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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・人魚を待つ娘

石じじいの話です。

これは、じじいが石探しのために、ある漁村を訪れたときに経験した話だそうです。


ある漁村に滞在した折、夕方、じじいが石探しのための偵察がてら散歩していると*、若い女性が砂浜に立っていました。

まだ、十代後半くらいと思われる娘です。

よく見ると、小学生低学年くらいの男の子も、そばに立っています。

もう太陽が水平線に沈みかかっていたので、心配になって、じじいは声をかけました。

彼女は、じじいに顔を向けることなく、「人魚が来るかしら」とつぶやきました。

そして、急に我に返ったように、じじいにほほえみかけました。

彼女が言うには、自分たちは姉弟であり、人魚が来るのを、こうして毎日待っているのだということでした。

じじいは、彼女の話を理解できませんでした。

彼女は続けます。

こうして、私たちが浜で待っていると、人魚がやってくることがある。

その人魚のまわりには夜光虫のような光が取り巻いているから、すぐにわかるのだ。

その人魚は、子供の頃に死に別れた姉に似ているのだ。

きっと、死んだ姉が、私たち妹、弟に会いに来るのだろう。

と。

じじいは、この娘は、少し常軌を逸しているのではないか、と思ったそうです。

宿泊している家でたずねると、皆、その娘のことを知っていました。

彼らが言うには、人魚を見るのは、その娘だけだということでした。

彼女は、人魚に会う時に他人がそばにいることをとても嫌がるのだ、とも。

それなのに、じじいに対しては、彼女が敵意をあらわすこともなく、いろいろと話しをしてくれたのは不思議なことでした。


じじいは、次の年にも、その漁村を訪れましたが、彼女とは会えませんでした。

ある日、彼女は、弟とともに姿を消してしまいました。

弟と一緒に海に飛び込んだのだろうということでした。


「あの子らは、ぶじに人魚になれたんかのう。お姉さんといっしょにおれるんやったら、それがええねぇ。」

*砂浜を歩くと、その周辺に露出している岩石が、砂礫となってそこに分布しているので、どんな岩石や鉱物が近くにあるのかを知るのに都合がよいのだそうです。また、それらの岩石には、おもしろい化石や鉱物が含まれていることもあったのです。

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