第八十七話 助っ人参戦PART2
{さて、実際どうするか……}
フレアを行かせ一人残るゼノ、精神論は良いが現実とも向きわなければならない。
目の前の強大な相手に対する立ち回り。判断一つ誤れば命はない。
「っと……やってやろうじゃねぇか」
{攻撃一つ一つは躱せない速度じゃない、ただ立て続けに来たら全てを躱しきるのは無理だ。
魔法で防ぐものと動いて避けるものを瞬時に判断する必要がある}
能力的にフレアの方が時間稼ぎには適しているのは事実であるが。
彼も全てが精神論だけで残った訳ではない。
ゼノは既に冒険者登録を済ませ、魔物との戦闘にも慣れている。
それに実力面で言えば彼の方が上であるし、得意の土魔法も時間稼ぎに適していて持ち前の戦闘IQも含めれば充分勝算はあった。
{毒だけは喰らったら駄目だ、何が何でもそれだけは避ける必要がある}
戦闘の最中常に警戒し続けなければならないギフトシュランゲの毒攻撃。
それも体勢に余裕があれば岩を正面に出す事で防ぐことも可能で。
個人での戦闘が始まって数分が経っている今でも負傷無し、というのは並の冒険者では出来ない芸当だ。
ここまで非常に上手く立ち回り戦況を維持し続けてきたのは流石と言える。
しかし戦闘とは、時に一瞬でカタが付くものでもある。
{毒!これは躱してっ……!}
最も警戒していた毒攻撃を躱したところまでは良かった、しかしそれを狙っていたかのように迫って来ていた尻尾への反応が遅れてしまう。
「ぐあっ!」
そのまま民家の壁まで打ち付けられ、身動きが取れなくなる。
魔法を使用していたお陰で魔力の流れが良かったのは幸いで、咄嗟に魔力が籠った腕で頭を守った事で即死は免れた。
しかし足は魔力による防御が遅れたせいで完全に負傷。とても歩ける状態ではない。
{マズい……意識を保つので精一杯だ……クソ……!}
即死を免れただけで重傷には変わりなく、足だけでなく頭部も負傷していて顔には血が垂れてきている。
腕もまだ動かせるが酷い状態。
満身創痍という言葉が一番手っ取り早く一番正確な言葉だ。
当然魔物はそんな彼を見逃すはずがなく、噛みつきで確実に止めを刺そうとしたところ。
開いた口の中に入っているはずだったゼノの姿はなかった。
ゼノ自身も驚き、直前まで口を大きく開いたギフトシュランゲが迫っていたはずが。
今では少し先にいてこちらに睨みを利かせている。
「かなり酷い怪我だね、悪いけどちょっと待ってて。先ずはこいつを何とかしなきゃ」
喰われる直前だった彼を救ったのは、アイクだった。
持ち前のスピードで間一髪救い出したらしい。
{良かったー、トロール君が言っててくれなかったらこの人助からなかったよね……}
戦況が落ち着いて来たところで、王都内の状況を確認してきてほしい。
と言われたのでクラスの誰かを探していたらギフトシュランゲの後姿を発見。
慌てて救助、という流れだ。
「お前は……第四の……。無理だ、逃げろ……敵う相手じゃない」
助けてくれたことへの感謝はあるが、今はそれを言う暇すらない。
このままでは助けてくれたアイクまでもが死ぬと思い逃げろと言うゼノ。
「でも僕じゃ君を運んで逃げることは出来ないし、ここで何とか戦って助けを待つしかない。
ごめんね。僕がもっと強ければ君をここから逃がす事も出来たんだけど」
人一人担いで逃げられる相手でもなく、だが当然見殺しにする事も出来ない。
ならば出来る事は戦う事だけだ。と剣を抜きながら答える。
「……僕じゃ不安かもしれないけど、任せてほしいな。
良い師匠が出来たんだ、僕だっていつまでも守られる存在じゃない」
そう言い飛び込んでいくアイク。
{ギフトシュランゲ、固い鱗と喰らったら終わりの毒が厄介。
僕の攻撃じゃまともに戦ってちゃ勝てない、今はとにかく突破口を探す!}
分析から戦闘に入るところなど、既に師匠に似てきているかもしれない。
今自分に出来る事を探して、不利な盤面でも突破口を探し続け抗い続ける。
分析も猛特訓の日々も、言ってしまえば諦めの悪さだ。
それも両者の共通点であり。
最大の長所。
{僕の速さなら攻撃は躱せる、ただ今はあの人の方に攻撃が行かないように気を付けないと}
敵の攻撃を掻い潜りながら意識し続ける。
思考を止めず、決して放棄しない。
最初は、正直無理だ。
そう思っていたゼノだったが今。その意見は直ぐに覆った。
{あいつ、あそこまで出来る奴だったか?確かにポテンシャルが光る場面はあった気もするが、少なくともここまでではなかった。
それに今俺の事も気にしながら戦っている……クソ、このままで終われるか!}
魔法での援護を始めるゼノ。
「ちょっと、大丈夫なんですか!?」
「援護は……任せろ。前衛は頼んだ」
あまり多くは喋らない、というより喋れない。
心配ではあるが助けてくれるなら。アイクも止めたりはせず、援護を有効活用しながら戦闘を継続する。
前衛ではアイクが気を引きつつ弱点を探り、後ろからはゼノの援護魔法。
先程のフレアとの戦闘と近い形だが、細かい所で違いはある。
フレアの回避は目から来るもので、まるで舞うかのように躱すが。
アイクの回避はスピード。駆け抜ける事で攻撃を躱している。
だからその場での回避能力はフレアの方が上手である為、そういう時は……。
{やば、加速間に合わない!}
躱せないと判断し防御に切り替えるところに、援護が飛んでくる。
岩を突き上げる事で相手の攻撃を弾く。
それによって生まれた僅かな時間でゼノの傍まで撤退。
「お前の機動力じゃ躱せない場面がある。
だがそこは……俺が埋める、迷わず行け。援護する」
アイクに足りないその場での回避能力。
そこを魔法で補い、二人で場を持たせる。
「オッケー、じゃあ任せたから」
再び接近し仕掛けに行くが、丁度この頃思い出す。
{そう言えばこの人第一の人だよね、フレアさんとミナトと戦ってた。
こんなに魔法が上手いのも納得かも。頼もしいや}
戦いは更なる段階へと、進みだす。
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一方、未だ北側で猛威を振るい続けているネヴィスドラーゴ。
「誰か……あいつを……止めて、、くれぇ……」
そう言葉を零しながら、地面を這いつくばる一人の騎士の前に。
ある男が現れれた。
「悪かったな、遅れて。
俺が来たからもう大丈夫だ!任せとけ」
意識が朦朧としていた事もあり、最初はその男が誰だったか分からなかったが。
目を凝らして見ればその人物に驚愕する。
「あ、あなたは!何故ここに居るんですか!?今朝のレイドに行っていたんじゃあ……!」
「レイド?そんな事あったのかよ、やべぇ気付かなかったな……まぁしょうがない!
今は先ずこいつ仕留めてからだな」
仕留める、と言っても目の前の相手はそのレイドの標的と同等の存在。
そう易々と倒せる相手ではない。
だがこの人物が言うのならその言葉に信頼感が生まれる。
「さ、やりますか!」
その男が遂に、参戦する。




