石じじいの話・水死人に気をつけろ
石じじいの話です。
海の話です。
どこかで読んだような出だしですね。
水死人に気をつけろ、という言い伝えが漁村にあったそうです。
じじいが、その漁村で聞いたところによると、漁師が漁で死ぬと、海の生物になってもどってくるのだそうです。
これは、よくある話です。
死んだ漁師は、埋葬もできません。つまり供養ができない。
死人が戻ってくるのを防ぐ呪い(まじない)もありませんでした。
戻ってくる死人の姿は、サメや深海魚のような魚であることも、海鳥であることもあったそうです。
また、死人が海藻の塊になって浜に流れ着くこともあったのです。
死人が帰ってくるのは夜間だけとは限りませんでした。
そのため、その村や近くの漁村で漁で人が死んだ時は、死体が発見されるまで、人々は皆警戒して、海から寄ってくるものに神経を尖らせていたそうです。
死体が発見されないことも多いのですが、その時は、浜で死人の供養をしました。
それでも、死人が戻ってくることもあったのです。
死人がもどってくるとどうなるのか?
詳しい説明は、ノートには残されていないのですが、死人はかならず親族の元に帰ってくるので、彼らは驚愕し恐れおののきます。
それは、気持ちのよいものではありませんが、戻ってくるのは一回きりなので、まあ、その後は安心できるのでした。
ただ、場合によっては、戻ってきた死人を見た家族のものが、その死んだ人物に執着してしまい、精神を病んでしまうこともあったとか。




