表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
石じじいの話  作者: Lefeld
186/619

石じじいの話・犬神憑き病院

石じじいの話です。


憑き物を専門的に治療する病院があったそうです*。

じじいの話からすると、これは一種の精神科病院のようですが、現在からすると(じじいが聞いた当時としても)、理解しがたい施設だったようです。


その病院は、特に犬神に憑かれた人を患者として受け入れていました。

また、犬神を放つ人、いわゆる犬神筋の者も患者として受け入れていました。

つまり、憑き物関係者の両方の側を「治療」していたわけです。

その病院の院長(経営者)が、じじいに言うには:

「このような憑き物現象に乗じて僧侶や神主、山法師、霊媒師などがやってきて悪さ(金儲けのための犯罪)をするから、それらからの患者への悪影響を防ぐのだ」と。

そう主張する院長は、知的な男性でした。

どこかの帝国大学の医科大学を卒業して、満州でも開業していたと主張していたそうです。

じじいが、彼の病院を訪れた時代でも、すでに、そのような憑き物の現象は、医学的な疾病からする症状であるという考えが主流でした。

精神病(ママ)や梅毒、アル(ママ)、結核、婦人病(ママ)、糖尿病、腎臓病などによって、そのような精神状態となることがあるということを、じじいは医学関係の本や医者から聞いていたのです。

じじいによると、この「憑き物病院」の問題は、院長(医者)が、正統的な医学で「憑き物」患者の症状の原因を解明することを放棄してしまっていて、憑き物は、ある「特殊な細菌」や「有害光線」による病気であり、しかも伝染病であると考えているところだということでした。

院長による、その病院での治療方法とは:

念仏や祝詞を唱えたり、太鼓を叩いたりするのは厳禁である。このようなことは、患者の状態を悪化させる。

投薬が重要である。その薬は、漢方ではない。そんなものは役に立たない。自分の病院で開発・調合した薬を使っている。

調合した薬品の匂いを嗅がせる治療も行っている。

特別な部屋(小型の箱のようなもの:じじいに見せてくれたそうです)に入れて、ガス(薬品)を注入するのだ。

ある波長の強い光を浴びせることも治療としては有効である。

体に電波を通す(?)治療も行っている。(電気ショックではなく電波。)

手術も有効な手段であり、それで治癒した症例がたくさんある。

その病院には手術室があり、それは実際に使用されている様子だったそうです。

じじいは、ロボトミー手術ではないか?と疑いました。

当時は、ロボトミー手術は、普通に行われていたそうですが。


その病院には、犬神憑きの「患者」以外にも狐憑き、猫憑き、蛇憑き、うさぎ憑きの患者がいたそうです。

さらに、狸憑き、馬憑き、外道(ゲドウ)憑き、水神憑きの「患者」もいました。

ワニ憑きや獅子憑きの「患者」もいました**。

また、「鬼筋の家系」という患者もいたそうです。


院長によると、これらの憑き物患者の症状***は:

・眠ってばかりいて、たまに起きると大食いする。

・胸がはれない思いで、狐がついているみたいだと主張する。

・私の体には瘡毒が憑いている、犬神ではないと主張する。

・発熱した5歳の少女は、「私はどこどこの家の老婆である」と述べる。

・へそが痛い!そこから犬神が出入りしている、と主張する。

・感冒の症状だが、いっこうに回復せず、犬神が憑いていると主張する。

・人間を恐れて、暗闇を好む、光を恐れる。

・左の乳房がピクピクと動いている、そこに外道が巣食っているのだ、と主張する。

・すぐに眠り始める。

・水を与えようとすると激しく嫌がる。

・耳の中に、何かが入ってきてくすぐられると主張する。

・馬に憑かれたという人、厩にいって、そこで馬桶から水を飲む、飼葉を食べる、その後狂死した。38歳だった。

・まんじゅうのようなはれものが体のあちこちに、たくさんできて、しばらくしてそれが消える。

・火星人が憑いたと言って、火星語を喋り始める。

・英国人が憑いたと言って、英語を喋り始める。


院長が言うには、「変身妄想」というのもある****。

獣が憑いた患者は、四本脚で歩くようになる。

蛇が憑いた人は、蛇のように体をうねらせて床を這い回る

言葉を忘れてしまう人がいる。

しかし、たまに、体が物理的に(生物的に)変形(変身)する患者もいたそうです。

馬がついた人は、馬のように目玉が飛び出てきたことがあった。

犬や蛇に憑かれた人の体が・・・。(記述を自粛)


じじいは、この院長の話を聞いて病院を見学しているうちに、自分の頭もおかしくなりそうになったと言っていました。

だれが正常でだれが異常なのか?

*これは、日本での話だと思います。その点についての記述はノートにはないのですが、前後の聞き取りから、朝鮮での話である可能性は低いでしょう。

**ワニや獅子(ライオン)など、日本にはいないのですが。

***これらの症状は、現在でも、ある疾病に見られるようです。

****上記の、馬に憑かれた人、というのが、これにあたるでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ