フレイザードウッドゴーレム
まず最初に、なんとしてでもタイクーンウルフの注意をナージャから離さなくちゃいけない。
それをするためには、タイクーンウルフが脅威を覚えるだけのゴーレムを作る必要がある。
故にストックを全放出する、そして歩きながら素養を使い次々にウッドゴーレムを生産していく。
もちろんタイクーンウルフを相手にするには心許ない戦力だが、今したいのは足止めだ。
「ほらほら、こっちだよっ」
「がるるっ!」
僕自ら注意を引いて――って、危なっ!?
樹木間転移を発動させ、近くのウッドゴーレムに転移。
ふぅ、危ない……やられるところだったよ。
「ぐるるっ……」
けれど僕自ら近付いて囮になったおかげで、タイクーンウルフの注意は完全にこちらに向いてくれた。
僕の役目は、アイラとナージャが必殺技を放つまでの時間稼ぎ。
けれどこのままじゃあ、僕のポイントが尽きる方が早い。
それなら……いちかばちか、あいつを使うしかないか。
発動させるスキルは――交配。
僕は交配によって作った二体のファイアウッドゴーレムを、更に交配する。
すると纏う炎の色は青くなり、より巨体なファイアウッドゴーレムが生まれた。
さらに今度は青くなったファイアウッドゴーレム同士をかけ合わせると、白い炎を身に纏うゴーレム――ブレイズウッドゴーレムが誕生した。
同様にウォーターウッドゴーレムも交配。
二体のウォーターウッドゴーレムを掛け合わせると、ウォーターウッドゴーレムは水だけではなく、氷を身に纏うようになる。
そしてそのウッドゴーレム同士を更に掛け合わせると、完全に全身が氷で覆われたアイスウッドゴーレムが生まれる。
ここからが僕のとっておき。
制限時間つきで使うことのできる、僕の出せる最強の駒だ。
僕は更にその二体のゴーレムを――結合し、交配させる。
このブレイズウッドゴーレムとアイスウッドゴーレムは、ただ交配することはできない。
相反する属性を持つ二種類のゴーレムを交配すると、お互いが反発しあって何もできぬまま身体が壊れてしまうのだ。
けれどこの二体は、実は結合させることができる。
無傷の状態の二体のゴーレムを結合させ、更に交配させれば、合体させることは可能なのだ。
無傷のブレイズウッドゴーレムの右半身が、炎に焼かれ焦げ落ちていく。
アイスウッドゴーレムの左半身が、水に飲まれて消えていく。
そして自ら身体を崩壊させた二体のウッドゴーレムが――重ね合い、新たなゴーレムへと生まれ変わる。
パアッと紫色の光が生じ、目を開けていられないほどの眩しさがやってくる。
光が収まり、ゆっくりと目を開ける。
そこにいたのは――燃える右半身と、雪を吐き出す左半身を持った新たなゴーレム。
自ら身体を崩壊させ無理矢理成し遂げた――結合と交配によって生み出した、二つの属性を併せ持つゴーレムが現れた。
僕が用意していた、とっておきの隠し球。
その名は――。
「これが僕の全力……フレイザードウッドゴーレムだ!」
「合体しましたわあああっっ!?」
「あ、ちょ、バカッ!」
ギギギ、と油の切れたゼンマイ人形のように後ろを振り返る。
するとそこには、事前に打ち合わせをしていた時よりもずっと近くにいるホイールさん達の姿があった。
み、見てたんですか……。
って、それどころじゃないっ!
「行けっ! フレイザードウッドゴーレム!」
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