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忘却の勇者  作者: くろむ
特異点の謎編
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第五十五話 怒りと困惑……それと怒り

(音が聞こえなくなった、、だがもう位置は把握出来てる。急がねぇと)


先程まで鳴っていた戦闘音がしなくなったという事に焦りを覚える。


屋内戦で魔法使いが長期戦なんて出来る訳がないという事実。

それに相手は何を目的としているかも不明の輩。


不安や焦り、怒りといった感情を抱えながら走りようやくその部屋に着いた頃。


目に入ったのは、眼鏡をかけ不快に笑っている教室に侵入してきた男と。

腹部から出血しており倒れているルチア、そして彼女を守るように抱え込んでいるクラスメイトの男女の姿。

部屋の端には生気を失ったように佇んでいるフラジオの姿も見えた。


この光景を見てミナトが最初に発した言葉は。


「クソ野郎……!」


そう言って刀に手を伸ばし、即刻眼鏡の男に斬りかかる。


すると向こうはまた同じように剣を出しそれを防御。

突然斬りかかられ鍔迫り合いの状況になっても、男は笑みを絶やすことは無かった。


「何故このクラスを狙った!フラジオに何しやがったんだ!全部言え!」


普段の彼からは想像できない程の剣幕で問いただす。


「ふふふ、君が一番の障害になる事は予想していた通りだったね。どうだい、一旦私とお話ししてみないかい?」


ニヤニヤと笑いながらも実力だけは確かなのか、全く押せる気配が無い。

押しきれないと判断すれば、舌打ちをしながら一度距離を取る。


(落ち着け、感情的になるな。倒すことが目的じゃない、時間を稼げばいい。相手の情報を知れるなら話し合いなんて望む位だ)


自身を冷静にさせようと一度深呼吸してから、今度は会話を試みる。


「お話だと?んな事言うならじゃあルチアは何だ、ありゃ軽傷では済まねーぞ」


「んーそうだねぇ、私も本当なら彼女を傷付けたくはなかったんだけど……こっちの話を聞く前に暴れ始めちゃったから仕方なくね。

しょうがないじゃないか、彼女は素晴らしい魔法使いなんだから」


(やっぱ偶々うちのクラスを選んだ訳じゃなさそうだな、、もう少し聞き出せるか?)


会話が成立するならばと、もう少し踏み込んだ事を聞く。


「言い方的に俺達の事は知ってたようだな、聖魔祭でも見たんだろ?

何故こんな事をした、ここまで大事になればお前は確実に捕まるぞ」


「何故か…それは純粋に君達に興味が湧いたからさ!それ以上でも以下でもないよ!」


大きく手を広げながら全身を使って自身の思いを表現する男は、徐々に興奮を増していく。


「最初はね、我慢しようとしたんだ。でも我慢できなくてさ、、それで君達の学校にお邪魔して調べさせて貰ったんだよ」


「!あの時学校に侵入したのはお前か」


(ライコウだとは考え辛かったが……。つーかこいつマジでなんなんだこいつ)


鼻息を荒くし始め、少しずつ早口になりながら男は語る。


「学校側は特異点、って言うんだろ?分かる、あれは異質だ!それに彼らは着眼点も良い!十六年前に起こった事件は私も当時個人的に調査していてね、私もあの霧が原因だと思うんだ。

並外れた能力!全身ではなく一部に作用する特殊な性質!あぁイイ!本当にイイ!!」


狂ったように話し始める様子を見て、流石のミナトも困惑。


(イカレてやがるこの野郎……)


「特異点まで知ってんのか、俺達で実験でもするつもりだったか?」


会話を続ける事で時間を稼ぐミナト、その理由は一つだけではなかったが……。


「あぁごめん、ごめんね。本当はもっとお話ししたいんだけど今は時間が無いんだ、悪いけど君の時間稼ぎには付き合ってあげられない。()()()に行ったらじっくり話そうね」


(時間稼ぎはバレてたか、、つーか時間が無い?……そうだ何で気付かなかった!外からでも分かりやすい結界?そんなとこにいつまでも居る訳ねーだろ!こいつ、、もう一回転移する気だ。

今度はさっきよりも時間をかけて魔法を発動させようとしている、次はどこに飛ばされるかわからねぇ!そうなったら本当にマズい、なんとか止めねぇと!)


こちらの思惑が悟られると同時に、向こうの思惑も悟る。


あちらも戦闘態勢に入りやる気満々の様子。


やるしかないか、と覚悟を決めたところで突然男はミナトとは全くの別方向に向かって魔法を放つ。


「っ!」


「ごめんねぇこれ以上怪我させたくないから大人しくしててくれるかな」


(こっちもバレてたか、上手くやってくれてたんだけどな)


実は二人が会話している最中、こっそりルチアを連れて撤退を試みていた二人。


(あいつらの特異点は長射程の魔法と無差別の音波魔法。ここじゃどっちも本領発揮出来ねぇ。

ルチアを守ってもらう事に専念してもらうか)


「二人は無理に動かなくていい!出来る限りルチアの出血を止めてくれ」


こくりと頷くと、一人は治療に専念しもう一人は万が一にも流れ弾が当たらない様に守りながらそれの補助。


この状況下でも冷静に動けている二人に敬意を払いつつ、自分を再び奮い立たせるミナト。


(俺は俺に出来る事を……さっきあんな事言ったんだ、自分の言葉には責任持つぜ)


まずはいつも通りの様子見から入ろうと動く。


三人が居る方向と逆側に向かって横から回り込むように動きながら相手の戦法を調べる。


そうしようとした所で相手は予想だにしない行動をとった。


ミナトどころか、ルチア達が居る訳でもない場所に手を伸ばす。


その方向に居たのは……フラジオだった。


(まさかこいつ…!)


即座に守ろうと動く。


「ほう…今の魔法に追いつくのか、やっぱり初速が速いねぇ。走り出すまでも速かった」


人形かと勘違いするほど動かないフラジオを抱え、なんとか最初の魔法は回避。


「お前、、何してやがる……一体何が目的なんだ、、なあ!」


またも怒りをあらわにするミナト。


「そうだ!まだ自己紹介をしていなかったね!私はトロフィム。改めてよろしくねミナト君」


男は、嬉々とした様子で戦いに臨む。

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