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この世界には魔女だけじゃなく、魔男もいる。それは別にいいんだけど、魔男は全員間違いなく変態である。

作者: 巫月雪風
掲載日:2023/02/12

この世界には、【魔男】と言われる存在がいる。

彼らはほとんど誰にも知られていない存在だ。

……だが、彼らは確かに存在する。

知られていないのは、魔女と違って、魔男は全員間違いなく変態だからだ。


彼女、クレア・ラスティリアはそんな変態を探す魔女だ。

彼女は今日も魔男という名の変態を探している。

 皆様は、【魔女】と言われる存在をご存じでしょうか?

 この質問に対し、知らないと答える人は極わずかでしょう。

 では、魔女の反対、【魔男】は?

 彼らはほとんど誰にも知られていない存在だ。

 ……だが、彼らは確かに存在する。

 しかし、魔女と違い、彼らの知名度は皆無である。


 なぜか?


 なぜなら、魔女と違って、魔男は全員間違いなく変態だからだ。

 そして、魔女は魔男と同類にされたくないから、魔男の存在を必死に隠している。




「えーっと、今日の魔男は犬塚陽介と言う奴ね」


 手元にある写真付き資料を見ながら、クレア・ラスティリアは呟いた。


 彼女は十六歳の女子高生兼魔女だ。

 銀髪碧眼のロングヘアといういかにも魔女な外見を持っている。

 彼女は先祖代々続く名門一族の魔女、ではなくて普通の人間の両親を持つ、なり立ての下っ端魔女だ。

 そんな彼女の仕事は魔男という変態を取り締まる事だ。

 まぁ、下っ端だからみんなが嫌がる仕事しかやらせてもらえない、とも言える。


 彼女は犬塚を探して、箒にのって街をパトロールしていた。


「あ、見つけた!」


 ターゲットはわりかしすぐに見つかった。

 だが、その姿は人間ではなく、犬だった。


 普通の人間は、その犬の正体が人間だという事は気付かない。

 だが、魔力探知のモノクルを付けている彼女には、分かるのだ。

 このモノクルに魔力を通せば、魔女や魔男を見分ける事が出来る。

 ちなみに、モノクルの値段は十万円。

 魔道具の値段としては妥当だが、彼女のような下っ端魔女にはつらい金額だ。

 だから、魔女の仕事の中でも皆がやりたがらない仕事をして、少しでも金を稼がないといけない。


「さてと、あいつはどんな変態かな?」


 犬に変身しているという事は、女性に拾われて部屋に侵入し、好き放題する奴である可能性が高い。

 女性と一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝るのはまだ可愛い方だ。

 下着を咥えてハフハフしたり、匂いをクンクン嗅ぐ等々。

 そんな魔男は多い。


 だけど……


「あいつ、女性に拾われないようにしている?」


 むしろ、拾おうとする女性がいると、逃げるようにその場を去っている。

 あれでは拾われないだろう。


「何が目的なんだろう?」


 しばし空から監視していると……

「げ!」


 犬塚という男、と言うか犬はどこかの飼い犬が傍に来ると、その犬の尻の匂いを嗅ぎだした。


 犬が他の犬の尻の匂いを嗅ぐのは一種の挨拶らしいが、魔男はそんな事をする必要が無い。

 つまり、あの魔男は自らの意思で他の犬の尻の匂いを嗅いでいるのだ。




「あなた、一体何をしているんですか!」


 魔男が人気のない場所で人間の姿に戻ると、クレアは彼の元へ向かい、怒鳴った。


「あ、あなた何なんですか!」

「私は魔女。あなたのような人に迷惑をかける変態を取り締まるのが仕事です!」

「俺は人に迷惑をかけてない!俺が好きなのは雄犬の尻の匂いだけだ!」

「は?」


 クレアは思わず声を上げてしまった。


「俺は雄犬の尻の匂いが大好きなんだ!人に迷惑なんかかけてない!」

「うーん」

「そうだ!俺は変態かもしれないが、変態と言う名の犬好きだ!こう見えても捨て犬を救うボランティアだってしているんだぞ!!」


 困った。

 嘘を言っている様に見えない。


 この犬塚という魔男が人に迷惑をかけているのなら即逮捕だが、彼の場合は微妙だ。

 迷惑と言えば迷惑だが、犬の尻(しかも雄限定)を嗅いでいるだけだし……。


「まぁいっか。微妙な場合でも強制送還って決まってるし。強制送還決定!!」

「な、なんだよ。その強制送還って!」

「問答無用!」


 クレアが箒を犬塚に向けると、瞬時に魔法陣が彼を中心として出来上がった。

 そして……彼は姿を消した。


 彼は魔男専用の牢屋に送られたのだ。

 そして、この後は裁判にかけられる。

 どのようは判決が下るかは、クレアには分からない。

 それを判断するのは専属の機関に所属する魔女で、彼女にはそれに関与する権限は無いからだ。

 まぁ、調べれば簡単にわかるが、特に興味もないし。


「あー。今日も気持ち悪かった」


 変態……いや、魔男を取り締まるのが魔女である彼女の仕事。

 仕事上、彼女は救いようもないど変態を何人も見ているのだが……。

 正直、慣れないし精神的に疲れる。

 それもかなり。


 魔男はゴキブリと一緒で、一匹ならぬ一人いれば三十人はいる。

 そんなだから、彼女の変態と言う名の魔男の探索は、明日も続くのだ。


 ……明日で終わるといいけどね。





 ―今日の魔男―

 <犬塚陽介>


 得意魔法:変身魔法、特に犬への変身を得意とする。

 変態志向:雄犬の尻の匂いを嗅ぐ。なお、雌はお断りだが犬種は問わない、との事。

 判決:雄犬の尻の匂いを嗅ぐと下痢する永続魔法をかけ、釈放。


 その後、とある街ではしょっちゅう下痢をする犬が現れたらしい。

お楽しみいただけましたでしょうか?


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