第三十二話 だいたいは今日この日から始まる
アフィスを発動して更に速度を上げたベル。
その魔法の効果からか、彼の体の一部が光を纏っている様にも見える。
現在ルチアのドラウプニルを避けれているが、今も試合が続いているのは彼の迅速な判断があってのものだった。
(もしアフィスを使わなかったらベルは二発目に被弾して負けていたはずだ。
だがあいつは使った、即座に使う判断を下した。
ルチアの攻撃は本来なら避けられない位置にあった、だがアフィスを使って速度が跳ね上がったせいで避けられた。少しずつ照準を合わせに行ってるようだが少しずつでは駄目だ!相手はもう試合を決めるつもりでいる)
エレディータ家に伝わる雷属性魔法、アフィス。
効果は短時間だが自身の身体能力を大幅に向上させることが出来る。
かつてミナトと旅をしていたアレウスが開発した魔法であり、それは現代まで伝わっている。
{あんま時間は掛けられないし、一気に行くか!}
『先程よりも速度が明らかに上がっているように見えるベル選手が、再び距離を縮めて行く!
我々が度肝を抜かされたあの三属性混合魔法を搔い潜りながら迫って行きます!!』
「ちぃ!」
{今すぐ狙いを定め直せ!じゃないと負ける!}
即座に相手の動きに合わせ魔法を放っていくが、これも躱される。
{この一瞬で狙いがまた合ってきてる、やっぱり凄い人だ、君は。
もう一回やれば勝てないかもしれないけど、、勝負ってそういうもんだよね}
細かく地面を踏み右へ左へ跳ね、適格に魔法を躱す。
アイクなどとはまた少し違った距離の縮め方。
(そもそもアフィスは、急激に身体能力を向上させる事で相手の意表を突く魔法だ。
再び相手がこちらに合わせてくる前に一気に仕留めきる。そしてそれが出来るからあいつはこの魔法を使っている…つまり)
{こいつ、止まらな…!}
そしてそのまま距離を縮めたベルがバリアを破壊し、試合終了。
『し、試合終了、、試合終了です!勝者ベル選手、準決勝進出です!』
激動の試合の終わりに会場は大きく盛り上がった。
史上二人目となる三属性混合魔法、そしてそれを乗り越え勝利した勇者の子孫。
間違いなくこれまでのどの試合よりも観客たちが熱狂した試合だった。
「…まさか負けるなんてな。勝負ってやつは分かんねーもんだ」
「同感」
目の前で繰り広げられた激闘に感想を述べる二人だったが、そこにあの人物も加わってきた。
「ビックリしたよねー、色々」
中々席に戻ってこなかったアイクがようやく姿を現す。
「!遅かったな」
「あっはは、心配かけちゃったかな…」
「…」
笑ってトロールに言葉を返すが、まだ引きずっている事は顔を見れば明らかだった。
「それよりさ、あれ!ルチアさんの魔法!結局どういうやつだったんだろうね」
「まぁ確かに出てきて直ぐ試合終わっちまったしな」
「ミナトは何か分かった?」
話は先程出てきた三属性混合魔法に移る。
「うーんそうだな…細かい事は分かんなかったけど、、多分属性は風と火、それと雷だったと思うよ。
効果は、、、いまいち分かんなかったかな。でもあれ当たったら一発アウト系の魔法ではあると思う」
「へーー、、流石だね。僕全然分かんなかったよ」
「俺も全く同じ意見だ」
「そんなに気になるんだったら本人に聞いてみたら?」
「う!…まぁでもそれが一番手っ取り早いかぁ……ちょっとだけ考えとこうかな」
(あんまり聞きたくはないのか?まぁ俺も自分から聞くことはないかもだけどさ)
~教員席~
「先生は分かりましたか?さっきの魔法」
試合を見ていたミケーレは、ともに観戦していたウォーデンに聞く。
「そうだな…恐らくだが、仕組みはこうだ。
風の特性を使って速度を上げ、後に起こる炎の爆発の威力も強化。そしてその爆発時に雷属性も起動。
爆発に掠りさえすれば火傷・痺れを引き起こす、辺りだと考えている」
「…相変わらず凄まじいですね、先生は」
「ははは、お前には言われたくないな」
{でも本当に凄いお人だ。私は殆ど分からなかった}
効果は殆ど分かっておらず、試合にも負けた。
しかしこの試合でルチアが残したものは本当に大きなものであり、歴史を変えた一戦であったのは間違いない。
後に稀代の大魔法使いとして世界中に名を轟かせることになる彼女、その伝説の最初の一幕はこの試合である。
今日はアフィスについてだよ!
と言っても今回作中で触れた通りでしかないのですが、まぁ一応。
効果は雷を身に纏う事で身体能力を強化させる事、後はその雷を剣に流して属性攻撃を仕掛けることも出来ます(今回はしていませんでした)
この魔法の欠点はその効果時間の短さであり、本人の努力次第で持続時間を延ばすことは出来ますが、そこまでしてこの魔法を使おうとする人物は近代では珍しいみたいです。
実際ベルもアフィスをメインで使いだすと、家の人物たちがかなり驚いた様子をしていた、という事がしばらく噂になった程に。
今回は以上!




