石じじいの話・死人の門
石じじいの話です。
ある屋敷には、「死体だけが出ていく門」があったそうです。
その門は普段は厳重に閉ざされていて、その家から死人が出た時、つまり葬式の時には、そこから死体を運び出すのです。
葬式で棺を出すのかというと、そうではなく、死体をそのまま戸板などに乗せて運び出すのです。
どうして、そのようなことをするのか?
それは、古くからの決まりごとだったのですが、その理由は伝わっていませんでした。
その由来について書かれたものはなかったのです。
その家の人によると、ある人は、「これを守らないと、その後に凶事が起きる」とか、「これを守らないと、その死体を火葬にしたときに、死体が焼け残る」とか。
しかし、その家の人は、この風習を必ず守っていましたから、それを破るとどうなるのかはわからなかったのです。
この門には、不思議なことがありました。
その家に、回復の見込みがない病人がいるとき、その人の死期が近づくと、その門が半開きになるのです。
逆に言えば、その死人の門が半開きになると、その家の病人は助からない、ということです。
それは、家で療養しておらず病院に入院している場合も同様でした。
死ぬ人が、その家族にいるときは半開きになる。
その家の者ばかりでなく、その家の書生が死んだときも開いたそうです。
死にそうな人がいないときでも、その門が一寸ほど開くことがあり、皆は緊張しました。
そのような時は、寺の僧侶を呼んで読経してもらい御札を門に貼るのですが、それでも死人が出ることがありました。
門が開かないように、つっかえ棒をしたり紙を貼り付けておいても、扉は開いたそうです。




