石じじいの話・金色のクジラ
石じじいの話です。
これは、じじいが朝鮮に住んでいたときに知り合ったロシア人の商人が雇っていたタタール人の老人から聞いた話です。
帝政ロシア時代に、そのタタール人は十代で、ウラジオストックの『ロシア・フィンランド捕鯨会社』で働いていました。
彼の捕鯨船が、朝鮮半島沖で操業していた時に、不思議な生物(?)に遭遇したそうです。
船からかなり離れたところを、大型の生物が波を蹴立てて進んでいました。
クジラだと思って追跡をはじめ、距離をつめて観察すると、どうもおかしい。
その「クジラ」は太陽光に照らされて金色に輝いていたのです。
体には、フジツボなども付着していませんでした。
潮を吹くこともない。
こちらが接近しても潜る気配はない。
そのうち、その「クジラ」は停止して水面を漂いはじめました。
これは好都合と捕鯨砲を打ち込むと、体に命中した銛は跳ね返ってしまったそうです。
これは、金属ではないか?
日本軍の潜水艦か?とも思ったのですが蒸気機関の煙突がない。
しかも、この海域は日本からかなり離れている。
体全体が金色というのもおかしい。
もう一度、銛を打ち込んだ時、その「クジラ」は、叫び声のような強烈な高音を発しました。
その音で、周辺の海面が泡立ったそうです。
頭がふらつくような音で、甲板で倒れる乗組員もいたということです。
その後、その「クジラ」は高速で泳ぎ去って潜水し姿を消しました。
二度と浮上してこなかったのです。
そのタタール人は、捕鯨会社が倒産(?)して職を失ったとき、日本の捕鯨会社で働かないかと誘われたのですが、日露戦争の開戦によって、その話は流れたそうです。
じじいは、朝鮮に住んでいたときに、あるロシア人商人と知り合いになりました。彼は、ロシア帝国領内を渡り歩き、朝鮮までやって来たのです。彼は、タタール人やその他の民族の人々を社員として雇っていたので、その人たちからも不思議な話を聞くことができたそうです。
そのロシア商人から聞いた話には、ロシア帝国で養成されていた「人型肉食動物兵器」;人狼の女性;などがあります。いくつかの話は、別のところで書きました。ネットで探してみてください。




