第七十二話 またしても新たな
(さて、魔族関連は遠出が出来ない関係上あいつらに任せるとして。
今俺に出来る事はやっぱ……)
学校に着いて真っ先に行った事、それは新聞を読み漁る事だ。
数種類の新聞を机の上に置き、順番などは無視してとにかく全てに目を通す。
今朝買ってきたものから数ヶ月前のものまで。
ミナトが現在読んでいるのは人斬り事件に関する記事だ。
(この間の報告では多くの被害者にとある共通点がある。
表から探れる情報にも何かしら価値はあるはず、、、裏も知ってる俺だからこそ気付けることもあるし、そこから探っていけば真相により近付けるかも)
人斬り…ライコウと名乗っていた人物の事をミナトはずっと気に掛けていた。
ただの殺人鬼だとは思えなかったから。
そこでまずは被害者の洗い出しから始めたが、幾つか見逃せない情報が手に入る。
斬られた人物の数名が裏の世界と繋がっていた事。
そっち側の人間が不自然な位にやられている。
これを偶然と済ますかどうか。
しかし被害者の中には一般市民なども含まれていたので、そこが頭を悩ませる要因でもあった。
(うーん……。
ちょっと新聞程度じゃ限界か、もう人斬り関係の記事は全部目を通したけどどれも同じ様な事しか書いてねぇ。
どっかで時間見つけて俺も捜査に参加するか)
と考え始めたところで、教室に入ってくる生徒が増えてきている事に気付く。
時間的にもそろそろ来るかなと思っていたところで……。
「あ、ミナトおはよー」
「おう。今日はそっちも一緒か」
普段は一人で来ることも多いアイクが今日は共にミナトの席まで向かって来ていた。
留学生のアンテレだ。
「えへへ、実は一緒に登校させてもらってて」
「そっか。寝泊りは寮になるんだな」
「うん!結構一緒に居る事多かったから、朝も一緒に来たんだ~」
どうやらかなり打ち解けている様子だ。
流石のコミュ力と言っていいだろう。
その後も仲良さげに話していると、教室もかなり人が入ってきた頃。
彼が姿を現す。
「ねぇ、あの子知ってる?」
「もしかして別の科の人なのかな」
なにやら普段とは違う声がぽつぽつと聞こえてくる。
教室に入って来れば、クラスメイト達も誰?という様子で不思議そうに彼を見つめる。
「留学生ってまだ来るんだっけ?」
「いや、追加で来るのはもうちょい先だって言ってた。それに制服うちのだよ」
留学生でもない、だが見た事は無い。
堂々とクラスに入って来た彼が真っ先に向かった先は。
「やぁルチアさん、初めまして。僕はバルドル、仲良くしてもらえると嬉しいな」
そう名乗りながら普通の女子なら惚れてしまうだろうと言える程の優しい笑顔を浮かべる。
顔立ちの整った謎の人物が現れ皆困惑していたが、クラスの誰もが最初に思ったのは……。
{ルチアさんに話しかけに行った……!あいつ死ななきゃいいけど)
というものだった。
「はぁ?」
いきなり話しかけられたルチアは動揺せずいつも通りの対応で返す。
例えそれは初対面の人物でも変わらない。
(あいつ初っ端ルチアに挨拶とか度胸あるな、知らないだけか?どっちにしろだが……)
謎の人物の登場に皆が困惑していたためか、殆ど人間が気付いていないがこの男。
{かなり出来るな……}
ルチアが一目見ただけでそう判断した事に気付いたのもまた僅かだろう。
「誰だあんた、上級生か?」
上級生かどうか聞いているのにその態度は……と思うかもしれないがフレアはちゃんと気付いていた。
口の利き方や表情は相変わらずだが、体はちゃんと相手の方を向いていた事に。
{て事はこの人……そんなに?}
ルチアがこの対応をするのは、ミケーレとウォーデン。
後は相手が真剣に魔法の事を聞いてきた時だけだ。
つまりこの人物は少なくとも彼女なりに多少ではあるが気を使うべき人物であると判断したという事。
「いえ、同級生ですよ。同じクラスです」
フレアが驚いて思考に意識が向いていた頃、さっきの返答をする。
「この数ヶ月見た事ねぇのにか?」
「それはそうですね。僕は特別に席を置いてもらっているだけなので、普段はあまり学校に来れていないですし」
誰も彼の事情を理解する事が出来ないでいると、丁度ミケーレが教室に到着する。
「お前ら座れー、HRでそいつの事も紹介するから」
ぞろぞろと皆言われた通り席に座るが、気にしているのは彼だ。
(何者だ?先生の話じゃ学年四十四人で定員らしいけど)
ミナトも今回は少し興味深そうに話を待つ。
当然だ、存在しない二十三人目のクラスメイトが来たと言うのだから。
「じゃあ自己紹介は自分でしろ、事情は私から説明してやる」
教壇の隣に居る彼にそう告げて名乗るよう促す。
「では改めて名乗らせて頂きます。
僕の名前はバルドル。バルドル・ルーナです」
苗字まで名乗れば、皆そこに反応した。
「ルーナって確か……」
「ああ、ここの教頭のお子さんだ」
ミケーレからの説明が始まる。
教頭の息子、というだけでかなりの情報量だが本当に語らなければならないのはここから。
「彼は入試事態には合格したんだが、、体質の問題で継続的な登校が難しくてな。本来なら入学を見送るところ……入試成績を見た我々教師たちの判断で特例として席だけを置いておくことになった」
んな無茶苦茶な……と反応してもいい内容だったが、ちゃんと事情を考えれば分かる。
(つまり、そこまでする価値がある程の実力があるって事か。
登校が出来ない程度の理由で切り捨てるには惜しい程の)
中には教頭が権力を使ったのだと考えた生徒が居ても不思議ではないが、、、一部の生徒にはちゃんと伝わっていた。
目の前の優男がただならぬ実力者である事を。
バルドル君について少し。
作中でも少し触れましたが彼、中々のイケメンです。
あのザ・厳格親父みたいな見た目をしている教頭の息子とは思えない程の優男。
美人で有名な母親の方に似たのですが、中には血が繋がっていないだとか噂される程父とは見た目が似ていません。




