石じじいの話・幽霊製造装置
石じじいの話です。
じじいが満州を旅行した時に、満州の中国人から聞いた話です。
その中国人は、重慶から移住してきた人でした。
「幽霊(鬼)を製造する工房」が北京に存在しました。
その「工房」は、ロシア人によって経営されていたそうです。
そのロシア人が、亡命者なのかソ連人なのかは不明です。
その施設は工房というよりも実験室、研究所と言ってもよいものだったのですが、規模は小さく、四合院にありました。
幽霊の部品は、臨終の人間。これが幽霊の主体になります。
そして、死んですぐの他人の死体。
その工房には、幽霊製造装置一式が備えられていました。
ある装置を、その臨終の人間に装着するらしいのです。
それは、顔にかぶせるマスクのようなものであるとか。
あるいは、体全体を収納する棺のようなものであるとか。
マスクと棺の両方が同時に使われるのか?別々に使われるのか?どちらか一方しか使用されないのか?は私のノートからは読み取れませんでした。
また、幽霊の製造には、ある種の鉱物(鉱石)が必要だということでした。
その鉱石は、シベリア東部から満州、朝鮮北部から産出するものでした。
その鉱石から、特殊な光線?が出るので、それが幽霊製造に不可欠だと。
その工房には、複数の技術者がいましたが、彼らは霊術者のようなものではなく、科学者のような人物だったそうです。
その幽霊は、死者の近親者や関係者の希望に応じて製作されていました。
たとえば、優秀な科学者や芸術家などを幽霊として復活させることがありました。
その才能が惜しかったからです。
幽霊は、生前の本人ほど、その才能を発揮することはないが、それでも凡人よりは優れていたそうです。
技術者たちが言うには:
人は死んでも、その脳は死後も数分は生存している。
その脳の「力」を使って、その人間の「幽霊」を製作するのだ。
その力というのは、魂というものではない。
その「幽霊」は、死んだ本人の身体から製作されるのだろうけど、それなら、なぜ、死んですぐの他人の身体も必要なのだろう?
これは「幽霊」と呼ぶべきものではないのでは*?
と、じじいは思ったそうです。
じじいは、彼の性格からすると、その中国人にいろいろと尋ねたでしょうが、それについての回答は、私のノートには残されていませんでした。
じじいの話には、このような超自然的な存在(生物)を人工的に製造する(育成する)話がしばしば出てきます。
今までの話では:
ロシア帝国で行われていた「吸血子供兵士」や「子供たちを改造して作るアントロヒシニク(おそらくロシア語で、『肉食人間』の意味)」などです。
また、『石じじいの話・憑霊製造所』というものもありました。
これらのうち、いくつかは同じ話のバリアントなのかもしれません。
*なんだか、ブードゥー教のゾンビみたいな存在です。
あるいは、犬神憑きにも類似しているように思います。




