石じじいの話・地獄の入り口・蒙古編
石じじいの話です。
以前、地獄への入り口(穴)が九州にある、という話を書いたことがあります。
九州のみなさん、もう見つけましたか?
はいってはいけませんよ。
いずれ、行けるのですから。
その穴からは、熱風が吹き出し、叫び声が聞こえてくるのだとか。
子どもを偵察に入れたら、死んだということでした。
これと似たような話が蒙古にあったそうです。
じじいが、満蒙を旅したときに経験した話です。
地元のモンゴル人によると、「地獄の入り口をふさいでいる巨石」があるのだ、ということでした。
それは近くにあるというので、彼の案内で、じじいと同行者たちは見物に行ったのです。
それは、草原の真ん中の巨大な花崗岩でした。
その周辺、直径1kmほどの円形の範囲には、草が一本も生えていませんでした。
砂地でした。
さらに、その周りには青々とした草が豊富に生えていました。
ここには、遊牧民も家畜を連れて来ないので草が生え放題なのだ、ということでした。
地元の者も、まず近づくことはない。
この巨石を触ってみると熱い。熱を持っているのです。
さらに、その石のまわりの地面が、なんとなく振動しているようなのです。
ビリビリと高周波数で。
じじいが、地面に耳をつけてみると、ズズズズという音が聞こえる気がします。
地下の火山活動(熱水活動)の存在を疑いましたが、火山などまったく存在しない地域だったので、どうも違うらしい。
じじいが見たところ、この巨石は地下にも続いているようです。
そこで、「どうして、この石の下に地獄へ続く穴があるとわかるのだ?」とモンゴル人に尋ねたところ、彼は、「むかしから、そう伝えられている」と。
無敵の返答です。
昔、この石の下を掘った人達がいたのですが、石は、地下には続いておらず、地面に乗っかっているだけだったそうです。
石の底面に沿って石の中心部へ横下方向へ掘り進めていくと、急に穴が開き炎が吹き出たそうです。
それで、数人が焼死したので、その穴を埋め戻したのだ、ということです**。
地元のたいていの人間は恐れてこの巨石に近づかないのですが、たまに、これを神聖なものとして祀るものがいるのだそうです*。
遠くから拝みにやってくる者たちもいると。
よく見ると、たしかに、巨石の上には、ぼろぼろになった紙幣や馬の頭骨、お経を彫り込んだマニ石などが散乱していました。
じじいは、ラマ教(モンゴル人の宗教)にも地獄の概念があるのかと不思議に思ったそうです。
*石を崇拝するのは日本にも普通にあり、那須野の殺生石なども、その一種でしょう。
石が燃えるというので、拝火思想も生まれ。ソロアスター教の起源だとか。
**石油か天然ガスが燃えているとも考えられますが、地下で酸素がない状態では燃え続けることはないでしょう。




