石じじいの話・いくつかの短い話 18・黄の青の赤の雨傘
石じじいの話です。
短い話をいくつか。
(1) 誰から死ぬのか?
梅雨時、じじいが歩いていると、小学生が下校していました。
黄色、青色、赤色の雨傘をさして歩いていますが、傘が大きく、子どもたちは小さいので、まるで雨傘だけが歩いているようでした。
子どもたちを黒い傘をさして眺めている男性がいました。
じじいが彼の脇を通り過ぎると、その男性は、「黄の青の赤の雨傘、誰から死ぬのかな?」と独り言のようにつぶやいていたそうです。
(2) 蝿とともにやってくる人
ある人が、やってくると、急に蝿が多くなりました。
つまり、彼は、蝿とともにやってくるのです。
逆に言うと、蝿がたくさん寄ってくると、必ず彼がやってきました。
別に、蝿がたかるような不潔な人間でもないし、臭いなどもしませんでした。
若い男だったそうです。
(3) 名誉の戦死
戦争中、出征していった息子が戦死しました。
しかし、遺骨は帰ってこないし、遺品は何もありませんでした。
「あなたの息子さんは、お国のために名誉な戦死で、XX(その町の名前)の誇りだ!ようやった!」
まわりの称賛は、空疎に聞こえたそうです。
その人の母親が言いました。
「息子の部屋をかたづけないと。」
じじいが朝鮮から帰ってきたとき、友人の女性が、そう話してくれたそうです。




