第七十七話 基礎練習……後にありがたい場面出てくるよね
放課後
いつもは激しい打ち合いを繰り広げている二人だが、今日は真逆と言える日。
「森羅自天流の修業を始める上で最初にしておかなきゃならない事がある」
「それが、、一番キツイっていう?」
「いや、今日やるのは土台作り。基礎中の基礎だからそこまでじゃあない。
ただこれが出来なきゃ話にもならねぇ」
果てしなく深い森羅自天流の道を行くための基礎固め。
そもそも森羅自天流の修業が始めてのアイクからすれば不安と僅かな期待がある。
{心と頭を鍛える流派の基礎固め。ほんとに何するんだろ}
さっぱり内容に検討はつかなかったが今その内容が明らかに。
「今日からアイクが毎日する事になるのが、瞑想だ」
「瞑…想…?」
どんな恐ろしいものかと思えば聞いた事のある言葉に少し安心する。
「瞑想って、、あの目瞑ってじーってしてるやつ?」
「そうだ。拍子抜けだったか?」
{まぁ心と頭を鍛える修業の基礎固めが瞑想、ってのは確かに納得は出来る。
あれって精神統一の修業だしそりゃやって当然か}
思ったよりも大丈夫そうと思っていたところ、さっきの言葉が気になり始める。
「ていうか毎日って言った?」
「ああ、最低でも一日十分は行ってもらう。
最初にも言ったがこれが出来なきゃ本当に今後の修業に進めないからな」
剣術を習うってのに剣のどこを持てばいいかも分からないような状態だぞ。
と例えていたが絶妙に違うような気もする。
とにかく瞑想が出来なきゃ本当に話にならない、って事を伝えたいらしい。
「じゃあ早速やってくけど、、、一応やり方教えとくか」
「うん、聞いた事はあるけど実際にやるのは初めてだからお願いしたいな」
「まぁやり方って言っても目瞑ってひたすら呼吸に意識を向けて、もしそれ以外の事が頭に浮かんで来たらとにかく振り払う、って事くらい。
コツを言っとくとすれば、息を吸った時と吐いた時。その時空気が通る感触を気にする……とかそんなもんかな」
まぁこれに関しては複雑なものでもないのでとにかくやってみる事に。
時間はミナトが止めるまでだが、、、一応十分程度で止めるらしいが本当かどうか。
{うーん、、これは確かに……っていうかこれも雑念だ!集中集中!}
いざやってみればやはり案外難しいもの。
無意識を意識するほど別の何かが頭に浮かんでくる。
「……」
{ミナトも時間測りながら瞑想してるみたいだけど……}
と気になってしまった瞬間。
「集中切れてるぞ。安心しろ、ちゃんと時間は気にしてるから」
一瞬で見透かされてしまう。
瞑想しているはずなのに相手の意識の乱れを察知出来るのはおかしいとアイクは一瞬考えたが、これも雑念だとして必死に振り払おうとする。
「……」
数分経った頃。
(よし、集中出来てきてるな。俺も久々にこれやるか。
最近は基礎のやつは出来てなかったし)
徐々に集中し始めたアイクを見て、自身も同じように集中し始め。
更に数十分後。
「はい休憩」
「っはーーーーー」
何度か休憩を挟みながら瞑想をし。
疲れてきたのかその場に倒れこむ様に休憩するアイク。
「確かにこれはキツイかも」
「センスあるよ、俺は初めての時全然出来なかったし」
「ほんと?なら良いんだけど……」
(まぁでも流石に今日は限界そうか、、よし)
体を動かさないとはいえ数十分も慣れない事をやっていれば疲労も溜まる。
下手に集中できない状態で続けるのもと思い、別のメニューを開始。
「うし、じゃあこっからは体動かすか」
待ってましたとばかりに嬉しそうな表情を浮かべて反応するアイクに立つよう促し。
周囲を見渡して時間を確認してから次の行動を決め。
「こっからは走り込みだ!着いてこいよー」
「えぇ?お、おー!」
動けるのは嬉しいが何故突然走り込み?と思いながらミナトと共に走る。
走り始めて直ぐにアイクがよく理由を分かっていない事に気付き、走りながら話しかける。
「なんで突然走るんだ、って顔だな」
「まぁそりゃね。さっきまで瞑想してたし、これまでこんな事した事なかったじゃん」
「他に優先すべき事があったからな。ただこれも必要な事だ」
「これって、、体力の事?必要だとは思うけどなんか意外かも」
「何言ってんだ、自分の武器を思い出してみろ」
「え?スピードだと思うけど…」
そんなの簡単、とばかりに答えるが簡単すぎて逆に不安にも感じ。
もしかして凄い深い意味でもあるのか?と考え始める。
「だろ?んでスピードを活かす為には全力を出し続けなきゃいけない」
「確かにそうだけど、、」
「場面によっては戦いが長引いたり、大規模戦闘の時とかなんかは何度も敵と交戦したりもする。
そんな時速度が落ちてたらどうする」
ミナトはよく大規模戦闘の場面の話を出す。
それはこれまでの旅路の中で特に苦しかった場面が大規模なものが多かったからだ。
常に最悪の状態を想定して準備をしたり、修業するミナトにとっては長時間の戦闘にも備えるのは当然の事だが。
この時代ではそれ程までの大規模戦闘というものは滅多に起こらない。
起こるとすれば魔物の群れ同士がぶつかった時などの様々な現象が重なり合った時だが、それは早々起こりうる事ではない。
だからアイクからすればミナトの話は少々理解し辛い事もある。
でも彼の言葉を疑ったり聞き流したりする事は決してない。
「スピードを売りにしてる奴は絶対スタミナ切れを起こしちゃいけないんだよ。
そうなったら魔力の無くなった魔法使いと一緒か、もしくはそれ以下だ」
特訓の時やたらと厳しいのも、純粋に強くなってほしいからだと分かっている。
「スタミナね、分かった!明日から毎日走るようにするよ!」
それに応え、追いつきたいと願うからアイクも奮起する。
そしてその光景を見て良い影響をミナトも貰う。
師弟関係として、一つの理想形がここにはあった。




