だそうです*。

雪国では、春になって積雪が消えると、雪の中からいろいろなものが出てきます。

人の死体も例外ではありませんでした。

冬の間に倒れて亡くなった人が発見されることなく、春まで雪の中に埋もれているのです。

ある冬、男性が仕事で雪山に入ったまま帰りませんでした。

遭難したのだろうということで、地元の人々が捜索したのですが、みつかりません。

そのうち、雪が降り始め、それが大雪となり、ついに根雪となってしまいました。

これでは、捜索する側も遭難の危険があるということで、その時の捜索は終了せざるえませんでした。

その後も、何度か危険をおかして捜索は行われたのですが、あまりにも積雪が深く、彼を発見できませんでした。

次の春、少し暖かくなると、地元の人々はまちかねて、捜索に向かいました。

まだ、積雪はありましたが、里のほうでは雪は融け始めていたのです。

捜索していると、山の斜面で円形に雪が融けた場所がありました。

ほとんど完全な円形で、雪が完全に消えて黒い地面が露出していました。

その円の外側は、まだ雪が厚く積もっていたのにです。

その円の真ん中に、遭難した彼は膝を曲げて縮こまるように死んでいました。

彼は、足を怪我しており、おそらくそれによって下山できず凍死したのだろうと考えられました。

その雪が融けた場所は、他の場所と比べて暖かいというわけではありませんでした。

むしろ、北斜面で、樹木も茂っていて陽も当たらず、より寒いくらいです。

結果的に、雪に埋もれた彼の死体のまわりの雪が、他より早く融けたため、彼を早く発見することができたのです。

不思議なことでした。

彼は、懐に家族に残した遺書を持っていました。

弁当を包んでいた新聞紙に鉛筆で書かれていました。

それは、別れを惜しむ内容で、彼の死後の指示が家族へ細かく書かれていて、愛情あふれるものだったそうです。

*雪国の生活や奇習、奇談を集めた古典に、「北越雪譜」(天保期に出版された)があります。

ぜひお読みください。

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