第一話 また 始まる
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少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
勇者 意味:勇気にあふれる人、勇気ある行いをした人。
勇者の定義と言うものは、人によって異なる。
命を懸け人々を救おうとした者、人々の為に人生を捧げた者、もしくは神に力を与えられた者。
だが、勇者というものは結局のところ名称でしかない。
人々が彼らを勇者と呼ぶだけなのだ。
この世界では魔王を倒し世界を救った五人の者達を人々は勇者だと称えた。
しかし後世に語り継がれていったのは四人の勇者だけだった。
この物語は、忘れ去られてしまった彼と、その彼と共に同じ学び舎に通う彼らの物語である。
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「お客さん方、見えてきましたよ」
馬車の御者が声を掛ける。
そう言われ外をちらりと見ると、王都ディーノスが見えた。
「ママー、鳥さぁん」
彼が乗っている馬車に乗っていた少女が空を指さし口にする。
その母親が子供が指さした方向を見ると同時に異変に気付く。
何となく空を眺めていた御者が少女の言っていたものを見つけると同時に、顔が青ざめる。
「あの!魔物が!こっちに!」
母親は焦って言葉が詰まりながらも御者に魔物の存在を伝えた。
(なんだと!?真っ直ぐにこちらに向かってきている、マズい!)
事態にに気付いた御者が馬車の速度を速める。
「お客さん!しっかり捕まっててくれ!」
そう言い馬車も速度を上げる。
御者が彼の方を見ると、ここに乗ってから剣を抱えたままピクリとも動かなかった彼が馬車から降りようとしていた。
「ちょっとお客さん!?しっかり捕まってなきゃ危ないですよ」
そう言われると御者の方を振り返り、
「大丈夫ですから、安心してください」とだけ言って彼は馬車の屋根の上に移動した。
(あれは…スカイバザードの亜種か。
素早さはあるが硬さはない典型的な鳥類モンスターだな)
屋根に上り、剣に手を伸ばし構える。
魔物と馬車の衝突を防いでの撃退、それが可能な一瞬を見極めていた。
(早ければ上手く仕留めきれず激突する、遅ければ言わずもがなだ)
そして魔物が彼の間合いに入った直後、
魔物は切り裂かれれその肉体が馬車に直撃することは無かった。
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「いやー先程は本当にありがとうございました。
申し訳ございません、護衛依頼もしていないのに守っていただいて」
王都につき、御者は彼にお礼を伝えていた。
「いえいえ、それより皆さんが無事もなくて良かったです」
「そうですね、もしもお客さんに何かあられてはいけませんから。
魔除けはしっかりと行っていたのですが、どうやら効果が切れてしまったみたいで。
次回からはちゃんと余裕を持って準備しておきます」
「ええ、そうしてください。何かあってからでは遅いので。
それじゃあここまでありがとうございました」
「あ、あの!」
その場を去ろうとすると、一緒に乗っていた親子が話しかけてきた。
「本当にありがとうございました、どうお礼を言ったらいいのか…」
「、、気にしないで下さい、ただ当然の事をしただけですので」
「お兄ちゃんすごかった!もしかして冒険者さんなの?」
少女の問いかけに母親も同じく疑問、という様な反応だった。
「お客さんひょっとして魔法学園の生徒さんですか?」
「確かに、冒険者さんにしては少しお若いかなと思ったら…」
そう問われた彼は少しだけ間をおいてから、
「今からなるところです」
と小さく笑いながら言い、その場を後にした。
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「ふー、新居獲得ーー」
家に到着し、ベッドに横たわって休んでいた。
(入試試験まであと三日か、、よし)
ベッドから起き上がり、出掛ける準備をする。
「取り敢えず飯買いに行くか。町の探索はまた明日で」
そう言って食材を買いに出掛けた。
しかし彼は忘れていない。胸にしっかりと閉まっているものを。
魔法学園に入ろうとする理由。
自身にかけられた≪呪い≫を解くこと。
その為に今、第四魔法学園に入ろうとしている事。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに!