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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・牛からの声

石じじいの話です。


朝鮮での話だそうです。

じじいが朝鮮に住んでいたとき、旅の途中でたまたま行きあった現地の朝鮮人と道連れになることがありました。

朝鮮では、山道で荷物を運ぶときは馬ではなく牛を使うことが多かったそうです。

馬のほうが多くの荷物を運べるのですが、狭い山道では牛のほうが、歩行が安定していて便利なのだとか。

たくさんの牛で荷物を運んでいる朝鮮人たちと一緒に旅をしたとき、山中で一泊することになりました。

馬は立って眠りますが、牛は体を寄せ合って横になって眠ります。

外敵から身を守るためだそうです。

人々は、牛の体の間に寝ました。

秋の夜は冷えましたが、そこは牛の体温で暖かく快適な寝床でした。

寝ていると、消化のために腸が動くのか牛の腹が鳴ります。

それがまた眠気を誘うのだそうです。

じじいがウトウトしていると牛の腹の中から人の声が聞こえてきたそうです。

朝鮮語です。

じじいは、朝鮮語がよくできたのでそれを理解できました。

それは、漢詩の朗読や小唄、また、人の自省(ひとりごとのような口調での)のような内容だったそうです。

その声は、やや途切れがちではありますがえんえんと続きました。

聴いているうちに、話に難しい言葉や言い回しが徐々に多くなり、じじいは内容が理解できなくなりました。

そのとき、隣で寝ていた朝鮮人がじじいに話しかけてきました。

「あなたにも聞こえるか。あの声が。牛の腹の中から人の声が聞こえることはたまにあるのだ。私も聞いたことがある。」

これは何だ?とじじいがたずねると。

「わからない。この声は特定の牛の個体の腹のみから聞こえるわけではないのだ。」

「なんというか・・・その牛と人間との『気が合う』というか・・・そういうときに聞こえるのだろう。だから、どんな牛の腹からも声が聞こえることがあるのだ。」

「長時間聞いてもべつに害はないが、聞いてるうちに内容が理解できなくなって眠ってしまうのだ。」

早朝、牛たちが目覚めて立ち上がったので、じじいは目を覚ましました。

同行していた荷運びの朝鮮人たちはすでに目覚めていて朝食の準備をしていて、それをじじいに食べさせてくれました。

じじいは、その後も、機会があれば牛の腹に添い寝して眠ったのですが、再び人の声を聞くことはなかったそうです。

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