石じじいの話・とある特高の禁書目録
石じじいの話です。
古い書籍のリストらしきものが、私の聞き取りノートに書きつけてあります。
以前から、気になっていたのですが、それが何なのか不明でした。
ノートのどこかに、その説明がないか探していたのですが、どうもそれらしい記述が見つかりました。
これは、戦前の特高(特別高等警察)による禁書(発禁)のリストらしいのです。
じじいは、戦前戦後と警察関係者との交流もあったので、朝鮮に住んでいたときに、そのような人に見せてもらったリストのようです。
ちょうど、朝鮮時代の話の文脈で、このリストの一部が出てきます。
それらをまとめてみました。
まだ、ほかにも書名があげられているのですが、一部のみを書いてみましょう。
このリストに挙げられている本が持ち物にあると、その人は、特高にひっぱられたのでしょう。
拷問されて投獄の憂き目にあった人もいたでしょう。
以下、リストの一部です。書名、著者名、出版社名、らしいです。
レーニン詳伝 茂森唯士 表現社
階級闘争の進化 山中 白揚社
近代社会思想八講 松本悟朗 新作社
資本論第一〜第二巻 高畠 新潮社
社会主義の発展 堺利彦 白揚社
創世時代と父祖の生活 ホワイト
世界大思想全集四二 マルクス主義の国家観 アドラー 春秋社
上記の書籍は、禁書になるのはわかります。
日本憲法要論 佐々木惣一
日本比較憲法論 藤井新一
法学的国家論 浅井清
帝国憲法論 市村光恵
行政学総論(著者名不明)
法律の学術的研究もまかりならん!と。
長編小説 青年 林房雄 第一書房
乱歩傑作選集第四巻 一寸法師
幻想と怪奇 江戸川乱歩
性科学全集第六巻 世界艶笑芸術 丸木
モーパッサン傑作短編集大十巻 情話小説集 草間八十雄
性的誘惑の種々相との対策 前田誠考
どん底の人達 草間八十雄
色ざんげ 宇野千代
あひびき 宇野千代
昭和妖婦伝 三角寛
山窩綺談 瀬降と山刃 三角寛
犯罪医学雑話 黒田啓二
三味線情趣 平山蘆江
猟奇的な小説や情愛がテーマの小説もだめだったようです。江戸川乱歩や宇野千代などのメジャー作家の作品も禁書になっています。
山窩を題材にしたエロ小説で有名な三角寛も発禁処分です。
さらに、このリストについての注意書きとして、「図書館での配架、閲覧も禁ずる」とあります。
いくつかの書籍タイトルの頭には、レ点が記されてあります。
このしるしがついているのは、じじいが持ってる本だったのでは?
彼の名誉のために(?)具体的な書籍名はあげませんけど。
今では、ネットで閲覧する方法があるので、印刷物の発禁はできないでしょうけど、ネットで、個人の閲覧情報は捜査機関によって収集されるかもしれません。
それで、警察が踏み込んでくる、と。




