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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・漂流する小舟

石じじいの話です。


これは、漁師の友人がじじいに話してくれた話です。


その友人が漁をしていると、古い木造の小舟が漂っているのを発見しました。

近づいてみると、それは古い木造船で、マストは折れて失われている。

嵐にあって漂流しているのかもしれない。

持ち主が助けを求めているのかもしれない。

彼は、その船に自分の船をつけました。

その船の中には海水がたまっていましたが、水没するほどではありませんでした。

中には、水につかって腐ってしまった魚の死骸が散らばっていていました。

いくつかは、鳥に食い荒らされたあとがありました。

溜まった水や船の縁には、鳥の糞がたくさん落ちています。

こんな小さな木造船はすぐに沈むだろうに、それが浮いているのは奇妙なことでした。

乗っていた人の痕跡はありません。

その人の服や持ち物もありません。

ただ、1つの軍用拳銃が落ちていました。

海水につかって錆びてぼろぼろになっています。

それは古い、戦前に使われていた形式のものでした。

また、たまった海水の中に、大きな鉱物が1つころがっていました。

透明な結晶です。

じじいが石を集めているということを知っていた友人は、これを持ち帰ることにしました。

その漂流船を曳航するわけにもいかないので、そのままにしてそこを立ち去ったそうです。

ただし、いつ、どのあたりの場所で、この船を見つけた:ということを紙に書き残してビニール袋にいれて船の中に置いておきました。

彼は、持ち帰ったその鉱物をじじいに見せました。

じじいによると、それは石英の大きな結晶であり、その結晶の中には金属の針のような別の鉱物の結晶が入っていたそうです*。

これは天然の石英では、よく見られる現象でした。

じじいは、その石英の結晶をもらったそうです。

友人が、まわりの漁民に聞いたところ、そのような「漂流船」は見かけたことはないということでした。

しかし、数年後、もっと南の港町でたずねたところ、そのような船を見かけたことがあるという老人がいました。

その老人が言うには、それはもう40年も前の戦争中のことであり、その時もボロボロで沈みそうだったと。

友人と老人が遭遇した漂流船の大きさや特徴は、たがいに似ていたそうです。

*針状結晶といい、その鉱物は、ルチルや電気石などです。

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