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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・一寸法師の剣

石じじいの話です。


じじいは、珍しい石を探して中国地方の山地を何度も歩いたそうです。

彼の本拠地から遠くはありませんからね。

中国山地の地盤は花崗岩でできていて、それが長い間に風化・侵食されて準平原化し、なだらかな地形になっています。

花崗岩には、磁鉄鉱や赤鉄鉱などの鉄鉱物が含まれていて、花崗岩が風化すると、それらの鉱物が分離して砂鉄になります。

風化によってできた土砂は多くの砂鉄を含んでいるので、その山を掘って砂鉄をとるのです。

このあたりの知識は、石じじいのうけ売りです。

じじいが、中国山地を歩いているときは、すでに砂鉄採取場「たたら場」は廃れてしまっていたのですが、その生業に詳しい老人たちは生き残っていました。

その地域の岩石・鉱物についての情報収集を兼ねて、たたら場についてのいろいろな話を彼らから聞きたそうです。

たたら場のしくみは:

良質な砂鉄を含む山の斜面の頂上付近まで水路をひいて水を流して、その水路に沿った斜面の土を掘り崩して水と一緒に流します。

水路の途中に階段状にいくつも池を設けて、そこを通過させることによって重い砂鉄が分離できるのです。

集めた砂鉄は「たたら」という粘土でつくった製鉄炉で木炭と一緒に燃やして銑や鉧を作ります。

さらにこれを鍛冶屋で鍛錬して錬鉄や鋼にして出荷するのだそうです。

しかし、その場所で、砂鉄を含む風化土壌を取り尽くすと、別の場所に採掘場所を移動さるので、それまでのたたら場は廃墟になります。

そのような廃墟をじじいもあちこちに見かけました。

鉄の生産には、たたら場での労働者・鍛冶屋・運搬者(+牛などの運荷家畜)が必要だったので、人が多く住み「千軒」と名づけられるほどの、大規模な集落に発達することもあったそうです。

必要な大量な炭は、近くの山村で村民が焼いて売りに来ました。

さて、このようにして集めた砂鉄のなかに、小さな「剣」や「刀」、その破片が混じっていることがあったそうです。

数センチの剣、刀でした。

たたら場の作業員たちは、それを「一寸様の刀」と読んでいたそうです。

完品のものもあり、また、それが折れてできた破片も見つかりました。

もちろん、鍔や鞘などはありません。

これらは、鉄鉱物の形が偶然に刀や剣の形に似ているのだろうと考えられていたのですが、作業員の中には、昔の遺跡(武士の墓)が崩れて流れ出てきたものではないかと考える者もいました。

いわゆる、副葬品です。

しかし、それにしてはあまりにも小さい。

「小人」の刀だ、と真面目に主張する者もいましたが、相手にはされませんでした。

そのような不思議な形をしている砂鉄を集めている者もいたのですが、そのような行為は

砂鉄の横領とも指弾されることもあったそうです。

じじいも、それを持っている人に見せてもらったことがあったのですが、たしかに、それは刀や剣そっくりだったそうです。

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