第六十九話 新たな
「~というのが今現在掴めている情報になります」
ミナトは今、例の酒場に来ていた。
「やっぱ魔族の動きは見過ごせないな……引き続き警戒を続けるよう言っといてくれ」
「かしこまりました。
それで、、先程仰っていた新たな案件とは」
「そうだ、今から言う人物と場所を調べてくれ」
今日ここに来た目的は、調査報告を受けるためと後一つ。
トロフィムが言っていた宛てのある人物を調べてもらうためだ。
「もし見つけても接触はしなくていい、俺が直接行く。
そいつが実在するかと今もその場所がちゃんと残っているかどうかを調べてくれたらいい」
(ま……これは一応だ。
確実にするための行動だから、あまり期待はしないでおこう)
会いに行くつもりではあるが期待はしない方針らしく。
それは奴の話を信用していない訳ではなく、黄玉眼についてはもう何百年と調べているのでたかだか数十年調べた程度でこちらの情報を上回るとは思っていないだけだ。
「承知しました。
会いに行かれる時は諜報員を付き添わせますか?」
「…一応頼む。場合によっては俺じゃどうしようも出来ない時もあるからな。
それとそこに行くのはもう暫く先だ、幾ら国内とは言えかなり遠いから休みの日だけで行くのは無理だ」
今度にある長期休みに向かう事や、それ以外でもライコウの件などの細かい話をして。
自身の今後の立ち回りについて練っていた。
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「第一学園の生徒が来る?」
「そうそう、交換留学?みたいな感じで二人来るんだって!」
その日クラスで話題になったいたのがこれらしい。
朝、HRが始まるまでミナトはアイクと話していたところでその話を知る。
(俺なんも聞いてないんだけど。そんなイベントがあるならちょっと位先に教えてくれてても良くない?)
交換留学生が来る程のイベントなら噂が広まるのも早いだろう。
だがにしても何も聞いていなかったのはなー、と少しだけ不満に思いつつも別にどっちでもいいかと結局開き直った。
(まぁ誰が来ようかあんまり興味は……ってベルが来たら確かに聞いておきたい事とかあるけど。
あいつは来なさそうだな。うちで言ったらクロムが行くようなもんだし)
こういうのはトップではなく、優秀な四~五番手辺りが来るだろうと予測。
選抜として個人戦に出場するレベルの奴だろうか……なんて考えていたらミケーレが教室に入って来てHRが始まる。
その話題に上がったのは噂となっている交換留学についてだった。
「あー、来週から第一魔法学園の生徒がうちに来る。このクラスにも一人な。
期間は短いが今回の目的は交流だ、積極的に話に行ってやれー」
大分簡素な説明だったが、詳しい話は紙に記されていてそれが校内に貼られているらしい。
今のこのクラスにその紙が貼られたところだ。
休み時間になれば皆その紙を見に行くが、結局気になるのは誰が来るのか。
それから一週間クラスの話題はそれで持ち切りになった。
「……」
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一週間後。
クラスメイトの殆どが囲んでいる人物が、この一組に来た留学生。
「人気者だねー」
その人混みには入らず遠くから眺めるアイクとミナト。
「行かなくていいのか?俺はてっきり最前列にでも居るのかと思ってたけど」
「ん?だってそんないきなり来られても困っちゃうかなーって」
意外に思ったので聞いてみたが、理由を聞けば直ぐに納得がいった。
(こいつは人の中に入るタイプじゃなくて人に囲まれるタイプだったな。
普段は俺とよく居るからそうなる場面が少ないだけで)
別にクラス内でミナトが避けられているという訳ではないが、端の方に居る事が多い点と。
何の気無しに二人の空間に近付くのはなんとなく憚られているだけ。
「っと、そろそろ昼食いに行くか」
考える事に意識を持って行っていたが今は昼休み。
時間に余裕がない訳でもないが、ギリギリになるのも好まない二人は集団を避けて教室から出て食堂に向かう。
「……」
廊下に出て歩き始めて割と直ぐに突然声を掛けられる。
「あ、あの!」
あまり聞き覚えの無い声だと思いながら振り返るとそこに居たのは件の留学生。
どうやら二人を追って来たらしいが……。
「えっと、、どうしたの?なんか場所が分からないとか?」
アイクが尋ねると向こうは少し目線を外し気味に答える。
「そうじゃなくてですね、、、あの!宜しければお昼ご飯一緒に食べませんか?」
緊張しているのだろう、目は泳いでいるしあまり自信がない事が分かる立ち方をしていた。
「僕はいいけど……ミナトは?」
「勿論大丈夫だ。
あ、あんまり気使わずしてくれていいからな」
提案を了承し道を教えながら歩き始める二人の姿を見て……。
{よし!せっかくお二人に会えたんだ、一生懸命お話を聞かせて貰おう!}
彼は二人のファンだった。
きっかけは聖魔祭の団体戦での活躍をみたところかららしいが、、、例の奴と違う点は純粋な憧れを持っている所だろう。
「どうかした?」
中々着いてこないところを見て心配して言うと、はっとして気持ちを切り替え力強く返事をする。
「いえ!なんでもありません!直ぐ行きます!」
{元気な子だなぁ…}
とアイクが思っていた頃、偶然通りかかった二組の教室がやたら騒がしい事にミナトが気が付く。
「なぁあれ」
足を止めて指を指しながらその騒ぎの中心であろう場所を見つめる。
その方向を見るとギョッとした様な顔をした彼を見てアイクも不思議に思い見てみると。
「……今、なんと言った」
椅子に座り目の前に立っている相手を静かに見つめながらそう言っているのはクロムだった。
「ですからぁ、クロム君弱くなっちゃったんじゃないですか?」
その発言に再び教室が騒がしくなる。
「今日の放課後、俺と決闘してくれませんか?」
「いいだろう。
自身の言葉を忘れるなよ」
全く見覚えのない生徒が、クロムに挑戦状を叩き付けた。
その彼曰く弱くなったそうだが果たして……。




