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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・露天風呂に入るモノ

石じじいの話です。


中国山地での話だそうです。

じじいは、地元に人間から山奥にお湯の出る場所があるというのを聞いて、行ってみようと思いました。

それは、非常に山深い場所にあり、地元の人間でのほとんど知られていませんでした。

じじいに、その話をしてくれた老人はかつてマタギ(猟師)であり、東北地方北部の出身者でしたが、山を渡り歩いている間に、そこに住み着いた人でした。

翌朝、じじいはその場所を探しに出かけました。

沢を登っていくのですが、当然道などはありません。

淵の多い沢ののぼり、函を泳ぎ、滝をまいて、笹竹の密集地を抜けて、急流を右岸へ左岸へと渡ること数十回。

8kmほど上流へ行き、そこにたどり着きました。

数十メートルの湯の滝がありました。

湯の湧いているところにゆっくりと入りくつろぎました。

それまで、冷たい沢の水につかりながら歩いてきたので、とても快適だったそうです。

そこが気に入ったじじいは、そこで一泊することにしました。

夜は火を焚いて獣を避けたのですが、猿が入りにくることはなかったようです。

しかし、やってくるものはいたのです。

森の中から、ガサガサと音をたてて這うようにやってくるものがいました。

月の光や焚き火の光では、それは黒い影にしか見えなかったのです。

トカゲやワニのような歩き方で、長さが2mほどある大きな四足歩行の生き物?で火を恐れないのです。

じじいは懐中電灯で照らして正体を確認することをためらいました。

こちらの居場所を知らせることになるし、むだに刺激しては襲われるかもしれない。

ソレは、じじいに気がついたのかつかなかったのか、湯のなかで半時間ほど泳ぎ回ったあと山にかえっていったそうです。

お湯に濡れた体は月の光を反射して輝き、そのシルエットを見ると、その頭は大きく、長い尾がくねくねとうねっていました。

じじいは、岩石ハンマーを握りしめてそれを見ていました。

お湯から岸に上がった時に、ソレが後ろ脚で立ち上がったように見えたのが不気味だったそうです。

立ったその姿は、背の高い人のようだったのです。

じじいは、まんじりともせず朝をむかえたのですが、川の水位が上がってきました。

上流で雨が降ったらしいのです。

増水する恐れがあり昨夜の生物も怖いので、その場を離れたそうです。


「朝になって、足跡やウロコのようなもんでものこっとりゃせんか思うてさがしてみたんやけど、なんもなかったわい。サンショウウオやったんかいのう。じゃが、サンショウウオは立てんけんね。あがいに大きなトカゲは日本にはおらんしワニもおらん。」

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