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 マトンのおかげで財政面や領地経営に関して大分楽ができるようになってきた。

 今では自分の時間もしっかり取れるようになり、今まで狭まっていた視界が大きく広がったような感じがする。

 あっぷあっぷしていた状態から脱せたおかげで、今まで気にかける余裕のなかったところに目が向くようになる。


「それじゃあ一緒に行こうか」


「はい」


「もちろんだ!」


 樹木守護獣が守護している樹を選択することで、今では僕以外の人を樹木間転移させることもできるようになっている。

 おかげでギネアでも、一人で過ごさなければいけないこともなくなり、以前より気軽に行き来することができるようになっている。


 僕はアイラとナージャと一緒に、ギネア村へと転移するのだった――。



 ギネア村は神鼠ホイールさんの力を使うことで、ツリー村とはまったく違った形の発展を遂げている。


 ツリー村はシムルグさんがとしたことでオアシスが生まれ、草木が芽吹き、結界のおかげで気温なんかも調整されるようになり、通常より早いスピードで作物が育つようになった。


 ではギネア村ではどうなっているのかというと……。


「おぉ……少しみないうちにずいぶんと大きくなってるな……」


 ナージャが見つめるにあるのは、聖域ができた当初は小山だった鉱山だ。

 今では近場からだと、見上げなければ頂上が見えないほどの高さにまで成長(この表現が正しいのかはわからないけど)している。


 ギネア村は、村の中心部に鉄鉱山があるような形になっている。


 山はツリー村の世界樹ばりにすごいスピードで大きくなっており、そのてっぺんには世界樹があり、ギネア村の人々の生活を見守るように立っている。


 既に採掘も始まっているらしく、中に入っていく人達の姿が見える。

 ホイールさんの話では、鉄以外にも色々な金属が採れるようになるって話だ。


 もちろん鉱山だけではない。

 このギネア村の方がツリー村より土壌の栄養素がいいようで、作物の生長は早い。

 またその関係か、ツリー村では育ちにくいジャガイモのような根菜類なんかも育ってくれている。


 ただ野菜や穀物の成長と引き換えなのか、フルーツが育つスピードはこちらの方がゆっくりになっていた。

 どの樹も大体一日に一つほどに落ち着いている。別にこれでも、普通の果樹と比べたら全然早いんだけどさ。


 ツリー村とギネア村の収穫高を合わせれば、余所に売りに行っても余るくらいの食料生産高は確保できる。少なくとも人口増に伴う食糧不足問題は、よほどのことがない限りは起こらないと思う。


「道ができていますね。これは……コンクリートですか?」


 聖域を弄る力は自分の方がシムルグより上だと豪語していたホイールさんの言葉は誇張でもなんでもなかった。

 ギネア村の中の主要な道は、ホイールさんによって舗装がなされている。

 ゆくゆくはこれを、ツリー村と繋げることができたらなんて話もしている。

 もしどちらかが占拠された場合軍事利用される可能性があるから、少なくともまだまだ先の話ではあるんだけどさ。


「ただなんというか……男臭いな」


「まあホイールさん自体、結構熱血って感じだからねぇ……」


 ツリー村は世界樹の光に包まれたいかにも幻想的な村だけど、ギネア村は見た目は地味だ。 おまけに鉄鉱山がある関係上どうしても鉄臭い匂いがするし、鉱山労働者なんかも多いのでそこに汗の匂いが交じったすごい香りになっている。


 最近ギネアでは娼館なんかもできているらしく、その男っぽさは留まるところを知らない。

 ちなみにホイールさん自身が陣頭に立って、鉄鉱石の発掘なんかをしたりもしているんだって。

 おかげでホイールさんは愛されマスコット兼頼れる兄貴として親しまれているとかいないとか……。


「っと、今回の目的を果たさなくちゃね」


 僕たちがギネア村にやってきたのは、ギネア村に暮らす素養持ちの村人達の処遇についてだ。


 現在ギネア村の防衛は、僕が生み出したウッドゴーレムによって成り立っている。

 そのためギネア村の戦闘系素養持ちの人達は、他の人達と変わらぬ仕事内容をこなしてもらっている。

 他の素養持ちの人達の中にも、ツリー村の方が力を発揮できそうという人もいる。


 僕の力で簡単に行き来が可能になったおかげで、彼らにツリー村への移住という選択肢を与えることができるようになった。

 王国に近いツリー村に彼らを置くと問題が起こる可能性はあるけれど、それを言ったら何もできなくなっちゃうし。

 折角の戦力をだぶつかせ続けるのももったいないしね。


 彼らの処遇を決めるのが、今日の一番の目的なのだ。

 僕らは早速、素養持ちの人達に集合してもらっている会議室へと向かうのだった――。

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