石じじいの話・いくつかの短い話 16:毛虫を焼く僧;あじさいの顔
石じじいの話です。
短い話を2つ。
(1) じじいが石探しの旅の途中で、小さな山寺を訪れました。
ちょっと、拝んでいこうか?と。
その寺のお堂の陰で、人がしゃがんでいます。
その人の前には、煙が立つ七輪が置かれていました。
じじいがよく見ると、一人の僧侶が、貧乏ゆすりをしながら毛虫を焼いていたそうです*。
僧は、その作業に集中しているらしく、じじいが近づいてくるのに気がつきません。
じじいは、彼が気がつかないように、そのまま、そっとその場を離れたそうです。
(2) 梅雨時に、ある寺の庭のあじさいが満開になった時に、その花のなかに人の顔が混じっていることがあったそうです。
その顔の大きさは他の花と同じであり、顔色もまわりの花と似た色で、表情は喜怒哀楽さまざまでした。
誰もが、それを見つけることができたわけではありませんでしたが、見つけた人によると、その顔は、たしかに死んだ人のものであったということです**。
その花の死人の顔は、それを見つけた人の親族などではなく、見知らぬ人である場合も、見知っている人である場合もあったのです。
*毛虫は焼くと美味しいといいます。日本でも、そのように調理して食べる地方もあります。
昆虫食を激しく嫌悪する人も多いようですが、なかなか美味しいものもあります。
**「ウォーリーをさがせ!」というのがありましたね。




