石じじいの話・いくつかの短い話 20・行灯幽霊、動く刺青
石じじいの話です。
短い話を。
1. 行燈をつけると出る幽霊がいたそうです。
ある行灯を灯すと、その行灯の後ろに幽霊がでることがありました。
その幽霊は、若い女性のようでした。
幽霊の顔や着物は、はっきりとは見えないのですが、長い黒髪だったので女性だと考えられたのです。
灯すとすぐに幽霊が出るというわけではなく、灯して、ある程度時間がたつと出るのです。
幽霊が出るまでの時間は、ほぼ一定していました。
幽霊が出る直前には、行灯の光が青色になったそうです。
気味が悪いので、この行灯を捨てようかという話もでたそうですが、その幽霊が別に悪さをするわけではないので、このまま使い続けようということになりました。
それでも怖いので、幽霊が出る前に灯りを消すこともありました。
そうしているうちに、人々は、それが出ても気にしないようになりました。
しかし、やはり、このようなものが出続けると、家に良くないことが起きるのではないかということで、幽霊行灯は蔵にしまわれてしまったそうです。
今でも、骨董店にあるかもしれません。
見つけた人はラッキーですね。たぶん。
2. ある刺青師が入れた刺青が動いたそうです。
その刺青師は、名人というわけではありませんでしたが、あまり痛くないという評判でした。
彼の入れた、獅子や龍、花の入れ墨が動くのです。
獅子は、その表情が変わる。
龍は、ひげや脚の位置が変わったり、尾の向きが変わる。
花などは、花びらがさらに開く。向きが変わる。
さすがに、花びらが散るということはありませんでしたが、花が閉じて蕾になることはあったそうです。
その刺青が動く時、もちろん、それは知らない間に動いているのですが、その人物には熱が出ました。
どっちが先か?
入れ墨が動くから熱がでるのか?
熱が出たら、入れ墨が動くのか?
その刺青師が入れたものだけが動いたということです。
入れ墨が動いた人には、特になんの不幸も起きなかったようですが、出入りで死ぬヤクザ者もいたということでした。
その因果関係はわかりません。




