第五十九話 謝るって……難しいよなぁ
ちょっと期間開いちゃいましたがまた再開します!
お待たせしました!
一週間ほどの休校期間が開け、ようやく普通の授業に戻れる日……の朝。
「本当に申し訳ない」
頭を下げながらそう言う彼は、普段の様子からは正反対ともいえる様な真剣そのものだった。
先の誘拐事件の発端は彼ことフラジオがトロフィムに捕まった所から始まる。
そもそも何故あの男が学園に転移する事が出来たのか、というのは非常に大きな問題。
転移魔法は発動地点と到着地点それぞれに魔法陣を用意しておく必要がある。
だがクラスの中に魔法陣なんて置いておくことは出来るはずもなく。
しかしどうしても奇襲を仕掛ける必要があったトロフィムがとった策は、魔道具を使って侵入する作戦。
その魔道具を中に持って行かせる役にフラジオがなってしまったのだ。
「僕が敵にやられてしまったせいで皆を危険に晒してしまった。
謝って済む話じゃないのは分かってる、でも言わせてくれ。すまなかった」
帰宅途中に突然標的にされ、しかも相手はかなりの手練れ。
別にフラジオが悪いという訳ではない。
だがどうしても謝罪しなければ心が持たなかった。
それ程までに自分を責めていたから。
朝のHR。
本来なら学校側の今後の対策について先生が話す時間だったところを、フラジオが先に話をさせて欲しいと言って作られた時間。
彼の隣に立っている先生は、何も言わなかった。
否定も肯定も何も言わずただ傍に立っていた。
事件の流れを知っているクラスメイト達も、誰一人フラジオが悪いとは思っておらず、寧ろ一人実験体にされていた事を心配している状況。
本当なら何か声を掛けようとしていたが、彼の真剣な様子に中途半端な事は言えないと思って誰も何も言えずにいた。
(……)
暫くの無音が続いた後、最初に口を開いたのはミナトだった。
「別に謝らなくても良いんじゃないか?今回は偶々ターゲットがお前になっただけで、ここに居る誰もがそうなる可能性があった。
それにお前だって被害者だ、幸い皆五体満足で帰ってこれたし。ルチアも良いだろ?」
今回の事件軽傷はミナト含めて戦闘の現場に居た数人と、唯一軽傷とは言えないレベルの負傷だったルチアも命に関わるような事は全くなかった。
「……別に私はなんでもいいよ。変に謝られても逆にムカつくし」
いつものように気だるそうに言うルチア。
一番の負傷者と一番犯人と戦った二人。
この二人が良いと言うなら他のクラスメイトも何も言う事はなく。
続けるようにアイクも口を開く。
「僕も二人と同意見だよ。むしろフラジオ君が心配な方さ」
この発言をきっかけに徐々に他の皆も言葉を発し始めていき……。
「そうそう、皆今ここに居るんだし良くね?」
「今度は返り討ちに出来るようまた授業頑張ろーぜ!」
空気が一気に変わっていく。
元より皆こう言いたかったから、きっかけさえあればこうなるのも当然の事。
「み、みんな……」
フラジオの顔も徐々に上がっていき、何故かフラジオコールまで起こる始末。
(なんでこうなるんだよ)
突然始まった掛け声にミナトは困惑していたが。
担任のミケーレも笑って見過ごしていたので良いか、と流れを傍観。
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放課後
「よし、じゃあ今日もいくぞ」
「……うん」
この一週間出来なかったが、もう日課と言える程二人で行ってきた放課後の特訓。
学校が始まったので今日からまたこれも復活するのだが……。
両者いつもと違う様子。
(あれから考えた。あの時もっと他に言葉があったんじゃないかって。
でも分からなかった、俺はやっぱり頭は良くないから。だったら俺の知ってる方法で向き合うだけだ)
木刀のミナトに対して真剣のアイク。
圧倒的な技量でどんどんと押していくミナト相手に、持ち前のスピードで対抗する。
「っ…!」
「……」
(俺は、これしか知らない。昔からこれしか握ってこなかったから、仲間と喧嘩した時もこうしてきた)
剣を交え、剣で語る。
これが導き出した結論だった。
しかしこれはミナトにとって最も得意なやり方で、最も紳士に向き合う事が出来る方法。
実際感情は剣に出る。
いつもよりも苦しそうに剣を振るうアイク。
対してそれを受け止めるように、、でも強く打ち返すように剣を振るう。
「くっ……!」
一度攻撃をもろに喰らい、後ろに下がるアイクにここでミナトは話しかける。
「何でそんなに焦ってるんだ」
「!」
図星だったのか、動揺がよく分かる表情の変化。
対照的にとても落ち着いて話すミナト。
「俺は人の気持ちを汲み取ってやれる程賢くないし、優しさも持ってない。
でもそんな俺でも分かる、お前が今苦しんでる事位は」
「……」
何も言い返さない。
だが剣を握る力だけは増していって。
葛藤している事が目に見えて分かる。
「……どうしたの、打ち合ってる途中に雑談なんてした事無かったのに」
「確かに、でもそっちこそ会話をはぐらかすなんてした事なかったんじゃないか?」
正直ミナトはあの時アイクがどんな気持ちだったのかを分かっている。
全てではないが大部分は理解している。理由は簡単、自身も同じ感情になった事があるからだ。
(悔しいのも苦しいのも経験だ。むしろこの段階でここまで強い感情を抱けるのは素質と言っても良い。だからこそ今は向き合わなきゃいけない、そしてそれは俺も一緒だ)
これから生きていく上で挫折と言うものは必ずやって来て、必ず乗り越えなければならない。
だが今回の原因の一端はミナトである。
それが良い悪いではない、関与しているならば最後まで付き合うのが道理。
これが今のミナトの考えで。
そしてそれはアイクにも伝わっていた。
当然全てではない、ただ相手の真っすぐな瞳を見れば分かるのだ。
どれだけ自分に向き合ってくれているのか。
だからこそ。
彼の真っすぐさが響いた。
真面目が故に、誠実なアイクだからこそ余計な罪悪感まで覚えてしまう。
「…あの時の俺に余裕は無かった、だから良くない言い方を……」
そう言い終わる前に言葉を被せる。
「ミナトは悪くない!」
出会って以来、ミナトが聞いてきた中で最も大きな声を聞いた瞬間だった。
「悪いのは僕だ、、、分かってるのに。今もちゃんと分かってるのに……でも」
今度はか細い声で話し出した。
消え入りそうで、自責の念が詰まった声。
アイクは、静かに語り始める。




