第九十六話 裏で繋がってたりするの……良いよね
自身が十五歳のただの少年ではない事を自白したミナト。
その事に関してはあまり驚かなかったミケーレだったが、魔王軍が動き出している事を知れば流石に動揺が見え始めた。
「何故そうする必要がある、私一人に言ったところで出来る事は限られている。
それが分からないお前じゃないはずだ」
魔王軍の存在を公にしたくないという事に関して懐疑的な様子。
「こちらには独自の情報網があります、人手はなんとかなりますが問題なのは個人の実力なんです。
この前の戦いでも明らかになりましたが俺では高位の魔族相手に勝つことは極めて難しい。
今必要としているのは圧倒的な力を持つ個。俺の知ってる限り最も実力があって頼れる人は貴方しかいない」
数百年の旅で味方となった諜報員達が居れば情報を掴むことは勿論、中には武闘派の人間もおり。
ミナト本人もかなりの戦闘力を誇っている。が、相手がもしかつての災厄の六人レベルの実力ならば戦って勝つことは不可能に近いと判断。
(もしかしたら団長さんやラビリスって人とかにも先生を伝って協力を頼めるかもしれない。
強者には強者の繋がりがあるなら、最大限使わせてもらう)
以前アイクから聞いたこの国最強の四人。
少なくともその内の二人と面識のある彼女を味方にする事は絶大な意味を持つ。
「……お前がそこまで言うのは初めてだからな、本当にそうした方が良い理由があるんだろ?私にはどうも理解できん部分もあるが。
協力してやろう、ただし私が駄目だと判断すれば然るべき人物たちに即通達する。それでいいな」
全て納得したという訳ではない、全て言う通りにする訳でもない。
ただ協力はする。確かにそう言った。
「は、はい!ありがとうございます!」
(よし!これはデカいぞ、一気に動きの自由度と取れる選択肢が広がる!)
彼女を味方にするメリットはさっき言ったもの以外にも多数ある。
その内の一つは……。
「それで、具体的に私に何を頼むつもりだ」
「えぇっとですね……今はまだ魔族側の動きを調べている段階なので頼む事は殆どないんですけど……。
もし今後校内だけじゃなく、騎士団等も含めた会議などがあった時に意見を通して貰えるようお願いするかもしれないです」
「要はお前が動きやすいよう意見をねじ込んで来いと」
「そういう事になりますね。
先生の発言なら影響力は強いでしょうし、偶に重要な会議に出てたりしますよね?」
「知ってたのか……あまり周りには言っていなかったんだがな。
まぁいい、内容にもよるが多少の無理は通せる。だからなんかあるんだったら前もって言っといてくれよ、緊急で呼ばれる時もあるから」
「分かりました。
それと今度のあれの時にお願いが……」
その後も暫く話は続いたが、彼女が今回の件に関して全面的に協力してくれる事。
代わりにまた監視役としてお願いをする事があるという事。
後はこれ以上ミナトの事情は詮索しない事が決められた。
本人が頑なに言おうとしない事から言えないという事情まで察したのでそうなった、だが……。
普通の少年ではないが、普通に戻る為にこの学園に来たという事だけは話し。
二人の関係はまた一つ不思議なものへと近付いて行った。
生徒と教師、だが互いに役職関係なく協力関係にあり信頼はしているが仲が特別良い訳でもなく。
この距離感が二人にとっても……と言うよりミナトにとっては良いものだった。
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(さて、あの人を味方に出来たのは本当に良かった。
魔族側の動きはまだ探ってる最中だから今俺が出来る事は……あれだな。
トロフィムが言っていた黄玉眼の事を知っているかもしれないという奴。
長期休みに入ったから三日以上の遠征にも行けるようになったし、あれの前に行っときたいしな)
そうして次の行動が決まり、遠出の準備を始める。
あまり期待していないとは言え物事に絶対はない。
可能性がほんの僅かでもあるならそれを確認してから進むのがミナトのスタイル。
(そだ、折角だしあれ使ってみるか)
準備をしている最中、ある事を思い出して魔道具を取り出し使用する。
するとその数分後コンコンとドアがノックされ「参りました」と男の声が。
「入れ」
「失礼致します。
どうなさいましたか、新たな問題が発生しましたか?」
「いや違う。この間調べてもらっていた奴の所に向かう、明日には発つ予定だ」
やって来たのは諜報員の男。
先程使用したのは彼らに信号を送る魔道具で、お持ちくださいと以前渡されたが使っていなかったので今試すか、と。
「かしこまりました、ただ現地の者達からの伝言が……」
「?話してくれ」
「どうやら例の男は生死不明らしいのです、外からの探知を防ぐ結界が貼ってあったと」
(なるほど……結界なら死後残っていても不思議じゃないし研究者なら実験への影響を考慮して結界は張ってるものだしな)
「いい、俺が実際に行って確かめてくる」
「それと伝言はもう一つ、現地の者がご同行して頂きたいと言っていまして」
「……まぁいい、二日後には着くと伝えておけ」
「かしこまりました。以上で宜しければ失礼致します」
最後まで膝を着いたままで、言葉遣いもご覧の通り。
(いつも俺の事上にし過ぎなんだよ……もうちょい気楽に来てくれた方が嬉しんだけどな)
その上ミナトの命最優先である事から基本的に過保護。
必要以上に心配される事をあまり好かないので前にも態度を変えてほしいと言ってみたりはしたが……。
結局は向こうの熱意に押し切られこの形が継続となってしまった。
(いい加減慣れたけどさ。
さてと、久々の遠出だな……学校来始めてからはずっと王都に居たし、ここまで同じ場所に居続ける事はなかったからな)
転々とし続けてきたからか、別の場所に向かう事が新鮮な気持ちとなっていた。
今の諜報員達は、かつて諜報活動を生業としていた者達がミナトに命を救われた事から慕い始めました。
彼等はミナトの呪いの事を知っており、その事を調べたりそれ以外にも不穏分子などがいないかと日々世界中で情報を探っています。
諜報員の中にはミナトにあった事のない者も居ますが、組織のボスが慕っている(ボスは酒場のマスター)という事から従う事に抵抗を覚えている者はいません。
因みに今のボスはミナトが救った人物の孫にあたります。




