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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・トンネルのある家

ロシア軍のクルスク奪回のための天然バスパイプライン作戦の報道に接して、ふと思い出しました。

そういえば、じじいの話に、似たようなのがあったな、と。

これは、「不思議な家」のカテゴリーに属する話です。

トンネルのある家があったそうです。

日本では、地下室のある家は珍しいのですが、昔の農家には、地下の空間を持つものがありました。

そのような空間は、イモなどの農作物を貯蔵する(むろ)として使われていたのです。

ある農家にも地下にそのような室があったのですが、その室は、かなり広いもので、四方の壁が石積みでできていたそうです。

その石は、近くの石切場からとれるものでした。

室の深さ(=床から天井までの高さ)は、1メートル程度で、人は立てない。

これだけだと、立派な室なのですが、一方の壁に円形の穴が開いていました。

その穴の入り口は完全な円形でした。

めずらしいと思い、よく見ると金属の管が水平に伸びているのです。

穴が完全な円形でのはずです。

その穴の入り口の中には石が積み上げられていて、全体がモルタルで固められ封印されていました。

それが、長年の湿気でもろくなり、自然と崩れて、穴の一部が露出していたため発見されたのです。

その金属管は直径が1メートル程度でしたが、内部の表面は、まったく錆びておらず、真新しく見えたそうです。。

管は、入り口から非常に緩やかに下ってのびていました。


じじいは、入ってみることにしました。

好奇心旺盛なじじいは、このようなことは大好きだったのです。

もうひとり「特攻隊の生き残り」という男性が同行しました。

管のなかで酸欠になるかもしれないということで、懐中電灯とろうそくランタンをもって入ることになりました。

さらに、長いロープを入り口からのばしながら進みました。

管の長さを計るのと、いざというときに、倒れた人間の体を引き戻すため

その金属管は、山の方向へ延々とのびていました。

持っているロープを何本も継ぎ足しながら進んだのですが、100mほど進んだところでロープが尽きてしまいました。

それでも、管はつづきます。

管の中は、冷たく、空気の動きはなく、なんの音もしませんでした。

ここで、不思議だったのは、その金属管につなぎ目が見られなかったことです。

普通は、工場で製作される管の長さには限界があるので、管を長距離敷設しようとすると、つなぎ目ができるはずです。


これは何か?

送水管か?しかし、水が得られるような場所に向かっているわけではない。

防空壕か?こんな大規模なものを作ったという記録も記憶もないし、戦争中や戦後の物資不足の時代には、こんな大きな直径の金属管は入手が困難だった。

鉱山の坑道か?この地域には、なんの地下資源もない。それに坑道なら、岩が露出した掘り抜きのままで十分だろう。

こんな大規模な鉄管を、地表を掘って埋める土木作業をしたら、まわりの住民は気がつくだろうが、そんなことも知られていない。

秘密裏にこんな大規模工事はできないし、もし、工事を行うなら地元住民に知らせて協力させるはずだ。

戦争中なら、少なくとも、地域の役人や防諜会などには知らせるだろう。


普通、坑道には、なんらかの人工物(使った道具やゴミなど)が残されているものですが、その管の中には、何もなかったそうです。

内側表面は、まったく錆びておらず、砂泥などもほとんど溜まっていませんでした。


じじいたちは引き上げました。

手持ちの装備では、どうしようもなかったからです。

その後、この穴の入り口はコンクリートで閉じられました。

この地下の管から有毒なガスが出てくるのではないか?と地域住民が恐れたからです。

農家は取り壊され、室は埋められました。


この家に住んでいた人たちはどうしたのでしょうか?

家を壊して大丈夫だったのでしょうか?

無人の家だったのかもしれません。

戦後すぐには、家族の多くが戦死して離散してしまった空き家も少なくなかったようですから。

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