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忘却の勇者  作者: くろむ
後生一生編
120/175

第百十六話 知らない事は知りたい事

委員会が決まってから数日後。

ミナトに初の仕事が周って来た。


仕事と言っても、風紀委員が主にやる事は校内の見回り。

普通に学校生活を送っているだけでも、身に付けている腕章があるだけで効果がある。

風紀委員はどこにでも居るぞ。というのをアピールする事が大事らしい。


じゃあ特にする事はないのかと言えばそれもノーだ。

人物によっては必要ない時以外教室から出ない者や、図書室に籠る者。自主練習に励む生徒も居る。

もし全員がそうなってしまえばトラブルの対処が遅れてしまう可能性があるので、一応見回りの当番を決めてあるのだ。


(んで、最初だから一応説明役兼補助の先輩と同行か)


誰しも初めてやる事はよく分からないのは当然の事。

最初は先輩が一人ずつ着き、どういうルートで歩いて行くのが良いだとか。もし対処すべき事態になったらどう動くのか。とかを説明する時間だ。


「まぁと言っても、ミナト君は既に僕より強いだろうし、あんまり頼りにならないかもしれないけどねー」


「謙遜なさらず。勝手がわからず困ってしまうのではと不安だったので、この制度は助かります」


「そんな事言っちゃってー、変に気とか使わなくていいからねー?僕こんな感じで威厳とかないしさー」


ゆっくりとした喋り方と緩そうな雰囲気のある先輩だが、そんな彼でもれっきとした実力者である。


(実際この制度は助かる。

こんなふわふわした感じなのに実力は本物だ。仮に戦闘が見れずとも立ち振る舞いだけで実力もある程度推し量れるしな……)


今年の聖魔祭では準々決勝敗退という結果だが、敗れた相手は優勝した人物で。トーナメント次第では更に上を目指す事も出来た程の実力者。

委員会があった日から、少しだけだが先輩たちの事を調べたミナトが得た情報だ。


(午前の授業でも偶然窓からグラウンドが見えてこの人も見たが……遠目でも分かる実力はあった。

別格のクロムはまだしも、今のアイクじゃ十回やって一回勝てるかどうかレベルではある)


少しだけ動きを見た事と、実際近くで姿を見た事でそう評価し。

先輩としてはもうかなり認めている。


(委員会も思ったより楽しめそうで良かったな、少なくとも退屈ではないかも)


________________________________________


一方その頃食堂。


「ミナトは?」


「風紀委員の見回り中のはずだから、、どこにいるかまでは分かんないな」


「あいつも大変そうだな」


アイク、オーズ、トロールの三人で昼食を取っていた。

普段はここにミナトもいるが今日は見回りの為不在。


「なら丁度いいや、ちょっと話したい事があったんだよ」


話を切り出したのはさっきも不在を確認していたオーズ。


「ぶっちゃけさ……どう思う?あいつの事」


ここでアイクはドキっ!とせざるを得ない。

個人の自由ではあるが、あまり探られるのも出来れば阻止したいからだ。


「あいつって、ミナトの事?なんで突然」


「いやまぁそれ以外にもルチアさんとかさ、俺気付いちゃったんだよこの学年の違和感に」


「学年の違和感?どういう事だ」


一先ず話題が違うと知り胸をなでおろす。


「それはズバリ……この学年スペシャリスト多すぎじゃね問題!だ」


高らかに言った割にキョトンとした様子の二人を見て、説明に入る。


「んな顔してるけどお前もだぞ?アイク」


「ぼ、僕?」


「そうだよ、お前の速さは結構分かりやすい部類だと思うんだよ。なぁトロール」


「確かに言いたい事は分かる。実際俺も同じ事を考えていた時期があるからな」


「でもさ、スペシャリストで言ったらオーズ君もでしょ?音波魔法なんてオンリーワンその物、ってイメージだけど」


「俺の場合はそれ以外に才能が無かったから音波魔法(これ)に行き着いただけだよ。普通はトロールみたいに色々探りながら見つけていくもんだろ?自分の武器ってのは」


アイクは足の速さを活かすなら確かに後衛よりも近接武器を持った方が良いのは分かるが、そもそもの根幹はスピード。

それを活かすために剣、という道を選んだだけだ。

というのがオーズの主張らしい。


「俺は明確な長所がないから皆が羨ましく見える、お前だって言われる側の人間だぞ」


「でもそっちは成績も色々優秀じゃんか。そつなくこなせるのも羨ましく見えるもんだぞ?

じゃなくて、この話の行き着く先は二人なんだよ二人」


「二人?それがミナトって事?」


「そう、でもう一人がルチアさん!」


「まぁ確かにルチアさんは魔法のスペシャリストだけど……なんでこの二人が行き着く先なの?」


アイクの疑問は当然だろう。

確かに着眼点は鋭いが、何故ミナトとルチアの二人がこの流れで取り上げられるのかは疑問が多く残る。


「考えてもみろ?ルチアさんは今世界で唯一三属性混合魔法が扱える人で、ミナトもミナトで学生の域を超えてる強さだ。

強さだけで言えばクロムとかもそうだけどミナトは剣だけ、ってのが凄ぇんだよ。特別な速さも力もないのに。だぜ?」


なんでも出来るクロムは置いておいたとしても、確かに二人の専門性の高さはこの学年の中でも際立つ。


「なんで剣を極めたのか。だってあそこまで器用なら剣以外にも使えそうだし道はあったと思うんだよ」


「あー前にそう言えば……色々武器を試した時もあったけど、結局どれも上手くいかなくて普通のに帰って来た。って言ってたような……」


アイクが思い出しながらそう呟くと、ばっとオーズが全力で振り返ってくる。


「ど、どうしたの……?」


振り返る勢いがあまりに強すぎた為困惑中。


「でさぁ、極めた理由を聞こうにもよ?ルチアさんに聞くのは流石に危険がある。身体的な意味で。

ミナトは多分求めてた答えが返ってこないか、なんやかんやですり抜けて話題を切り替えてくる可能性がある。

つまり本人たちに聞くのは難しいの」


「ちょっとあの、、、本当に……」


「んでミナトの事を一番詳しいのはさ……お前なんだよアイク!さぁ沢山吐いて貰おうじゃないか!」


襲い掛かろうとされる直前、トロールに救いの眼を向けたが。


「悪いな、俺もあいつには興味がある。多少は話してもらいたい」


「ーーーー!」


声にもならない悲鳴が響き、休み時間が終わる直前。

偶々食堂近くを通りかかったミナトが見たのは、いつもの特訓後よりも疲れ切った様子でぐったりしていたアイクの姿だった……。

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