樹木守護獣
樹木守護獣、と念じてみると脳内に文字が浮かんでくる。
【召喚可能な守護獣】
ファイアキャット
ウォータードッグ
ウィンドピッグ
アースモール
とりあえず上からということで、ファイアキャットを召喚してみることにした。
パッと光が瞬いたかと思うと……目の前に一匹の猫が現れる!
「みゃああお……」
「わっ、かわいいっ!」
今まで僕のすぐ後ろで影に徹していたアイラが、思わず叫ぶ。
けどその気持ちもわからなくはない。
だって猫、普通にかわいいもん。
サイズは……僕が知ってる成体のものより少し大きいかな?
体色は茶色がかった黄色で、身体には虎みたいな縞模様が入っている。
手を舐め、濡らした手で顔をくしくしとやっているその姿は正に猫そのもの。
これが……樹木守護獣?
まあたしかに、獣ではあると思うけど……。
確認してみると、使った笑顔ポイントは10だった。
とりあえず近付いていってみる。
猫の中には自分のパーソナルスペースを侵されると嫌がる子も多いけど、どうやらこの猫はそうではないらしい。
近付いていき、撫でてみる。
身体を撫でると、豊かな体毛に指先が沈んだ。
「おお……もっふもふだ」
「もっふもふですねぇ」
「ごろにゃあん!」
僕とアイラが二人でなでなでしていると、猫ちゃんがごろごろと喉を鳴らす。
どうやらまんざらでもなさそうなご様子。
とりあえずは、人なつこそうで何よりだ。
でもこれだと、ただの愛玩動物だ。
皆の癒やしにはなるかもしれないけど……樹木守護獣なんて大層な名前がついてるんだから、きっとまだ何かあるよね?
というわけで、世界樹を一本植えてみる。
すると猫ちゃんが、世界樹の方にテクテクと歩いて行った。
猫背な四足歩行でたどりついた猫ちゃんが、そのふにふにっとした肉球で、世界樹にぽむっとスタンプを押す。
すると世界樹に、肉球のようなマークがついた。
焼きごてで押されたみたいに、少しだけ黒く変色したのである。
【樹木守護獣が登録されました】
光の板が現れ、何が起こったのかを伝えてくれる。
なるほど、これで樹木守護獣が登録されたと。
木と樹木守護獣を紐付ける感じなのかな……?
幸い笑顔ポイントにはまだまだ余裕があるので『植樹』を使いながら試してみる。
するとどうやら、樹木守護獣は十本まで木を登録することができるらしいとわかる。
でも登録したから、なんになるのかな……?
色々やってみたが、猫ちゃんが守護に目覚めたりとかすることもなく、ただ樹に肉球マークがつけられただけだった。
これが何を意味しているのかは、いまいちわからずじまいだ。
「あ、そうだ。ファイアキャットって言うくらいだから、火は出せるの?」
「みゃっ!」
ブワッと、ファイアキャットの全身を炎が包み込む。
少し離れたところからでも熱を感じるので、どうやらかなりの高温なようだ。
口から火炎放射をしたり、炎の球を出したりすることもできるみたい。
とりあえず、ウッドゴーレム達と同じように村を守るために戦ってもらったりできそうだ。 近接戦はエレメントゴーレム達に任せて、属性にあった守護獣達と連携して戦わせるのが一番良さそうだ。
「それなら他の守護獣も見ていこうか」
「わんっ!」
「ぶぅっ!」
「きゅうっ!」
「わあっ、全部かわいいです!」
水を出せるわんこと、風が身体の周囲を回っている豚さん、そして地面を掘り掘りするモグラさん。
新たな三種類の守護獣達を樹木守護獣として登録しようとすると、新事実が発覚した。
一本の木につき、登録できる守護獣の数は一匹までだったのだ。
まあだからどうというわけではない。
とりあえず四匹に上限一杯の十本の樹を登録してもらう。
それぞれのマークは犬が犬耳、豚さんは豚の鼻、モグラさんは鋭い爪だった。
なんにせよ、これでまた新たな戦力が増えたぞ。
一体どこと戦争するんだというくらいにどんどん強くなっていくけど……細かいことは気にしたら負けだよね。
村の皆は、彼らを気に入ってくれるかな。
――あ、そうだ。
ハウスツリーの守護獣として登録しちゃえば、一家に一匹ペットを置くみたいな感覚で皆の家に守護獣を置けるんじゃ?
僕はこのアイデアを実行すべく、村の皆を呼び出して守護獣のお披露目会をすることを決めるのだった――。