第六十五話 別の戦いの更にまた別の話
トロフィムの研究データを渡されたミナト。
「あー、、、これも必要かもしれんから一応渡しておこう。奴の日記だ」
いざその中身を見ようとした所で、新たに渡された物が。
「日記?こっちにも特異点の事が?」
「まぁ一応な……殆どが奴の考察だが……」
「?なんでそんな感じなんですか。見せるって事は結構大事な事も書いてあったんですよね?」
「そうなんだがな……念の為言っておくがこっちは覚悟を決めて見た方がいい」
との警告を受けたところ、余計に気になってしまい先に日記を見る事に。
ミナトは取り敢えず聖魔祭のあった日から読むことにしたが、初っ端からキツいものがあった。
〇月☓日
今日の聖魔祭では素晴らしいものを見た!あの子達の活躍ぶりたるや……子供の様にはしゃいでしまったよ。
だが妙にも思った、幾ら何でも強すぎる……ってね。だってそうだろう!?それに妙なのは単純な強さだけじゃない。もしかしたら今年の担任は長所を伸ばす主義なのかもしれない、、、昨日の団体戦を思い出してもそうだ!それぞれ得意な事を活かして立ち回る!実にイイじゃないか!!
あぁ……流石に実験には付き合ってはくれないかな……またどこかで戦闘を見れたらいいんだけど……。
※!(ビックリマーク)や?(クエスチョンマーク)などは実際には書かれていません。当時の彼の心情を表すためにこうなっただけです※
その後も日記を読み進めていったが、後半になるにつれ内容は地獄になっていき。徐々に彼の精神のおかしさが露わになっていった。
残酷的な実験内容をしようとしていたものだとかはまだ優しい方だ。
酷かったのはもはや欲情しているのではと思う程……とこれ以上は触れないでおこう。
「確かに……これは中々……」
読み終えた頃にはミナトも少しゲッソリした様にすら見える。
だが一応読んだ価値はあった様で、心を落ち着かせてこの日記から読み取れるものを探っていく。
(初見で特異点の存在に気付く勘の良さは流石だな、、、学園へ侵入して得た情報だけでかなりの考察を立ててるし……あまり認めたくないがやはり出来る奴だったか)
日記の中には徐々に我慢の限界が近付き狂い始めていく彼の心境だけでなく、学園へ忍び込んだ時の話やフラジオを誘拐した時の事も書かれていた。
現在教師側が持っている情報と言えば精々、授業での成績とそこから考えられる多少の考察程度。
この少ない情報からかなりの予想を立てており、これには流石と思わざるを得なかった。
(頭は切れる奴だし、、こっちには期待出来そうだな……)
日記から読み取れることは粗方大体探し終えたので、次は研究データの方を見る。
しかし心境から言えば複雑な気持ちも当然あり、このデータはクラスメイトを実験体として使われて得た情報だからだ。
もし実験対象をフラジオ一人として実験を進めていれば彼が無事に帰って来ていたかは分からない。
今回は偶々何の後遺症なども無く助かったが、一歩間違えれば危うかったことも事実。
怒りもあるが、使える手は使う主義のミナトは雑念を振り払ってデータに目を通す。
「これは……」
目を通した時ミナトが最初に思ったのは、(めっちゃ綺麗!)というものだった。
さっきの日記を書いた人物と同じとは到底思えない程の整った文字列。
一切の無駄がなく事実を淡々と記載しており、読みやすいとすら思える程丁寧に書かれている。
出来の良い資料だったお陰か直ぐに渡された物全てを見る事が出来た。
「なるほど……先生はどう思いましたか?これ」
自分の中でもある程度考察した上でミケーレの意見を聞く。
「私はかなり正解に近いと思っている。
お陰でもうこれ以上特異点について悩む必要はなくなりそうだ」
「……」
ミケーレからすれば、特異点の正体など実際に知る必要はない。
どうしてこうなっただとか、その仕組みがどうだとかは関係がないのだ。
必要なのは結果どうなるのかだけ。
大体の特性が理解できれば、後はそこからどうやって成長させていくか考えるだけでいい。
だから今回手にした情報は彼女にとってはもう満点であり、求めていたものだった。
(身体に作用する、、てことはルチアの特異点は魔力量とか放出量とかになるのか。だって知識とかは身に付けるものだし、魔力コントロールは今課題として練習してる部分だしな)
トロフィムが結論を出した特異点の正体。
それは十六年前、正確にはその付近の年で国内のあらゆる箇所で発生した謎の霧が原因である事。
その霧はどういう訳か胎児にのみ影響をもたらすものであり、それは人間以外に魔物などにも作用する。
特異点、というものは霧が身体の一部に作用しその能力を通常では有り得ないレベルまで高めたりした部分の事。
例として挙げられていたのはフラジオ。
彼の特異点は柔軟性であるが、彼の場合は関節部分に作用したのでああなったらしい。
「確かこの霧を発生させた研究者って……」
「ああ、自殺している。何故こんな事をしたのか騎士団が追求しに行く前にな」
(その研究者が何を思ってこんな事したのかは分からん……魔物を強化する方が目的だったとしてもおかしい、街中にも霧は発生してたし……)
特異点についてはかなり知る事も出来たが、結局分からない事も多く残っている。
「それに……この一文。
中には霧の作用によって生まれた特異点に他の部位がついていけなかった者の存在も予測できる。
これって例えば、一部の発達しすぎた能力によって体のバランスが崩れてしまった場合もあるって事ですよね」
「……だろうな、適応出来なかったとかが理由で健康には育てなかった子達も居ただろう」
次々に闇の部分が見えてくる。
霧を発生させた研究者の自殺、特異点に適応出来なかったであろう子供たち。
(つまりここの皆は適応出来た側、、光が輝くって事はその陰の闇もあるものか……)
光る才能があるならその逆も然り。
流石にこれは公にしちゃマズいか、と納得するミナト。
この間の誘拐事件、犯人は聖魔祭で見た活躍を機に興味が湧いてしまった、と言うのが動機として生徒達には説明されている。
トロフィムはミナトとの交戦中特異点の存在を語っていたが、幸いその場に居合わせていた他の生徒達はよく聞こえていなかったようで。
現在も特異点関連の話は一切生徒には漏れていない。
生徒からしても別に特異点などと呼ばずともただ特技がある、程度の認識で何ら問題は無いし。
適応出来なかった人たちにこの件を説明したところで治療法などはない。
まぁそもそもで言えば学校側も別に特異点などと呼ぶ必要もないのだが。
だから今後も特異点の存在が公になる事は無いし、する必要もない。
今回の事件も原因は学校側にあるのではなく、どの道好奇心を抑えられなかったトロフィムがどこかで存在に気付き誘拐といった行動に及んでいただろう。
データの確認は全て済み、犯人であるトロフィムは逮捕。
もうこの件はこれで完全に終わりである。
(……ダメもとで聞いてみるか)
ここでミナトがとあることを思いつく。
流石に出来ない半分位の気持ちでの提案。
「あの、、トロフィムに会いに行く事って出来ますか」
「お?いいぞ、話は通しといてやる」
「え?」
「え?」
まさかここまで速攻で許可されるとは思わず驚きを隠せない。
「自分で言うのも変ですけどいいんですか?そんな直ぐに判断しても……」
逆に良いのか、と思ってしまったミナトにミケーレは話す。
「そりゃ本当はもうちょっと考えてから決めなきゃならないが……お前はこの事件でかなり活躍してくれたからな。
功労者にはそれなりの権利があるものさ」
まだ少し驚いているが、良いのならばこちらとしてはありがたいと。
日程を伝えて話を通しておいてもらう。
(可能性は低いが、一応な)
会いに行くのは今回の件とは別の理由があるらしい……。
特異点についてこっちでも少し触れておきます。
他の部位がついていかず健康には育てなかった子供たち、と言っていましたが。
これは例えば病弱であったりだとか、一部が強すぎるが故に人よりも上手く力を籠められなくなったり。魔力を練るのが難しくなったりなどがあります。
一応言っておくと、異形で生まれてきてしまっただとかは無いです。
ただこれが原因で生きるのが大変になってしまった人は居ます。




