石じじいの話・雪の足跡
石じじいの話です。
冬の朝、うっすらと雪が積もっている山寺の庭に、たくさんの足跡が残されていたことがありました。
朝には雪は止んでいたので、夜の間につけられた足跡が広い庭にくっきりと残っていたのです。
その寺には、ご住職やそのご家族も住まわれていたのですが、たくさんの人たちがやって来たのには気がつかなかったそうです。
そのたくさんの足跡は、すべて人間のものでしたが、大小があり、また履物の形も異なっていました。
数えてみると、最低でも五人くらいは歩いたのではないかと思われました。
お百度まいりにしては、足跡の行跡の方向は一定していないし、のこした人間が大人数でした。
さらに、その庭に続く石段に積もった雪には、足跡が全くのこされていませんでした。
乱されていないきれいな雪が薄く積もっていました。
寺に続く道路にも、夜間に人が通ったような跡はありませんでした。
庭の一か所には、足跡に混じって大量の血が落ちていました。
白い雪の上に、真っ赤なツバキの花のような血が。
ケガでもしたのか?労咳なのか?
そもそも、人の血なのか?
日が昇って、雪は夕方までほとんどが溶けてしまいました。




