第二十六話 試合は始まる前が重要
ミナト対ゼノの試合が始まった瞬間、観客たちはそれに気が付いた。
『そう言えばミナト選手、今回何やら見慣れない武器を持ち込んでいるようですね』
{もう使うんだね…ここで}
独特な形状の武器に様々な考察が入り乱れる。
「形的に剣の類だと思うけど…アイクなんか知らね?」
「あれは刀って言うんだって。僕も使ってるところは見たことないけど、一番の得意武器だって言ってたね」
聞いたことのない名前が出てきて困惑している生徒が殆どであったが、一部の生徒は知っている様であり。対戦相手のゼノも動揺している様子では無かった。
{刀、と言うとヤマト族に代々伝わる武器らしいですが、実物を見るのは初めてですね。
ミナト氏は先程の試合で使っていませんでしたが、これは期待したいところです}
{ふーんあれが…。彼にはやはり何か感じるものがある。存分に戦ってくれよ、ゼノ}
サヴェリオ、ベルは共に刀を知っていたが実物を見るのは初めての様子。
『ふむふむ成程…?今は言ってきた情報によると、あれは刀というヤマト族に伝わる伝統な武器の様です!』
{刀だなんだはどうでもいい。ただ全力で潰す、それだけだ}
ゼノは両手を地面につけ魔法を発動させる。
前回の試合よりも強力な石の連弾。
一つ一つの石のサイズが明らかに大きくなっており、それを見たミナトも出し惜しみはしないとばかりに刀を抜き、その刀身を見せる。
向かってくる石を幾つか躱し、それ以外は切り刻む。
{魔力で固くなっている石を軽々切る、か。ならこれは切れるか?}
そして先程の試合同様地面から岩を隆起させる魔法を使う、だが今回は石の連弾も同時に発動。
正面と地面からの同時攻撃がミナトを襲う。
「…」
地面からの攻撃を避けつつ、正面から飛んでくる石を切り刻む。
(流石に厄介だな。地面からの攻撃で位置を誘導、そして丁度嫌な所に石が飛んでくる。
単体だとさほど脅威ではないが同時となるとキツイな。でも…)
『下方向と正面からの同時攻撃!見てるだけで苦しくなるほどの攻撃密度ですが、ミナト選手これを躱すか切るかで全ていなしていく!』
時には地面から生えてくる岩を切って道を開きつつ、相手の攻撃をいなす。
(うん、良い切れ味だ。頼んでよかった)
先程から平然と岩を切っているこの刀は、ミナトが要望を叶える為に職人と共作したものである。
ミナトの要望は比較的重量を軽くすることと、良く切れること。
この条件を満たして作られたものがこの刀であり、耐久性は低いがその分得た軽さと切れ味。
突き攻撃には向かなく、横方向からの衝撃にはめっぽう弱い。
扱うには相当の技量が必要であるが、ミナトにとってはそれほど難しい事ではなかった。
(魔力でカバーすればこの程度は問題なく切れる。こいつがあれば…!)
先程まで受けに徹していたミナトだったが、ここで攻めに転じる。
敵の攻撃を捌きつつ距離を詰めていく。
『ミナト選手ここで前進!襲い来る岩達を切り伏せながら距離を縮めていく!』
「っ!」
瞬間ミナトは昨日にも感じた気配を察知。
(何だ!?観客席に何か紛れてんのか?)
「よそ見とは随分余裕だな、ミナトさんよ!」
「っと、どこが。直ぐ行くから待ってろ」
(本当だよ、よそ見してる暇なんてねぇぞ。一旦あれは後回しだ)
感じた気配については後に処理することにし、試合に集中し直し少しずつだがゼノに接近していく。
{化け物めが、この攻撃密度で前進だと?こうなったら…}
接近して来るミナトを迎え撃つ為にゼノは地面に強く魔力を込める。
(!あれを撃つ気だな、だが攻撃も止んだ今なら阻止できる!)
そう思い一気に距離を詰めに行くミナトだったが、ここで相手が罠を仕掛けていたことに気付く。
足元には人に反応して発動する術式が組まれており、これを避けるために一瞬時間が生まれる。
(条件発動型!避けることは出来るがそうすれば間に合わない!)
しかし避けなければバリアが割れるので回避せざるを得ず。
一瞬出来た時間によって、ゼノの魔法が発動する。
(やばっ!…)
ゼノより前方のフィールド全てを範囲とした土属性魔法。
その広大な範囲と、高さ約十メートル程の、幾つもの棘が集まって出来た岩山が形成される。
『あーっと出た!前回の試合でフレア選手を倒した超巨大魔法!ミナト選手は果たして無事なのか!?』
「ミナト君…」
治療が終わり試合を見ていたフレア、きっと大丈夫だと信じていながらも、不安が拭いきれない様子。
『さぁミナト選手は……居ました!恐らくバリアも割れていない様子です!何とこれを避けてみせましたー!!!』
{ちぃ!棘達を足場にして躱しやがったな!?どんな反応速度してんだよ!}
出現した岩達を次々に足場にして飛び移っていくことで何とか攻撃を回避する事に成功していた。
(今のは危なかった…一度見てたから何とか一瞬早く反応できた。はーーー危なかったマジで)
ゼノの広範囲魔法を何とか躱しきったミナトは、そのまま棘達を足場に前進を再開。
「クソが!」
接近に気付きゼノも剣を抜き対抗しようとするも、気付いた時には既にミナトは背後に回っており。
そのままバリアを破壊。
『し、、試合終了、勝者ミナト選手です!!ゼノ選手の猛攻を全て躱しきり勝利を掴みました!』
(今回は本当に危なかったな……刀ちゃんと持ってきてて良かった。
…見てるかな、フレアさん。一応敵は取ってきたよ)
途中ピンチに陥りつつも、ミナト二回戦突破。
今回はこの世界の刀についてだよ!
作中で触れた通りヤマト族に伝わる伝統武器であり、知名度は低めです。
使っている人がヤマト族だけなのに、そのヤマト族は数が少ない上に固まって暮らしてたりするので知名度が低いのも当然と言えるでしょう。
これは本編では書きませんでしたが、実はクラスメイトの中ではトロールも刀の存在は知っていました。
理由はサヴェリオの様に博識だからとかではありません、単純に武器の見た目が好きであり、そこから刀の存在を知りました。
この様に博識だから知っている人、トロールの様に武器マニアだったりで知っている人、ベルのように知り合いにヤマト族がいたりする人は刀を知っている、という事なんですね。
今回は以上!




