第四十四話 寮生活、、開始!
「え!?どうしたのミナト、何でここに?」
「ん?あぁ言ってなかったっけ。今日から暫くここに住むことになったんだよ」
「「...」」
「えぇーーーー!!」
ここは第四魔法学園の学生寮、通称「リベルタ寮」
遠方から通いに来る生徒が多い魔法学園にとって、寮は言わば第二の校舎。
よって本校舎と同じ位整備が施されており、生徒からの評判も良い。
そんな寮に今日から暮らすことになったミナトは、一先ず持ってきた荷物を部屋に置きに向かう。
「いやービックリしたよ。何でここに居るんだろって思ったらまさかね」
荷ほどきを手伝うと言って同行しているアイク。
「幾ら何でも驚きすぎだ、周りの連中もビックリしてただろ」
「いやー確かにそれは申し訳ないけど、、でも言ってくれなかったミナトにも責任あるんじゃない?」
「うっ…まぁそれもそうか」
今朝ミナトに寮暮らしが命じられたが、それは今日の内からであった。
普段から荷物をあまり持たないタイプなので移動は簡単であったが、問題は寮に行かされた理由の方。
全く身に覚えのない殺人事件の容疑者にされると言う悲劇。
疑いが晴れるまでは家には戻れないし、外出すら自由には出来ない。
このままでは学園に来た理由である呪いの解呪が上手く進まない可能性も。
それに濡れ衣なんて着たくないので、ミナトの直近の目標は真犯人を捕まえる事。
あの取り調べのようなものが終わってから、校内にある記事などから事件を調べていたらなんやかんやで寮に移る事を話しそびれ…。
先程のアイクのリアクションという訳だ。
「…ま、いいけどさ。あ!ここさっき言ってた部屋じゃない?」
「おーここここ。案内助かった」
「別に難しい道じゃなかったけどね。じゃあ荷解きしよっか、明日も普通に学校あるし!」
「悪いな色々、また今度お礼させてくれ」
「いいよそんなの、寧ろこれがこっちからのお礼みたいなもんだから」
「?」
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それから二人で作業を終わらせると、既に夕食の時間が始まっている事に気付いたので食堂に向かう。
「あ、そう言えばあんま気にしてなかったけど、ここって飯とかどうなってんの?」
「ご飯はねー、受け取れる時間みたいなのが決まってて、その時間内だったらいつでも食べて良いっていうルールだよ。だからそこまで時間気にしなくても大丈夫かな」
「へぇー…学校のやつとあんま変わんない感じか。夜は自分で作ってたからなんか新鮮かも」
「そう言えば一人暮らしだって言ってたっけ。…失礼な事言うけどミナトって料理できるの?」
「人並程度にはまぁ…?」
自身は無いのね、などと二人で話していると食堂の方から出てきたトロールと鉢合う。
「!トロール君やっほー」
「おぉアイク、お前はこれからか…ってミナト?なんでここに…」
最初に出てきた感想はやはり、何でここに居るの?というものだった。
「あー…ちょっと色々あって暫くここに居ることになってさ…」
(流石に殺人事件の容疑者になったから寮暮らしを命じられたとか言えねぇ!)
「色々って、、」
本当の理由は言えないのではぐらかそうとするも、途中から寮に移る生徒というのは極めて稀である。
なのでのらりくらりで躱していけるような状況ではない。
「…まぁいい。これから飯だろ?食ってこい」
「う、うん!行こっか」
なんとも微妙な空気だったが、トロールがそれを終わらせて去っていき、また二人に戻る。
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その後食堂に着いて夕食を貰い、並んで席に着き。なんてことない雑談を交わしながらご飯を食べる。
「前一人暮らししてるって言ってたじゃん」
「確かにそんな事も言ったな、、それで?」
「あのー、、答えたくなかったら全然いいんだけど」
話の流れが徐々に変わり始め、アイクは少し申し訳なさそうにしつつも質問をする。
「何で一人暮らししてるの?」
「え?」
「え?」
恐る恐る聞いてくるので一体何かと身構えていたミナトは、その質問に拍子抜けして言葉が上手く出ず。
その様子にやはりマズい事を聞いたかとアイクが焦り始める。
「ごめん!やっぱ嫌だった…?」
「そんな事ないそんな事ない!何かもっと重大な事でも聞いてるのかと思ったからビックリして…」
(ビックリした…もしかして俺の事情にでも気が付いたのかと)
しかしアイクがここまで慎重に聞くのも無理はない。
独り立ちにしては早すぎるし、遠方から子供を通わせる為に王都に家を用意するほどの金持ちの子供でもない。
ただの平民が一人暮らしをしている理由なんてものは、大抵ろくな場合じゃないからだ。
「うーんとね、、これ言っていいのかな…」
「もし言いたくないんだったらいいんだけど、、言ってくれるならどんな話でも聞くよ?」
なら大丈夫か、と思いミナトは理由を話す。
「まぁシンプルだよ、家族がもう居ないから。一緒に暮らす人がいないだけ」
あ!追い出されたとか家族だと思ってないとかじゃないよ?
と素で発言するミナトに、アイクは言葉が出なかった。
(やっぱ話すべきじゃなかったかな。今もこういう話が無い訳じゃないけど、昔に比べたら大分数も減ったし。何より飯食ってる最中に言う話じゃなかったかな)
そのアイクの様子を見て謝ろうとしたが、先に口を開いたのはミナトではなかった
「ねぇ…」
表情、声色。
たった一言の言葉だけで、普段と違う様子が見て取れた。
「ミナトはさ、なんでこの学校に来たの?」
「!」
それは話の流れだけを見れば急な質問だったかもしれない。
だがこれは、少しずつ積もっていった思いが今になって流れ出しただけである。
「前この話になった時、結局聞けなかったから」
学校でフレアとも一緒に居た時、そういう話になった事を言われて思い出す。
ただ、あの時とは違って単なる好奇心で聞いているのではないと。
そう感じたミナトは、適当にはぐらかしてはいけない時だと思い、真っすぐこちらに向けてくる目を見て言葉を返す。
「…俺には、ずっと超えられなかった壁がある」
少しずつ、言葉を出していく。
本当の事は言えない、だが嘘もつけない。
だからこそ、少しずつ丁寧に。偽りのない言葉と感情で話す。
「何度挑んでも超えられなくて、そんな時にここの存在を知った。ここでならその壁だって乗り越えられると思ったから。
だから俺は、、この学校に来た」
これが今できる最大限。
最大限アイクに向き合って、出した答え。
「…そっか」
としか言葉を返すことは無かったが、どこかスッキリしたような…腑に落ちたような顔をしていた。
この顔がミナトには強く印象に残った。
それがまるでかつての仲間の顔の様に見えたから。
今回は一人暮らし云々についてだよ!
アイクがあそこまで躊躇って聞いた理由ですが、まぁ何かしら辛い思いをしてここまで来ているかもと思ったからです。
作中でも触れた通りこの年の一人暮らしは大体天涯孤独の子供たちなのでね。
勿論アイクもそんな答えが返ってくることは覚悟していましたが、ミナトがあまりにもケロッと言っているのに驚いていたんですね。
そしてミナトの発言についてもですが、当時は魔王軍全盛の時代だったので家族が殺された人なんて大量に居ました。
今も冒険職の父が帰ってこない、みたいな家庭もありますが、当時に比べればその数が比じゃありません。
だからミナトも割と軽い感じて言いました、因みに家族は父・母・妹、全員魔族に殺されています。なので寿命でとっくの昔に、とかではありません。
今回は以上!




