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忘却の勇者  作者: くろむ
後生一生編
138/175

第百三十四話 全部

第一魔法学園での滞在期間は二週間程。

その間ここから離れる事になるミナトには、向こうは行くまでにやっておかなければならない事が山程あった。


(よし、先生との打ち合わせ終了。次はあそこか……)


最早彼にとっては授業が終わってからが本番。


先ず向かったのは担任であるミケーレの所。

自身が留守の間の授業の進め方等の相談、打ち合わせ。そして向こうでの緊急時の対応など。

それはもう生徒と教師が交わす内容ではないが、彼含めて二人で教えているようなもので細かい事はいいだろう。


留学へ向かわない生徒達へのアドバイスの仕方や課題点をどう克服させるかなど。

本格的に始まりつつあるクラスメイト育成計画を着々と進めていっていた。






「済まん、待たせたな」


今度はこれまた日課である放課後特訓へ。


「寧ろいいタイミングだったぞ…」


「今トレーニングメニュー終わったもんね、、、さぁでもこっからが本番」


自身が来るまでにやっておくよう伝えていた、スタミナやフィジカルを強化する為のトレーニングをこなしていた二人。

既に肩で息をしているがアイクも言っていた通り本番はこれから。

トロールもその言葉の意味を流石に理解しており、今から始まる地獄の特訓への覚悟を胸に秘めていた。


「うし、やるぞ!」


_______________________________________


一時間程の鬼指導を終えると、例の如くトロールは先に寮へ帰り。

その後は二人で森羅自天流の修業を開始する。


「じゃあ俺はここまでだな、お先」


「うん!お疲れー!」


「前に言ったけど、これも第一に行くまでだ。それからは騎士団の方に顔出すんだろ?今のうちに体力作っておくんだぞ」


「ああ。お陰様で体力だけは着いて行ける自信が着いたからな……でも本当に何から何まで助かった、ありがとな。

また明日学校で」


以前言っていた騎士団への推薦の話は無事通り。

留学から帰って来たタイミングで先ずは体験として、放課後団員達の訓練に参加する事に。


だから今はそれまでの間に出来る限りの基礎固めと体力作りを行っているのだが。

彼の特訓をこなしている今なら向こうでも後れを取る事はないだろうとトロール自身も確信。

ミナトも充分な成長の手応えを感じており、これなら問題ないだろうと安心していた。


「さ、じゃあ昨日の続きからだから……意識を外に向ける瞑想な」


「来たね。もうずっと進めてないから今日こそは……!」


合宿以降毎日のように取り組んでいるこの瞑想も中々上手くはいかず。

それでも根気強くチャレンジし続けるアイク。


_______________________________________


更に二人だけの特訓を終え。

陽も落ちて辺りが大分暗くなり始めた頃ようやく帰宅……ではない。


ここから向かうは刑務所。


何故に突然そんな所へ?と思うかもしれないが、彼にはとある約束がある。


「よお、今日も来てやったぞ」


「おやおやこれは。二週間ぶりですかね」


「忙しい中来てやってんだ。今日も色々情報貰ってくぞ」


互いが求める情報を交換し合う、という約束で定期的にこの人物に会いに来ていたのだ。


(確かにこいつはイカれ野郎だが……頭には価値がある。使えるもんはなんでも使ってやる)


散々な言われようでも仕方ない。

クラスを丸ごと誘拐した犯人に対しての言い草としては優しい部類だろう。


トロフィム、彼の持つ専門性の高い知識は役に立つ時が残念ながら来てしまう。

だから嫌々とは言え彼もここに足を運ばざるを得ない。


「あ、今度第一行くから主力連中は皆空けてるけど。先生居るから変なこと考えても無駄だからな」


留学の事を知っている相手に一応警告を出しているが、当然意味はない。


「もう心外ですね……彼らには金輪際手を出さないと誓ってはずなのですが」


「信用出来てたまるか」


「まぁしょうがないですね。そちらが情報をくれる限りはこちらも知り得る事はお教えしすよ」


「……」


「?どうかなさいましたか」


突然黙ってしまった彼に首をかしげながら聞く。


普段なら、なんか仕草もキモい。とか思っても不思議じゃないが今回ばかりは真顔。


「お前…」


「はい」


「……やっぱりいいや、考えるのも嫌になって来たし」


「えぇーちょっと気になるじゃないですか。教えてくださいよぉ」


(やっぱキメぇ……さっさと出よ)


何か考え付いたようだが、言葉にもせずそれ以上頭の中で考える事もしなかった。


考える事自体が屈辱的で可能な限り、というより絶対に避けたい未来だったからだが……。

内容は後々分かるからいいとして先程言っていた通り彼は今忙しい。


それ故かトロフィムが嫌いなだけかさっさと話を終わらせたミナトが次に向かった先は。


_______________________________________


最近よく行く機会が増えた例の酒場だった。


「ーだから、本当にいざと言う時は先生とかあの……ラビリス?って人とか騎士団とかに伝えてもいいから。

秘匿性よりも命の安全が優先だ、細かい指揮とかはお前に任せとくから。居ない間頼むぞ」


「かしこまりました」


ここでの話も、自分が王都に居ない間の作戦会議だ。


(先生は俺の名前出せば多分信用してくれるけど、団長さんは立場上簡単には動けないだろうし。

あのラビリスって人は結構自由人でここに居ない時多いみたいだからな。

もうちょっとだけ手打っとくか?いやでもこれ以上となると他のリスクが生まれる可能性も……)


もし不在期間中に魔族からの侵攻があった場合の対応確認。


こちらの諜報員のみでの対処が厳しい場合は騎士団等の国の組織への通報も視野に入れ。

いざと言う時は、最終兵器的な扱いとなりつつあるミケーレに頼る手筈。


独自の情報網があると以前に伝えていたので、最悪自身の名前を出せば信じて貰えるだろうと考える。


本当は伏せておきたい事だがさっきも言っていた通り命の安全が最優先。

犠牲が出る位なら自分達の秘匿性など捨て置け。という信念。





長期間の不在によるリスクや、成長計画の遅れ等はあったとしても。

彼は留学へ行かないという選択肢は取らなかった。

それはミケーレから頼まれた件以外にも理由はある。


それは前々から気にはしていたベルの事。

やはりいざ見てしまうとどうしても気にしてしまうそうで、最初は意識しないようしていたらしい。


だが学園祭でフレアに、自身の感情をもっと優先するよう言われてしまった以上。

意識しないようにするのも彼女の意思に背く事になるし、それ以上に皆と新たな場所に行ってみたいという願望もあった。

後は……かつての友が作った場所にまだ行った事がなかったから。


まぁ理由はともあれ行くことに変わりはない。


その後裏でも表でも準備を進めていれば、時はあっという間にやって来た。

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