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忘却の勇者  作者: くろむ
特異点の謎編
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第五十四話 思うが故に

(探知魔法……は妨害されてるな、結界が貼ってある。破壊は出来そうにないが認識しやすい結界だ、これなら外からの救援も期待出来そうだ)


淡々と調査を進めるミナト。


最初に行ったのは探知魔法でクラスメイトの位置の確認、それと犯人の現在地と人数確認。

それが出来ないと分かったら今度はここがどこなのかを調べ始める。


コンコン、と壁を叩いて反響音を聞く。


(地下室か、、幾らあいつが凄腕でもこの人数をそう遠くへ運ぶことは出来ないはず…だとしたらここは王都内の地下室。結界の事も含めるとやはり外からの救援を待つのも手か…)


などと考えながら、一通りその場で出来る事をし終えたら移動を開始。


一先ずはクラスメイトとの合流を図る。

もし仮に相手が単独犯だろうが複数だろうがバラバラで居るよりかは、固まっていた方がまだ安全だからだ。



様々な思考を巡らせながら移動を始めると、最初の分かれ道で二人のクラスメイトと遭遇。


「!お前ら、無事だったか」


「うん、僕たちは同じ部屋に飛ばされてて。ミナト君は一人だったの?」


「ああ。どうやら人数はバラつきがあるようだな……いや今気にするのはそこじゃないか。二人とも付いて来てくれ」


こうして二人も連れて更に移動を開始。


走りながら情報を交換する。


「一応聞くが他の奴らは見たか?」


「見てないよ。いきなり知らない部屋に来てて、、とにかく皆を探さなきゃと思って動いた所で丁度ミナト君と会って…」


「来たとこと別の通路は?」


「それは無かった、通路は一個だけ」


(俺の居た部屋もそうだった。だったらこの道に進めば確実にまた誰かに鉢合うはずだ。それがクラスの奴だったら良いが…)


そう考えながら走っていると、また直ぐに別の部屋を発見。


最初に居た部屋よりも大きな場所。

三人は足を止めてこの部屋を調べる事に。


「さっきは気付かなかったけど、ここ研究室、、、だよね」


「確かに。細かくは分からないけどこれとかも何かの研究データだ」


あちこちに置かれている研究データ。

教科書でも見た薬草や、魔物から低確率で手に入る素材など様々な物が大量に置かれている。


「……」


そうしていれば今度はまだ来ていない通路から人の足音が聞こえてくる。


先に合流していた二人は警戒するが、ミナトだけは冷静に来る人物を確認。


「皆!無事だったんだね!」


「っはー良かった、アイクで」


現れたのはアイク。もしかしたら敵が来るかもしれないという不安もあったので、着た人物を見て安堵する。


「今集まってるのはこの三人だけ?」


「そうだよ、私たちは元々一緒の所に居てミナト君とはその後合流したの」


更に人が集まったことで軽く情報交換。




「なーるほど……これからどうする?ミナト」


状況を確認したところで今後の動きを相談し始める。


(この建物がどの位デカいかは分からないけど、恐らくずっと隠れられ続けるほどのサイズでは無い。だったら早く皆と合流するか或いは……)


聞かれたミナトはしばらく考えた後、ようやく口を開こうとした瞬間。


ドカーン、と少し離れた位置から爆発音が鳴り響く。


「い、今の音って…」


(まず間違いなくルチアだな、流石に建物の中だから威力は抑えてるがこの情況で魔法をぶっぱ出来るのはあいつ位だ。よし)


さっきは言えなかった言葉の続きを再び伝えるミナト。


「二人はここに待機しててくれ、もし他の奴らが来てもそう伝えといて」


「わ、分かった!」


流石に分かっていながら戦いの場に引っ張っていくことは出来ないと、先に合流した二人には待機を。


「アイクにはまだ動いてもらう、いいな?」


「任せて」


「よし、じゃあ行くぞ」


そして二人で音がした方の通路を通って行く。


まだ音が鳴り続けている為、探知無しでも場所が分かる事は幸運であった。


(もし交戦したのが剣士だったら分からなかったかもな。だが…)


魔法を使ったからこそ位置は分かったが、懸念が一つ。


(あの野郎は近距離もそこそこいける口だ、幾らルチアでもこの狭い地下室だと条件が悪すぎる。ハッキリ言って最悪、どこまで持つか……)


不安を抱きながら音のする方に走っているとここで分かれ道が現れる。


一度足を止めて、どの道から音が鳴っているのかを聞く。


「…こっちだよミナト、間違いない。急ごう」


「……」


そう言って再び走り出すアイクを呼び止め、ある事を告げる。


「いや、そっちには俺一人で行く。アイクは別のルートに向かってもらう」


突然の言葉に思考が追い付いていない様子。

直ぐにどういう事かを聞く。


「え…?どういう事?何で……」


「相手が必ずしも単独であるという保証はない、そうなれば他の皆も危ないからな。アイクはとにかく皆を見つけてさっきの場所に向かうよう伝えてほしい」


「で、でも!もし相手が複数なんだとしても、一人一人確実に倒していった方が……」


「その意見も正しい、だが今回の場合はリスクの方が多い。こっちは俺に任せろ。

それにもし仮に第二の敵と遭遇してもお前なら逃げられる。それを見越してのお願いだ」


「っ…僕も戦える!せめて時間稼ぎ位はしてみせるから!」


「相手はかなりの手練れだ、正直俺でも勝てるか怪しい。いざと言う時に守れる保証が無い。

いいか、今回の勝利条件は助けが来るまで耐える事だ、全員を安全な所に集めるのも重要な役割で。他の誰よりも実力の分かってるお前にだから頼みたい」


そこから無言が続く。


珍しく取り乱したような様子だったアイクと、緊急事態の為か普段よりも早く言葉を並べるミナト。


{それじゃあ僕は……}


こんな事をしている場合ではないと。

こんな事を考えている場合ではないと、分かっていながらも考えてしまう。


{僕は一体……何を、、何をしてきたんだ……}


暫くの無言が続いた後、先に言葉を発したのはミナトだった。


「…もう一度言うがこれはお前を信頼しているから頼んでるんだ。本来ならさっきの場所に居て欲しかった、でもお前だったら頼めると思って…」


そう言い終わる前に、アイクが遮るように言う。


「分かった、こっちだね。ごめんね変なこと言って」


この時の彼の表情が、ミナトの頭に強く残った。

どこか懐かしく感じたから。


昔自身も感じた事のある感情が体中から溢れていて。

瞳、唇、腕、指先まで。僅かな震えやぎこちない表情、強く握られた拳。

本人が必死に押し込めている感情が全身から滲み出ていた。


「無事に帰って来てね」


とだけ言って暗い通路に消えて行った彼の後姿に、思わず声を掛けそうになる。


「っ……」


だが、出かかった言葉を必死に呑み込む。


(今言っちゃいけない、これは逃げだ。アイクはちゃんと戦ったのに、俺だけ逃げるのは違ーだろ)


そう自分に言い聞かせ、もう一度決意を固めて自身も行くべき場所へ走り出す。

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