石じじいの話・臭い森
石じじいの話です。
とても臭い森を歩いたことがあったそうです。
じじいが石探しのために、地元の猟師といっしょに山に登っていたときでした。
その日は、台風一過で、とてもよい天気だったそうです。
雨で森は湿っていて、空気がやわらかい。
すこし、風が残っていて、木々がざわざわと揺れていました。
森を歩いていると急に風がやんで、あたりがシンとなりました。
陽光は、あいかわらず樹枝の間からさんさんと降り注いでいます。
そのとき、強力な臭気が襲ってきたそうです。
じじいと猟師は、その悪臭に顔をしかめましたが、猟師が連れている猟犬はへいきな様子でした。
それは、腐敗臭ではなく、化学薬品のような匂い、溶接の時のような匂いだったそうです。
臭いを嗅いでいると、頭痛がしてくる。
歯が痛くなる。
鼻の奥が痛くなる。
強い酸のような刺激臭ではないのですが、ちょっと耐えられないものでした。
そのうち吐き気がしてきて、ふたりとも激しく吐いたそうです。
猟犬は、二人の様子を見てオロオロするばかりでした。
気がつくと臭気はおさまっていて、じじいたちの体調も徐々に回復していったそうです。
「山の神様が屁こいたんちゃう?」と私。
「もののけの屁やったんかもしれんのう。人の屁とは成分が違ごうとらいわいね。」じじい。




