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忘却の勇者  作者: くろむ
後生一生編
129/175

第百二十五話 兄とか妹とか

この学園祭は二日間に分けて行われ、それぞれ趣が少し違う。


初日は生徒やその親族。一部関係者といった人物達のみ入場する事が可能な日。

二日目の主な来場者はそれ以外の一般市民。


なので基本的に生徒達は初日の内に店などを周り、二日目は出店の手伝いをしながら祭りの雰囲気を楽しむ。というのが通例らしい。

一般公開になればかなり人も集まるらしいのでそうせざるを得ない。の方が正しい表現かもしれないが。


そしてまだ人が少ない今日ならではのイベントも各地で発生する……。


(ありゃ、、、トロールか?なんか騒がしいし行ってみるか)


トラブルとまでは言わなくとも、小さな不安も残しておきたくない今は念の為の確認を。


「なんかあったのかと思いきやこれはまぁ……」


近付いてみると騒がしいと思ったのも納得の光景が広がっていた。


「おにいちゃん久しぶりー!」


「一緒に遊ぼー!」


歳はそこそこ離れているであろう妹らしき二人が足にしがみ付いている。


「分かったから一旦落ち着け……ってミナトか、悪いな気が付かなくて」


あまりに元気でわんぱくな二人に押されて対応に困っていた時、声を掛けられて初めて彼に気が付いた。


「いやまぁそれはいいんだけど、、双子か?随分元気だな」


「あぁ、ほんと…手が焼けるって言うか!」


そう言いながら二人を肩まで抱え上げる。

幾ら小さい子供とは言え流石の筋力だ。


「ほらお兄ちゃんの友達だ、挨拶は?」


担がれた事に喜んでいたところ促されたので素直に従う。


「私マリー!」


「私リリー!」


「よしよし、二人共挨拶出来て偉いぞ。

ところで母さん達はどうした。一緒に来てるはずだろ?」


「んー…分かんなーい!」


「分かんないってお前ら……しょうがないから一緒に探すか」


この一連の流れを見て思う事は一つだろう。


(す、、すっげぇお兄ちゃんしてやがる…!)


確かに普段から面倒見の良い方だったがいざ目の前で見せつけられると分かる。

圧倒的なお兄ちゃん力の強さが。


「悪いなミナト、俺は母さんに二人を送り届けなきゃ……って。今度はアイクか」


そう言って移動を始めようとしたところまたしても知り合いと遭遇。


「わー懐かれてるねー、、、すごいや」


「元気が有り余ってるのは困るけどな…」


この光景を見たアイクもミナトと同じ様な反応。


「お兄ちゃんの友達のアイクだよ、よろしくね」




その後は持ち前のコミュ力で直ぐに妹たちと仲良くなり、微笑ましい会話を繰り広げていると彼女らの母親が来て双子たちを引き取って行った。



またねー、と二人を見送った後肩の荷が下りた様に息を吐くトロール。


「元気な子達だったねー」


「あぁ、末っ子は逆に大人しくてな……この前帰ってた時は大変だったよ」


何か思い出したのか疲れ気味にも見えたが、あくまで楽しそうに語っていた。


「……」


その様子を何とも言えない表情で見ていたミナトに気が付いたアイクは。

少し考えてから声を掛けようとしたらまたしても……。


「あ、みんな!おーい!」


「……」


こちらを見つけ元気よく手を振ってくるフレアとは対照的に、あまり祭りには似つかわしくない表情で隣を歩いているルチアが合流。


「こんな所で何してたの?」


「さっきトロール君の妹さん達が居てね、丁度見送ってたんだよ」


「へぇ!それはちょっと見て見たかったかも…」


「すっごい疲れるぞ」


「あっはは、元気な子達なんだね」


話しはそのままそれぞれの家族の事に移って行った。


「そう言えば皆も誰かしら来てるのか?」


「家はお母さんとお父さんどっちも来る、って手紙では聞いてたかな。こっちは兄弟いないから二人だけだと思う」


「そうか、確かアイクも一人っ子だったよな」


「…!うんそうだよ」


一瞬遅れて反応する。

その様子を見て、ただボーっとしていただけだと普通なら思うところだが彼女だけは心当たりがあった。


{もしかしてアイク君……}


微妙な返しをしてしまった為空気を戻そうとし、話を繋げる。


「あぁ確か、オーズ君は弟がいるってそう言えば聞いた事あったな…」


「ん?らしいな。フラジオも姉がいるらしいし結構皆兄弟いるのか」


「フ、フラジオ君のお姉さんはちょっと……性格イメージ出来ないかも」


{このままだったら順番が周ってくるのは避けられないし、、何か他の話題で繋ぐしか…}


既にミナトの家の事情を聞いているフレアは、このまま兄弟の話が周っていくのを避けたいと思っていた。


妹が亡くなっただなんてこの流れで言うのは酷過ぎる話であるし、あまり思い出せたくない話だ。

なんとかしようと頭を必死に捻らせ導いた答えは……。


「でも、、私的にはルチアさんにお兄さんがいる事が一番ビックリだったかな……」


{ごめんルチアちゃん!}


ヘイトを逸らす為には強力なデコイが必要となる。


彼の事を思ってとは言えいきなり皆に話してしまった事を心の中で謝罪。


「「お、お兄さん!?」」


しかしその効果は絶大。

先程まであまり浮かれた顔ではなかったアイクも、普段クールに振る舞っているトロールも飛びつくように反応を見せている。


「え?いやまぁ…いるけど……」


唐突な暴露からの問い詰めコンボにたじろぐルチアに質問は止まらない。


「歳は幾つ離れてるんだ?」


「ふ、二つだよ二つ」


「やっぱりお兄さんも凄い魔法使いだったりするの?」


「いや兄貴はそっちじゃなくて……って、ちょっと待てお前ら!」


だが直ぐに平静を取り戻し一度二人を落ち着かせる。


「なんだ私に兄貴がいる事がそんなに意外か?」

「意外だね」


「なっ…!」


思わぬ即答にまたしてもビックリ。


「正直一人っ子だと決めつけてたぞ……済まなかったな」


「別に謝らなくていいんだよ」


今のところ会話は問題なく進んでいるが流石に話を投げておきながら完全放置は駄目だと思い、そろそろフォローに入るフレア。


「お兄さんは確か国魔で研究してるんだよね」


またしても出てきた言葉に驚きを隠せないが、納得は直ぐに出来た。


「国魔って確か……この魔法学園系列に次ぐ施設があるって言われてるあの?」


「最近の研究の成長率なんかを考えれば、実力は向こうの方が上だって意見も上がってきている。

間違いなく世界最高峰の研究機関だ」


ここで久しぶりに会話に入って来たミナト。


国魔、とは正式名称を国際魔法研究学園と呼び。

学園と言う名目ではあるが校内には世界トップクラスの魔法研究者達が集っており、生徒達はそこの時期研究者候補。のような立場である。

違いは、魔法学園で言うところの研究科のみで構成されている点と、飛び級で入学してくる生徒の数が多い事。


「確かにそりゃルチアの兄貴だ……」


そんな場所に居るのなんて選ばれた才を持つ者のみであるが。

彼女の兄ならば納得するのは簡単であろう。


「実践のルチアさんと、理論のお兄さんなんだね」


「わ、私だって魔法理論は自信あるんだけど…!?」


と強気に言ってみたものの、視界に彼がチラつく。


「ちっ」


(俺だな絶対)


明らかに目が合ってから舌打ちをしてきていた。


少なくとも理論だけに焦点を当てれば確かに彼の方が知識量は上回っている。

それが分かっているから毎度衝突(?)が起こる訳で…。

実際原因はそれだけではないのだが、ミナトがそれに自力で気付くのは難しそうだ。


「おや?ルーちゃんじゃないか、探したよ…」


「!」


そんなこんなで話をしていれば、あるおばあさんが声を掛けてくる。

声を聞いた瞬間、ば!っと一瞬で振り返り返事をするルチア。


「ばあちゃん!なんで一人で居るのさ、お袋たちと一緒だって言ってただろ?」


{{こ、今度はお婆ちゃん来た…!}}


次々とルチアに何かしらが起こり続けているこの学園祭も、まだ始まったばかり。


さっきからかなりカロリー消費の多い会話を続けている彼女に今度は祖母がやって来た。

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