第四十九話 道のりは遠い
授業が終わり放課後。
最近新たな日課となったアイクとの特訓の時間。
「ちょ…ちょっと休憩挟むか…」
「そうだね…」
お互い息が切れてきたところでいったん休憩を挟む。
(さっきフレアさんに言われたけどそんなに疲れて見えるのかな…)
ひと息ついたところでふと思い出す。
しかしこういうものは自分では分からないので、丁度隣に居て気軽に質問できるアイクに聞いてみる。
「俺って疲れてる様に見える?」
「まぁそりゃ今はね」
いやそうだけども、と言い返すが突然聞かれたら仕方ないかと思い一応ちゃんと説明を挟む。
「~ってな感じで言われたんだけど、そんな風に見える?」
うーんと少し悩んでから答える。
「確かに疲れてるようにも見える」
(やっぱそう見えるんだな、、確かに睡眠時間は減ったけど言われる程なのか…)
「でも…」
周りからはそう見えるのか、と思ったところでアイクが言葉を付け加える。
「よく考えたら割といつもそんな風に見えなくもないよ」
飛んできた言葉は予想外の物だった。
もはや驚きすぎて「えー」しか言えない程。
(嘘だろ?俺ってそんな風に見えてんの?)
まさか普段の自分がそんな風に思われてるとは知らず、軽くショックすら受けていた。
「もはや俺がどう思われてるのか普通に気になって来た…」
そう呟くミナトにちゃんと説明をする。
「何て言いうかねー、常に気を張ってるって言うか、ずっと何かを気にしてるみたい」
「!」
この言葉には思い当たる節のあるミナト。
呪いやら監視役やら、それも確かにある。
だがもう一つ。
本人も自覚していない事があった。
無意識の内にそうなってしまった事。
もしかしたらそれはこれまでもあったのかもしれない。
しかしここまでになったのは、今回が初めてのはずだ。
まぁ本人がこの事に気が付くのはまだ先の出来事…。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ミナトと出会ってからまだ数ヶ月しか経ってないけど、幾つか分かったことがある。
一つ目はめっちゃ強い事。
とにかく強い、よく授業でもペアを組むけどまだ一本だって取れたことが無い。
マジで手加減しないからね。でもそれだけ本気で相手してくれるのは純粋に嬉しい。
二つ目は隠し事が多い。
どうにも先生と何かあるみたいで、偶に放課後二人で会っている事を実は知ってる。
それ以外にも色々隠してるんだろうなーって事が結構あったり。
三つ目は、、どこか距離を感じる。
ちゃんと隣に居てくれてるはずなのに、壁を感じる訳でもないのに。
でも届かない、触れられない。不思議な感覚だ。
これ以外にも色々あるけど、言ってしまえばどれも隠し事に繋がってる。
あの強さにも、理由があると思う。
クロム君とも少し違ってて、これまで見たことが無いタイプの強さで。
距離を感じるのも、もしかしたら過去に何かあったからなんじゃないかなって思ったりする。
この前学校に来た理由を聞いた時、ミナトは言えない事があるって殆ど自白してた。
あそこまで言ってくれたことは確かに進展だとも言えるかもしれない。
それから僕は一つ考えた。
無理にミナトの事を詮索するのは辞めた方が良いんじゃないかって。
言わないって事は言いたくないって事だ、それか言えないか。
多分言わない理由は両方あると思う、偶にぎこちなくなったりするけど優しい人だから。
僕は追いつきたい。
優しくて強いあの人に。
知りたい事は沢山ある、本当に。
でもそれは今聞く事じゃない。
まずはちゃんと隣に立てるようになりたい。
僕は特別頭が良い訳じゃない、だから同じ位強くなれば何か分かるかもしれないと思った。
同じ位…いや、追い越せる位強くなればミナトも僕に気を使う必要はない。
いつか頼ってもらえる位に強くなる。
今はそれだけでいい。
それだけで、いい。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「よし、休憩終わり!再開するぞー」
(気になる事はあるけど、俺がどう思われてるかなんて些細な問題だ。
大事なのはアイクが強くなろうとしてることと、俺もそう思ってるって事)
正直あまり時間に余裕も無いので、休憩は長くない。
まだ休みたいと言えばそうだが、それよりも強くなりたいと思う気持ちが勝りアイクも立ち上がる。
「つーかそこそこ馴染んできたんじゃないか?それ」
そう言うミナトの目線はあちらの手元に向けられていた。
聖魔祭では持っていなかった、アイクの新武器。
「お陰様でね。まだ慣れないけど確かにいい感触だよ、双剣」
これまで使用していたのは通常よりも少し短い剣であったが、ミナトからの提案で最近使用を試みている双剣。
その時のミナトの怒涛の勢いに押されてアイクも即決。
「魔力で重量をカバーするのがやっぱり一番慣れないかな」
「まだ授業じゃやってない事だしな。だがこれを覚えられたらお前の手数は格段に増える。
今は慣れないかもしれないが、後から確実に成果は付いてくる。焦らなくていい」
魔力を使って武器の重量を軽減する技術。
これを使う事で小柄なアイクでも速度を落とさず手数だけを増やす事が出来る。
(手数を増やす為に双剣を使う奴は多いが、大体は思っていたよりも武器が重かった、とかで対して手数が増えなかった奴は多い。
幾ら小さいとは言え金属の塊だ、それを片手で振り回すとなればいつもと違う感覚も相まって早々上手くは扱えない)
素質はあったのに早々に断念してしまった者も多く、双剣は上手く使いこなせないと弱い武器としてあまり人気は無い。
だが極めればポテンシャルは高い、そしてそのポテンシャルを見込まれている少年が今ここに!
武器好きという事もあり、双剣の使用を提案をした時のミナトの勢いたるや。
過去一の早さで言葉を発していき、端から見れば早口言葉か大規模魔法の高速呪文詠唱にでも聞こえただろう。
「…アイク」
「?」
「俺は今までひたすら受けに徹してきた」
突然ミナトが語り始める。
なんとも神妙な様子にアイクも息を吞む。
「攻撃が最大の防御だと思ってたからだ。それに俺は長所を伸ばした方が良いと思ってるしな」
勿論例外はある。
例えばフレアなんかは長所は回避であるが、その時もミナトは受けに徹した。
理由はシンプルに避けているだけでは勝てないから。
しかしアイクの場合、逃げる事はその素早さを活かせば何とかなる。
だから攻撃を重視していたわけだが…。
「でもこの前の聖魔祭を見てもう一度考え直した」
「…どういう風に?」
「思ったんだ、攻めるだけじゃなくて守る側も鍛えないと剣術は上手くならない」
言っている事は当たり前であるが、真剣な様子から何故か凄そうなことを言っている風に聞こえた。
「だからこれからは俺が攻めるターンを作ろうと思う」
「??」
この時点でアイクは嫌な予感がしていた。
「今伸ばす部分は双剣の扱いだ。なら攻撃よりも防御の方が扱いが上手くなるんじゃないか?」
{まぁそりゃ攻撃は自分のタイミングだけど、防御は相手に合わせないとだし…あ}
「だから今から俺がひたすら打ち込んでいくから、ちゃんと防ぐんだぞ」
「!!!」
なんとも無邪気な笑顔でそう告げているが、とっても恐ろしい!!
アイクもさっきまではミナトの事を尊敬の念を抱いていたはずなのに、今は恐怖を抱いている始末。
「大丈夫、特訓の為に木刀を買って来たんだ。これなら保健室に行けば直ぐに全快だ」
さあ行くぞ、と構えるミナトを見て覚悟を決めるアイク。
{えぇいやるしかない!}
「お願いします!」
「良い返事だ!そら!」
その後暫く、アイクはひたすら打ち込まれ続けた。
今回はアイクの双剣についてだよ!
ミナトの激押しもあり使うことにした後、まずどうやって手に入れようかと考え始めました。
自分で提案したのでちゃんと責任は持つと言い、ちゃんと腕のいい鍛冶師を紹介してそこから双剣を入手。
因みに料金はタダでした。
何でも店主のおやっさんはミナトに貸しがあるとか…。
アイクは少しでも払おうとしましたが「将来冒険者になったら良い素材を持ってきて俺に打たせてくれ」との事で出世払いとなりました。
今回は以上!




