石じじいの話・いくつかの短い話 19・味の幽霊
石じじいの話です。
短い話をいくつか。
1. 味の幽霊が出ました。
ある屋敷で、12月の寒い夜に暖房を使わないで座敷に座っていると、急に、不快な味が口いっぱいに広がることがあったそうです。
そのときは、その座敷にいる人全員が同じ味覚を味わったということです。
その座敷の隣の部屋にいても、同じ味が、ほんの少し感じられました。
そこから遠くに離れると、同じ家の中でも、そのような味の幽霊はあらわれませんでした。
その家や、まわりの人たちは、味の幽霊だと言っていたそうですが。
これは、「幽霊」だったのでしょうか?
味覚に関連すると言えば、水木しげるの漫画に「魂の天ぷら」というのがありましたね。
2. 同じように、満腹の幽霊が出たそうです。
味の幽霊と同じようなもので、その家では、ある時、急に満腹になるのだそうです。
その家の中なら、どこででも起きるのです。
起きる日時は決まっていませんでした。
激しい空腹時でも、急に満腹感が襲ってきたそうです。
それが起きると、もう、何も食べたくない。一口も食べられなかったのです。
腹は膨れないのですが、とにかく食べられない。食べ物が喉を通らない。
急に空腹になって動けなくなる、「ヒダル神」というのがありますが、それとは逆ですね。
ダイエットには最適です。
3. 往生際の悪い死人がいたそうです。
ある人が、病気で死にかけていました。
彼は、強欲で生への執着がつよかったので、自分の延命のためには湯水の如く金を使いました。
しかし、死には勝てず、ついに臨終を迎えることとなったのです。
家族の者たちに看取られて逝きましたが、しばらくすると、突然うめき声を上げて、打ち覆いを払いのけました。
蘇生したのです
彼は、浅い息をしながら、「よし、よし」と言いました。
しかし、家族の者たちは、彼を、往生際が悪い人間だ!と言って、皆で絞め殺してしまったそうです。
彼の葬式は無事に出されたのです。




