第四十話 決着
決勝戦が始まる直前の出来事。
「いよいよだね…」
「そうだな、、俺は出れなかった分余計長く感じた」
いよいよ始まる決勝戦を前にアイク、トロールはこの試合がどうなるかについて語りだす。
「実際どっちが勝つと思う?」
「…ミナトが負けるイメージはこれまで持ってこなかったけど、クロム君が負けるイメージも湧かないかなぁ」
「まぁ実際今の俺達じゃ勝てない相手だしな、そこの実力差なんて分からんものか」
勝敗の予想なんてつかない、と結論が出だしたところで議論にもう一人加わる。
「それはどうかな!」
癖の強い話し方に、見なくとも誰だか分かる二人。
「僕はミナト君が優勢だと思っているよ」
アクセントに癖があるというか、身振り手振りが激しいから余計にそう感じるのか。
とにかく一組の中でも癖強枠として定着しているフラジオ。
「そお?何でそう思ったの?」
「理由は二つ、前にも言った戦闘技術。もう一つは、、僕の勘さ!!」
一瞬の無音が生まれるも、言っている事は二人とも何となく分かったらしい。
「…まぁどっちにしても楽しみな試合ではあるよね……ってもう始まりそう」
アイクが話し出したタイミングで、実況による選手紹介が始まる。
『試合開始です!!!』
その開始の合図と同時にミナトが攻撃を仕掛けに行く。
「今回はあいつ随分積極的だな」
「いつもは様子見から、って感じだしね」
{当たり前だけど相当本気だな……でも何だか楽しそう}
試合を見ていたアイクは、ミナトのいつもとは少し違う様子に気が付く。
普段は守りから入る事が多いのにも関わらず序盤からの攻勢。
勿論真剣に真剣に戦っているが、どこかそれを楽しんでいる様な顔。
{いつもの授業でも剣術の時はテンション高めだし、それにクロム君は今までの相手よりもずっと強いしね。…でも}
「やっぱり……」
そう小さく呟いていた。
試合は一度互いが距離を取ったタイミングで、状況が落ち着いていたからかトロールはその小さな呟きに気が付いていた。
アイクのその表情と、強く握らた拳を見れば何となく何を思っているのか分かったようで。
一瞬何か言葉を掛けようとも思ったが、結局そのままにしておく事にした。
{俺だけじゃなくて、お前もこれからだな}
練り上げてきた魔力を、次の一撃に全て乗せる。
(ふー…ちょっとテンション上がりすぎてたかも。気持ちを高ぶらせるのはいい、ただ制御する必要があるだけだ)
技の準備だけでなく、心を落ち着かせる。
集中。
たったそれだけ。
だが、観客席に居たアイクは何かを感じ取る。
「何…だろう」
隣に居た二人も、少しだがいつもと違う何かに気付き始める。
{様子が変?…というか、、、不思議な感じがする…}
その事を一番強く感じているのは当然目の前にしているクロムであるが。
様子の変わったミナトを前にしても、動じず気を見計らう。
そう出来ているはずだった。
ミナトが構えてから初めて、顔を上げ相手に目を向ける。
「…!」
{これは…}
その目を見たクロムが一瞬、固まる。
集中、と言うにはあまりにも入り込みすぎている瞳だった。
その固まった一瞬をミナトは見逃さず、距離を詰める。
クロムも遅れてだが踏み込み、二人が間合いに入る。
『ここで両選手動きました!長かった膠着状態が崩れます!』
勝負は一瞬。
互いに自身の最高威力の技を放とうとしており、一撃で勝負は決まる。
先に剣を振ったのはクロムだった。
炎を纏った剣はとんでもない速度で振り下ろされ、辺りを吹き飛ばそうとでもしているかの様な威力。
ミナトはまだ刀を抜いておらず。
左手を鞘に、右手は柄を握っており。構えを解いていなかった。
ほんの一瞬反応が遅れれば避けられない攻撃を、ミナトは躱してみせた。
剣が振り下ろされる直前の僅かな腕の動きを見て、左に体を寄せ必殺の一撃を躱す。
そして「ここだ!」とばかりに刀を抜きクロムに振るう。
長年の鍛錬によって染みついたその抜刀速度は、クロムに躱す隙を与えなかった。
しかしこのまま終わる様な男でもなく、何と振り下ろした剣を強引に軌道を変えミナトに攻撃を仕掛ける。
本来そんな芸当出来るはずも無いが、クロム元来の怪力、そして火事場の馬鹿力とでも言うものが、軌道を変えてみせた。
両者ここから相手の攻撃を躱す余裕などなく、相手よりも先にバリアを破壊する。
この事に賭け腕を振りぬいた。
直後とんでもない爆発が起き、二人は土煙の中に姿を消す。
『二人がぶつかりましたがしかし!!状況が分かりません!またもや土煙によって見えません!明らかに両者攻撃が当たったように見えましたが結果はいかに!?審判の判定を待ちましょう!!』
先程の試合同様、衝撃によって生まれた煙で状況が分からない。
直ぐに審判が駆け寄っているが結果はまだ分からず、会場はざわついていた。
「どっちだったと思う?」
「僕には分からなかったよ…ここからで分かる人なんて本当に居ないんじゃない?」
流石のルチアも今回は気になっているようだが、その隣に居た彼女も結果は分からずにいた。
{どっちだろう…ほぼ同時に見えたけど、、もうちょっと近くで見られてたら…}
二人が衝突してから実際には一分ほどしか経っていないだろうが、この時間がとても長く感じた。
期待、焦り、不安。こんな言葉では言い表せない感情がこみ上げてくるのだ。
今か今かと審判の判断を待ちわびていると、土煙の中から審判が姿を現す。
そして手振りで何かを実況に伝える。
大勢の観客たちはその意味を知らなかったが、長年聖魔祭を見続けている様な人達にはその意味が分かったようで。
一部の観客たちは周囲よりも先に結果を知る事となった。
『あ!あれは……ミナト選手!ミナト選手の勝利だと告げています!!聖魔祭一年生の部優勝は、第四魔法学園のミナト選手です!!!!』
実況の言葉により、会場は今日一番の歓声に包まれた。
ある者は興奮のあまりか叫び、ある者は泣いていた。
歓声と拍手が送られる中で、実況は言葉を続けた。
『今日のこの日、本っ当に驚かされてばかりでした。常にハイレベルな戦いが繰り広げられ、属性混合が飛び出す場面もありました。
そして歴史をも動かす事になったあの試合、ルチア選手対ベル選手の試合では史上二人目となる三属性混合魔法が!!今回はこの試合の名前を挙げましたが、本当に数々の名試合が生まれました。
そして最後の決勝戦も、この異例ともいえる盛り上がりを見せた今年の聖魔祭に相応しいものとなりました。
試合時間自体は非常に短くはあったのですが、その中には高度な駆け引きと、ハイレベルな技術が飛び交っていた事位は、私にも分かりました。
皆さま今日この日戦った全ての選手達に、今一度大きな拍手をお願い致します!』
異例の盛り上がりを見せた聖魔祭二日目。
一年生の部個人戦、優勝者ミナト。
今回はちょっと告知?みたいなやつだよ!
聖魔祭編は次回で最後となります(番外編は覗いて)
この章の感想とかは次回書かせてもらいます
長く感じたかもしれませんが、もう少しお付き合いお願いします
今回は以上




