番外編 こういうの後からじわじわ来るよな
章が終わったら番外編書くの恒例にしようかな…
「じゃあ僕達先行ってるからー」
「おう、後でな」
聖魔祭七日目。
全日程が終了し、次の日には学校へ戻る。
閉会式も終わって、もうじきこの宿で食べる最後の夕食の時間。
同部屋のアイク達には後から行く、と言い一人部屋に残るミナト。
「ふーー」
一人になった部屋で、自身が貰った表彰盾を眺める。
(やっぱマズかったかな…)
あれから…二日目の個人戦が終了してから、ミナトはある事について悩んでいた。
それは、本当に俺出てよかったのかな、というもの。
(だって学生の大会だぞ?俺は超年上な訳で…確かに呪いの影響で年は取ってないどころか、ちょっと何歳か若くなった位だけども!
呪い受けた時でも二十歳超えてたのに…そんな奴が、しかも全員参加の団体戦はともかく個人は出ないって選択肢もあったのに!)
誰もいない部屋で悶々と悩み続ける。
実は聖魔祭があると知った時からミナトは出場するかどうかは悩んでいた。
ミケーレに優勝を目指してほしい、と言われた時。
確かに押し倒す!などと考えてはいたがそれは出場すれば、の話で。
あの話が無ければ選抜選手が確定する前日辺りにでも辞退しようと考えていた。
(だってさ、先生があんなこと言ったから出た訳で?それに呪いでこーんなに弱くなった俺に勝てない方にも問題があるのでは!?)
少々暴論である。
しかし呪いの影響で弱くなったのは事実であり、純粋な力という点にのみ絞ればミナトは今回の個人戦出場者の中では最弱クラスである。
(そうだよ!世の中には俺より強い奴なんて人間でも魔物でもいる訳で…それはそれで悔しいけど。
でもさ、俺くらいは超えて貰わないと!負けたくはないけども!この位のハードルは乗り越えて欲しいな!)
徐々に開き直りつつあるミナトだったが、いったん冷静になろうと深呼吸をする。
こんな風に苦悩してもしなくても、もうこの結果が覆ることは無いし、実は呪いであーだこーだと言っても何も変わらない。
(…まぁクロムとかアイクとかと戦いたかった、ってのはやっぱあるよな。正直)
と一度冷静になってきたタイミングで、誰かがドアをノックする。
「入っていいかー?」
(!先生)
「どうぞ」
急いでベッドから飛び起き、椅子を用意する。
ミケーレがドアを開け部屋の中に入ってくると同時に、一度部屋の中を見渡してから椅子に座る。
「いきなり来て悪かったな」
「別にそれはいいんですけど、どうかしたんですか?
!もしかして魔族についてまた何かあったとか!?」
「おぉおぉ落ち着け、それはまだ無い。だがその事に関しても話しておきたいと考えていたがな」
熱くなったミナトを鎮めてから、話を始める。
「まず、魔族発見に関しては本当にありがとう。
大会運営の代表として、礼を言いたい」
椅子を立って頭を下げたミケーレを、今度は逆にミナトが止める。
「そんなそんな、先に俺が気付けただけで。どの道誰かが見つけてたんですよ」
その言葉に少し呆れた様な顔をしてから、もう一度椅子に座りなおす。
「はぁ…君はその自分を下げるような言い方は辞めた方が良い」
「下げるなんてまさか。自分の事を正しく認識できているんですよ」
「…そうは言うが、今日表彰されている時に浮かない顔をしていなかったじゃないか」
(そんな顔してたの?俺)
「自分ではそんな風な顔をした覚えは無いんですけどね…それがさっきの話と何の関係が?」
「それはあるさ。あの顔からして、どーせ決勝戦の内容に不満でもあったんだろ?」
その発現に図星を突かれたらしいミナトは、一瞬固まる。
「…私はまだ君と数ヶ月しか過ごしていないが、仮にも教師だ。
多少は分かってるもんだよ」
いかにも教師らしい発言と雰囲気に、何だかかっこいいと思ってしまったミナト。
「君はあの試合に不満があったのかもしれないが、私は素晴らしい試合だと思ったよ」
「…不満と言っても別に誰かにその感情を抱いてる訳じゃなくて…」
(あれは俺の…)
またも浮かれない表情のミナトに、ミケーレは再び口を開く。
「決勝戦だけじゃない、君の試合はどれも素晴らしかった」
「!何ですか突然、また何か俺に頼み事ですか?」
突然の褒めに、思わずまた何か言われるのではないかと警戒する。
「違う違うそうじゃない。私は優勝してほしい…と言うよりは全ての試合に全力を尽くしてほしい、と言ったな。意味は覚えているか?」
「えぇまぁ。皆の乗り越えるための壁になって欲しい、って言ってましたよね」
「そうだ。そして見事にその役割をこなしてくれた、事実君の試合を見た皆はいい影響を受けている様に私には見えた」
「!」
「先の魔族の件といい、君には本当に感謝している。ありがとう」
今度は座りながらではあるが、頭を下げる。
ミナトは一度何か言いかけるも、その言葉は違うと思ったのかそれを呑み込んで。
一呼吸おいてから言葉を返す。
「顔を上げてください」
そう言うミナトの顔は、先程までと違って…穏やかに見える表情をしていた。
「もしもそれが事実だったら、、良かったです」
思いもよらぬ顔をしていたため、暫く驚いて言葉が出なかったミケーレだったが、二つ三つほど間が開いてから口を開ける。
「…今日はそれだけだ。魔族の件も依頼の事もほんとうにありがとう」
席を立ち部屋から出ようとしながらそう告げる。
ドアを開けいよいよ廊下に出そうになった時に、思い出したかのように振り返って一言。
「そういえばまだ言ってなかったな。優勝おめでとう」
「!あぁ、お陰様で」
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その後暫くしてから食堂に向かうミナト。
(確かにルールとか考えたら本来俺が出るなんてマジで駄目なことだけど…)
「あ!ミナトこっち、席空けてるよー」
手を上げこっちだと呼ぶアイク、同じテーブルにてこちらを待っている様に見てくるトロールとフラジオ。
ここ数日で急に仲が良くなりだしたルチアとフレア。
そこには多くのクラスメイト達の姿が見えた。
(ま、皆の為になったなら出ても良かったかな)
「…直ぐ行くよー」
この時のミナトの顔は、ここに居る皆と同じ様な…ただの学生に見えた。
今回はミナトの力についてだよ!
純粋な力だけなら個人戦出場者の中で最弱クラス、と言いましたがこれはマジです。
もし腕相撲なんてしたらあまり力が強くないフレアにも負けます。
一年生で腕相撲大会なんてしたら結構低い順位に居るレベル(ちな一位はクロム)。
なのでここまで弱くなった俺、というミナトの発言は割とネタにならない話でもあります。
今回は以上!




