第四十一話 始まりが終われば、物語は厚くなる
「それでは、これより表彰に移りたいと思います」
聖魔祭七日目。
七日目と言っても今日はこの表彰式と閉会式のみであり、競技は既に六日目に終了している。
「一年生の部団体戦優勝、第一魔法学園」
そう呼ばれれば代表者が一人前に出る。代表は当然だがベル。
「~以下の者たちの~」
(こういうのって何でこんなに長いんだろ)
表彰の言葉やら何やらを言っているが、ミナトはあまり聞いておらず。
それどころか二、三年生の試合もあまり集中して見ていなかった様子で。
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決勝戦が終わり、怪我の治療も終わった所でミナトはクラスの所へ合流しようとする。
この後は宿に戻るだけだが、一応は団体行動が必要なのだとか。
皆の所へ戻る最中、ミナトは一度足を止める。
この時考えていたのはさっきの試合、クロムとの対決。
周囲に人が居ない場所で、無言のまま壁に拳を叩きつけた。
怒りや悔しみといった感情が顔からも漏れ出ていて、叩きつけた後も拳を強く握ったままだった。
(あれは相打ちだ!確かに先にバリアを割ったのは俺だったかもな……でもあんなものを勝利とは呼びたくない)
試合の勝敗を分けたのは、どちらがのバリアが先に割れていたか。
審判の判定では先に割れていたのはクロム、と言うもの。
ルール上は勝利であったし、審判の判定に文句がある訳ではない。
(これは試合だ、分かってる。でもこれが実戦だったら…相打ちは勝利じゃない。負けでしかない)
これまでの人生で経験してきた人との別れ。救えた命、救えなかった命。
勿論これが試合であるという事は理解している、だが、負ければ死ぬ。
そんな事は無いと分かっているのに、こべりついて離れない。
突然頭に浮かんで来た思考、感情を鎮めることが出来ず。
「クソ…」
そう小さく呟いて、暫くそこから動けずにいた。
ミナトの心は、まだあの時から動けずにいるのかもしれない。
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その後個人戦優勝者として表彰されたが、ミナトにとっては正直どうでもよいものだった。
あれから時間が経ち、もう気持ちの整理はついているが見過ごせない問題はまだまだ残っていて。
一つは会場に忍び込んできていた魔族。
決勝戦が終わった後ミケーレに報告したものの、だからもう役目終了、とはならず。
今後警戒が必須な事件であった。
二つ目は呪いに関して。
結局手掛かりは特に見つからなかったが、ミナトは一つ仮説…というか可能性を見出した。
それは、黄玉眼はもしかしたら直感で分かるかもしれない、というもの。
きっかけはベルを見た時に、アレウスの姿を思い出したこと。
あれから随分と長い時が経っているので正直容姿はあまり似ていないが、直感的に血が繋がっているのでは?と分かったことと、更には戦っている姿なんかはそっくりに見えた事。
そして実はミナトは過去に黄玉眼を、と言うよりはその持ち主と出会ったことがあった。
その時はまだ呪いなんて掛かっていなかった頃だったから、眼がどうとかは興味がなかった。
しかし、後にその眼がここまで重要な存在だと知る事に。
その持ち主が既に亡くなっていたので、ここまで手こずっている訳だが。
まぁ兎に角、かつての仲間の事が分かったなら魔眼だって分かるかもしれない、という訳だそう。
しかし言い方から分かる通り、全て根拠は無い。
ミナトは勿論これを結論として勘頼りで探ってくつもりはない。
ただ希望はあるかも、と思っただけだ。
(魔族が徒党を組んでるなら厄介なことになる、しかも数が分からないってのもマズいな)
結局どこかの偉い人の話なんて殆ど聞いていなかったが、話がいよいよ終わろうとしていると気付く。
「~でありまして、これにて第三百九十三回聖魔法剣術祭を終了致します」
三百九十三回、という言葉に驚きつつも懐かしく思うミナト。
(もうそんな前か。ここまで続いてるのも凄いもんだなー、昔はこんな大々的にやるようなイベントじゃなかったのにさ。
アレウス、お前の作った学校は今でも残ってるよ)
四百年以上前に魔王が討たれた日。その日を、あの時を忘れぬよう今でも記念日には世界中では祝いの祭りと、魔王軍との戦いで亡くなった多くの人々への祈りが行われ続けている。
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閉会式も終わったので、一応一年で固まってから宿に戻ろうとしていた時。
「あ、ミナトー!」
「ん?どうしたー…ってマジかよ」
少し遅れて会場を出てきたミナトが目にしたのは、第一魔法学園の面々。
「何か挨拶に来てくれたよ、ほら。ミナトも行かなきゃ」
「おぉ、行くって。行くからちょい落ち着け」
状況を見てみれば、主に話していたのはやはりベルだった。
「来年はリベンジしてみせるから待っててね、クロム君」
「…ああ」
丁度クロムと話しているところだったが、ミナトの存在に気付けば即座にこちらにも話を振ってきた。
「ミナト君も!今度は戦おうね」
うーんと、一度言葉を詰まらせてから答える。
「そうだな、機会があれば」
何とも曖昧な返答に少し笑いつつも、もう行かなきゃと言って場から去ろうとする。
「でも、また遠くない内に会えると思うよ」
「?」
それじゃあ、と言って今度は本当に歩き始めた。
第一の全員が着いていく中、一人だけこちらに振り返って会釈をしてから去って行った。
会釈をした方向には、そうしてきた人物と対戦経験のあるフレアがおり、少し困惑していたが会釈を返す。
(ゼノか。あいつも真面目な奴か?いや、本当に真面目なら俺にもするはずか。自分なりの礼儀か何かがあるのかな)
彼らを見送った後、宿に戻っていった第四魔法学園の生徒達だったが。
それを見つめる一人の男が…。
「あれが第四魔法学園…近くで見ると猶更、、、イイ!!」
その男は一人でにそう呟いてから、どこかへ歩いて行った。
丁度そのころ、とある新聞が出回っていた。
「号外号外!連続殺人事件、新たな被害者が出たよー!」
最近国内を騒がせている連続殺人事件、また被害者が出たのだと。
犯人は未だ、捕まっていない。
今回はちょっとした雑談的なやつだよ!
これにて聖魔祭編はひとまず終わりとなります。
感想を言うと、思ったよりも長くなった。
キャラクターの心理描写とかを意識すると、本当に書きたい事が山ほどありすぎて、話のテンポとのバランスを取るのが難しかったですね。後は、更新ペースが落ちてたりしたのが、長く感じた要因の一つかも。
勿論ですが、聖魔祭編が終わっただけで物語自体はまだまだ続きます。
この大会で今の生徒の皆の大体の実力とキャラクター性みたいなのが分かったと思います。
ここから実力面、精神面でも皆の成長が始まっていきます。なので物語的にはここからが面白くなっていくと思っていて、今回のタイトル通りここで始まりが終わります。
全体を見ればまだまだ二割か三割位しか話は進んでないのでね。
これからも忘却の勇者をよろしくお願いします!
今回は以上!




