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忘却の勇者  作者: くろむ
蠢く陰謀編
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第七十五話 森羅自天流

正式に弟子入りしたいと申し出たアイク。

その返答を悩んでいた時。


ふと思い出すのはいつぞやの記憶。


”いつまでも考えててばっかじゃ何も変わりません!失敗したならその時また考えればいいじゃないですか!今私達に出来る事を考えるのが一番なんじゃないですか!?”


もう何百年と前の出来事。


当時魔王討伐の為に旅をしていたミナト達は、先の戦いで敗北。多くの犠牲者を出した時だった。


暗く沈んでいたパーティーの空気を払ったのは普段あまり強い言葉を使うことがないケレスという少女。


何故今その時の言葉を思い出したのかは分からない。

ただふと頭に過ぎったのだ。


(……そう言えばあん時は、かなり危ない橋を渡りっぱなしだったな。

大体の戦場は勝率なんて殆ど無いとか言われてて、死にに行くだけの戦いばっかだった。

何回死にかけた事か……人間の指なんかじゃ数え切れねーな)


自殺行為と言われた戦闘の場に立ち、命を削るように戦う。


冷静に考えれば退けばいい状況で戦い続けた。


(そんな俺達にとっちゃ……これ位どうとでもなるってか?)


もし解呪に失敗すれば、いつまでも年をとらないミナトは確実に怪しまれるだろう。

成功したとしても、これまで生きてきた年数が解呪の瞬間に体にのしかかったら。


どちらにしろ、彼らに大きな影響を与えてしまうだろう。


解呪に成功し学園を去る時の口実は既に考えていたが、その時弟子がいるなんて事は想定していなかった。


だが、想定外の事態なんて彼にとっては日常茶飯事。

子供の時から常に予想の出来ない事の連続で。


(……失敗したとしても、上手く言い訳は見つければいい。

解呪までに教えられる事を全て伝えきれたら師匠としての役割も果たしたと言えるだろう)


リスクは承知。


しかし彼は元々、感情型の人間である

リスクだとかデメリットだとかよりも優先したものがあるから彼は剣を握り旅に出たのだ。



「……俺の弟子になる、ってんなら。これまでより倍キツイぞ」


出した結論は、本心を大事にする事。

リスクだとかなんだとかは踏みつぶせばいい。

如何にも彼らしい結論と言えるだろう。


「!……ほんとっ!?」


「ああ、覚悟しとけよ」


当然願ったから聞いたわけだが、実際に了承されれば湧き上がるものもある。

超満面の笑みだったが引っかかるところがあり……。


「……倍キツイの?」


「倍は噓かもな、もうちょいキツイ」


「ーーー!」


声にもならない悲鳴を上げ、これまでの特訓の日々を思い出す。

散々ボコボコにされてきたあの時よりも倍以上にキツイ。


「まぁでも、、、改めてよろしくお願いします」


緩い空気に戻ったが、ちゃんとするところはちゃんとする。


「こちらこそだ。俺の良い特訓相手になってくれ」


それこの二人の空気間。





「じゃあ最初に言っておく事がある」


これにて正式に師弟関係を結んだわけだが、勿論ここからが始まり。

最初に行うのは確認作業だ。


「弟子になる、って事は森羅自天流を継ぐという認識で合ってるか?」


「うん。そのつもり」


念の為ではあるが本人の意思を確認し、これからについての説明を始める。


「さっき色々と言ったが、森羅自天流の修業は心と頭を鍛える事だ」


「心と、、頭?」


「そう。ほんとーに雑に纏めれば集中力を向上させる修業が主となる」


「……ふむ?」


いまいちピンときていないアイクの様子を見て、ここで例えを出すミナト。


「これは俺の場合の話だが……例えば俺とお前が腕力勝負をしたら負けるのはこっちだ」


「あーなんか前も似たような事言ってたかも」


「だが負けるのは腕力だけじゃない、殆どの身体能力で俺は劣っている。

学年全体で見ても間違いなく下の方だ」


そうは言っても……といった表情を浮かべているところに説明を続ける。


「しかし俺は聖魔祭で優勝した。クロムは以ての外、多くの生徒に劣っている肉体で俺は一番になった。

何故なれたと思う?」


「……やっぱり技術があるからじゃないかな。身体能力の差を埋めれるくらいの」


「それもある、間違いなくな。

だがその技術を支えているのも集中力だ」


そりゃ集中してなきゃ精密な技なんて出せないけどさ、と言いたげの様子。

ミナトは一つ一つなるべく丁寧にに説明をしていく。


「じゃあアイク、俺の反応速度は速いと思うか?」


と聞かれたら即答で返す。


「速いよ間違いなく。あの、、ゼノ君?との試合とかほんとに凄かったし」


実例として出すのは聖魔祭、個人戦二回戦。

フレアですら躱せなかった超広範囲魔法を躱した時の事を言っていた。


確かにあの場面を見れば一発で彼の反応速度が優れている事が分かるだろう。


「そうだ、反応速度なら俺はそこらの奴には負けない自信がある。

だが反射神経自体はさほど良くない、精々平均より少し上程度だ」


「?反応速度と反射神経は似たようなもんでしょ?なんで別物みたいな言い方に…」


二つの言葉を分けて使ったところに疑問を抱いたが、その理由は直ぐに説明された。


「まぁ殆ど同じような事なんだが……実践してみるか。今ちょっと俺を叩いてみてくれ」


え?と訳の分からない反応をしていたが言われたのなら……と右手で左頬を狙う。


端から見たらミナトには隠された性癖でもあるのかと思う行動だが、アイクのビンタはしっかりと防がれた。


{止められた。やっぱり反応速いけどなぁ……}


わざとらしく振り被ったり、ゆっくり叩こうとした訳ではないのにしっかりと手首を掴んでいる現状を見て。

一体何を伝えたかったのかを考えるが一向に分からないアイク。


「いいか、お前は今右手で俺の左頬を狙った」


「うん……それで?」


「俺がそれを防げた理由はただ咄嗟に反応しただけじゃない。

視線、肩の動き、肘の上がり方、手首から掌の向きまで。

全てを見てどこに攻撃が来るかを予測したんだ」


この発言にはこれまで散々ミナトに驚かされてきたかのアイクでも過去一番の驚き。


「は?いやそんなの流石に……」


「嘘と思うかもしれないが、実際そうだ。

対峙する相手はほぼ全員俺よりも圧倒的に身体能力が上、そんな相手の攻撃を何故防げるのか。

それは微細な行動まで見逃さず常に先の行動を予測しているからだ」


口があんぐり広がり塞がらないアイクを置いて話を続ける。


「これが集中力、及び頭を鍛えまくった成果で森羅自天流の行き着く先だ」


弟子になる、と先程まで意気込んでいたのに自信をなくしてしまった彼を一体誰が責められようか。

そんな事出来る訳ない!そう思ってしまって無理もないが、「ただし」とミナトは言葉を付け加える。


「これは行き着く先、要は究極系だ。ここまで目指す必要はない」


少しはホッとするような事を言われたが未だ不安が拭いきれていない様子で。

恐る恐るな様子で質問をする。


「僕がその修業をしてもちゃんと意味あるの?その……ミナトみたいに出来る自信が全くないんだけど」


仕方ない。だってそれをやってのける本人は数百年単位で身に付けた技術だ。

寧ろそんな簡単に出来てたまるかと言ってもいい位。


「大丈夫、どこに攻撃が来るとかは本来分からんもんだ。

ただなんとなくでいいから、攻撃が来る!って一瞬早く分かるだけでいい。その一瞬が戦いの場では生死を分けるからな」


「攻撃が来るのを一瞬早く……」



呪いの影響で弱りきってしまった肉体で戦う術を探したミナトは、他の全てを埋める事で身体能力の差を補った。


技、精神、経験。そこに森羅自天流を極めた事で得た圧倒的先読み能力。

敵の攻撃を本来よりも素早く読んで防御、又はカウンターに繋げる。


もし先読み能力が無ければ、ただただ身体能力の差で蹂躙されるだけのところを互角以上に渡り合う。


だがアイクが同じ様にする必要はない、だって彼には既にとびぬけた才能があるのだから。



「とまぁ森羅自天流の説明は以上だが……ここまでで聞きたい事はあるか?」


正直言えばよく分かっていないが大筋は理解出来た。

ただ気になったのはさっき自身が気付いた事……ミナトが何らかの流派に入っているんじゃないかと思った理由。


「これまでの事はなんとなく分かったけどさ、今言ってたのは言わば精神修行でしょ?

じゃあ僕が感じたミナトの型みたいなやつは勘違い?剣術は独学?」


そう聞かれたらナイスタイミング、とばかりに答える。


「確かに森羅自天流には決まった剣術の型なんかはない。俺が剣を教わったのも同じ師匠だけど、それは偶々師匠が剣士で、なんなら俺と同じヤマト族の刀使いだったから教わっただけなんだよ」


そもそも森羅自天流は武術を極める為の流派ではない。

心と頭を鍛える事で人間として格を上げる、その格というのは肉体的な強さとはまた別だ。

実際中には流派を受け継いでも武の道には進まず一人の人間として慎ましく生きる事を選んだ者も居た。


ミナトの場合偶々師匠が流派と剣を極めていたから両方教わっただけだが、今回も形は非常に近い。


「俺は双剣も使った事があるから基礎、後はちょっとした応用までなら教えられる。

でもこれは独学で身に付けたものだ、それでも良いなら剣術の方も細かく教えられるけど……」


「お願いするよ。正直言うとそのつもりだったし」


こちらはあまり自信がなかったが、即答で返って来た。


{だってミナト、今までも割と教えてくれてたし}


なんて思っていた事を本人が知る事は無いがこれにて最初の説明及び確認作業は終わり。


ここから師弟関係となっていくのだが……。

ミナトの鬼教官っぷりが出るのはもう目と鼻の先に迫っていた……。

章のタイトル考えるのに一日掛かりました。

一日考えた割にそこまで良いタイトルでもないけど、、、まぁ及第点でしょ。

それで、この章からはガチのバトルが増えていきます。

これまではミナトの戦闘シーンが多かったですが、これからは他の生徒の戦いもかなり描かれます。

ようやくこの作品の本領が発揮され始めるのもこの辺りからなので、楽しんで待っていてください。

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