第六十七話 色々想定外で
トロフィムとの面会を済ませ、例の酒場に向かおうとしている最中。
やけに町が騒がしい事に気が付く。
(何だ?祭りでもやってたっけ)
騒がしいと言っても悪い方ではなく、賑わっている方の騒がしさ。
「はいはい今日は大セールですよー!」
「買い物するなら今しかなーい!」
(あーそういう)
呼び込みの声によってどうなっているのかを知る。
少しだけ悩んだ末、酒場には後で行く事にして今は食材を買い足す事に。
(金は節約しなきゃだからね、前と違ってあんまりギルドにも行けないし)
以前までは冒険者家業で日銭を稼いでいたが、今は学校に通う必要がある為そこに割ける時間は減ってきている。
なので最近はお金の使い方は少し考えるようになってきていた。
(買うもんなんて食材位だけど……結構色んなもん並んでんのな)
町の大通りに露店が大量に並んでいるが、売っている物は食料品に装飾品などの他にも魔道具まで並んでいる店まである。
だがミナトは正直服装を気にすることはないし、物欲も殆どない。
なので安くなっている食材を買っているところで……。
「お、アイクじゃねーか」
「ミナトじゃん!偶然だねー!」
ここでまさかの遭遇〔本日二回目〕。
「なんか買い出しか?」
「ううん、凄い盛り上がりだったからなんとなく来ちゃっただけ…」
「確かに結構人多いもんなー、、幾ら大通りでもここまで人が集まる事はないし」
右も左も人だらけの状況、聖魔祭の時ほどではないにしろかなりの賑わいぶりだ。
(ま、これも平和な証かな)
「…俺はまだ買う物あるから行くけど、この後どうするんだ?」
そう問えばアイクは少し悩んでから答えを出す。
「んー……迷惑じゃなかったらついて行っても良い?」
「まぁいいけど、、、別に面白くないぞ?」
若干不思議そうにしながら了承すると、向こうは笑いながら理由を話す。
「良いんだよ、ミナトとあんまり学校以外で会う事ないからさ」
そう言われたらそうだな、と思い行動を共にする事に。
「……」
隣で楽しそうにしているアイクを見て思うのは、さっきの言葉。
(深くは考えなくていい、自分が何者かはちゃんと分かってる)
そう自分に言い聞かせるようにして、歩いて行く。
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程なくして。
「この辺は個人が出してるお店なんだねー」
大体の買い物を終わらせたミナト達は、適当にぶらぶらしていた。
(確かに、、なんだこれ)
露店に並んでいる良く分からない謎の装飾品?を見たりしながら歩いていると……。
「おじさん良いの売ってるじゃねぇか」
なんだか聞いたの事のある声が聞こえた気がする。
「ふぉっふぉっふぉ。お嬢ちゃんも若い割に分かっとるのぉ……」
胸の辺りまで白いひげを生やしている老人と何かを買おうとしている少女。
「へぇ、これもしかして凄いやつなの?」
その隣に居るもう一人の少女も楽しそうに尋ねたりしている。
「これはな、多分だけ……ど……」
普段のよりも楽しそうにしていた彼女の顔が一気に歪んでいく。
「フレアさんにルチアさん!二人も来てたんだ!」
ここでまさかの遭遇〔本日三回目〕。
「もしかして二人も一緒に来てたの?」
「ううん、俺達は偶々会ってそれから一緒に居るだけ…」
ミナトは少し困り顔を見せる。
自分を見つけた瞬間楽しそうオーラが消滅したルチアにどう接したらいいかよく分からなかったから。
(別に好かれたい訳でもないけどここまで嫌われてるのはな……他の皆にもちょっと気使わせちゃってるし)
少し場の空気が良くない方に行っているのを感じて、アイクはそれを良くしようと言葉を並べる。
「二人も、って事はそっちは一緒にここに来たの?」
「う、うん!珍しい物とかも売られるって言ってたから気になって」
その考えを読み続こうとするフレア。
「なんか最近二人よく一緒にいるよね」
「そうだね、ルチアさんちゃんと話してみたら優しくって、、一緒に居たら結構楽しいよ」
だからミナト君も話してみたら仲良くなれるんじゃないかな、という意思を今度はミナトが察する。
話しながらも二人をちょくちょく見ており、気にしている事が分かる。
{なんでそんなにミナト君の事好きじゃないのか分からないけど、これはチャンスかもしれない}
ここで一度機会を作りたいと考えアイクに視線で合図を送る。
{任せてフレアさん、出来る限りやってみる!}
小さく頷き、思いが伝わった事を知らせてから作戦を立てる。
{このまま四人で一緒に周ろう!は無理かな、ルチアさんが興味あるのは魔道具っぽいけどミナトはあんまりみたいだし。
他に使えそうな案で言えば……これは断られそうだけど、、ええいままよ!}
ダメもとで作戦を思いつき、即行動に移す。
「そう言えばお腹空いてきたかもー……」
出来る限りわざとらしくない様に振舞いながら言う。
{頼むフレアさん繋いでくれ!}
心の中で念じながら平静を装う。
「まぁ確かにそろそろ昼飯の時間か、、皆は寮に戻るのか?」
ルチアは無言でフレアの方を見ている。
そっちが決めて良いよ、という彼女なりの合図なのだろう。
「私もお腹空いてきたけど……ここから寮まで結構あるんだよね」
もう待てないから近くで食べたいな作戦!
「ルチアさんはどうしたいとかある?外で食べたいとか」
ドキドキしながら聞いてみるが、返答は……。
「決めちゃっていいよ、特に意見は無い」
ツン、という効果音がしても全く違和感がない対応。
対するミナトはアイクとフレアが何かを考えている事には気付いていつつも、詳細まではあまり分かっていない様子。
{どうしよう……このままレストランにでも入る流れに持って行くか?}
などと思考を巡らせていると、ここでミナトが思わぬ発言をする。
「じゃあ俺の家来る?」
「「!?」」
これにはルチア以外の二人は驚きを隠せない様子。
「嫌じゃなかったらだけど」
マズい事を言ったかな、と思い意見を取り下げようとすると慌てて二人がフォローを入れる。
「逆に良いの?お邪魔しちゃって!」
「うんうん、私としては行ってみたい気持ちもあるかも……」
ゆっくりとルチアの方を振り返りながらそう言う。
{私としては行ってみたい、ミナト君のお家。
でもいきなりお家はハードルが高かったかなぁ……}
不安に思っていたが、答えは案外あっさりしたものだった。
「いいよ」
これにも二人は驚く。
{良いんだ?}
思っていたよりもケロッとした様子で言ったルチアだったが、一応考えがあり。
{あいつの構築術式への理解度は正直変だ、あまりにも深すぎる。
家に行ったらもしかしたら秘密の手掛かりが掴めるかも}
彼女の頭は、魔法の事でいっぱいであった。
こうして突然のミナト宅での食事会が開催される事となる。
本当はこの話一話にまとめるつもりだったけど尺の問題で二話になりました




