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エレメントウッドゴーレム


 ウッドゴーレムは一体ずつだとそれほど強くない。

 ただの盗賊なら問題なく倒せるだろうけど、ちょっと強い冒険者や素養持ちがいたら、あっという間に倒されてしまう。

 ウッドゴーレムだけで村の防衛をしようと考えると、それは大変よろしくない。


 だがそんな問題を解決するのが――交配スキルである。

 ハウスツリーが色んな木と交配を行うことでその大きさを変えるように、ウッドゴーレムも交配を行う木の種類によってその強さを変える。

 ゴーレムの強さは素材と環境に依存するというシムルグさんの言葉は、まったく正しかったというわけだ。


 色々な木で試してみたが、やっぱり一番強くなるのはエレメントツリーと掛け合わせた時だった。

 というわけでまずは素養を使って木を植え、それを交配で掛け合わせる。


 まとめて説明した方がわかりやすくインパクトもあると思うので、とりあえず四種類全部出してみることにした。


「これが返信の第一段階――エレメントウッドゴーレムだよ」


「エレメント……」


「ウッドゴーレム……」


 新たな村人の皆が見つめる視線の先には、四体のゴーレムがいる。

 全身が燃えている、ファイアウッドゴーレム。

 ウッドゴーレムの体表に水が纏わり付いている、ウォーターウッドゴーレム。

 風が周囲で渦を巻いているウィンドウッドゴーレム。

 そして土を全身に纏いクレイゴーレムにしか見えないアースウッドゴーレム。


 この四種類のゴーレムを見ると、流石にシムルグさんも驚いていた。


「ウッディはとうとう……新たな魔物を生み出せるようになったのであるな……」


 シムルグさんはもう何も言うまいという感じで首を振っていたっけ。


 たしかにこれは考え方によっては、ウッドゴーレムという魔物を使って新たな魔物を生み出したと言えなくもない。


 自分で言うのもなんだけど、僕の力はどんどん強化されて強くなっている。

 『植樹』の素養のことは、ますます王国の人達に知られるわけにはいかなくなっちゃったな……。

 今まではまだ食料生産の確保だったけど、今回のウッドゴーレム関連はもろ武力に関わる部分だからね……。


「すごいな、ゴーレムが燃えている……」


 ナージャの言葉を聞き、ハッと現実に帰ってくる。

 今はこのゴーレム達の強さを確かめる時間だ。


「このエレメントウッドゴーレム達は、大体Cランク冒険者パーティーの強さがあるよ。といってもCランクもピンキリだから、『白銀の翼』ならまず間違いなく倒せると思う」


「ちなみにこの四体で同時に襲いかかったら、どうですか?」


「それは多分、ウッドゴーレム軍が勝利を収めるだろうね。ちょっとデモンストレーションしようか……戦ってみて!」


 僕の言葉にエレメントウッドゴーレム達がペアを組んで戦闘を始めた。


 当然ながら彼らは、自らの身体に属性を宿している。なので魔法……というか、魔力を使った属性攻撃を使うことができる。


 魔法よりも原始的でシンプルな、属性変換をした魔力を叩きつける攻撃らしい。


 例えばファイアウッドゴーレムとウォーターウッドゴーレムの戦いを見てみよう。


 ファイアウッドゴーレムが右側の腕を振りかぶり、ストレートを放つ。

 そして……ボッとその腕に一際強い炎が宿った!


「うおおおおおおっっ!! かっけえええええぇぇっっ!」


「たしかにこれは、なかなかカッコいいじゃねぇの」


「火のパンチ……そう、あれはファイアパンチだっ!」



 神獣様達大興奮だ。

 お父さんと一緒に観劇をする親子の様子に似ている。


 そしてなぜか、攻撃に名前が付けられていた。

 ただ火を纏って殴っているだけなんだけど、名前が付くだけでなんだか必殺技みたいでカッコいい。


 対するウォーターウッドゴーレムは両手を高く上げ、そのまま勢いよく下ろす。

 すると滝のような水が現れ、ファイアウッドゴーレムへと降り注いだ。


「うおおおおおおおおっっ! 水だあああああっっ!」


「ちょっと、危ないからあっち行っちゃダメよ!」


「ならばあれはさしずめ……ウォーターフォールというところかしら?」


 神獣様達は変わらず大興奮。

 今すぐゴーレム達のところに向かおうとする子供達を、キャサリンさんが抑えていた。

 子育てって大変そうだなぁ。


 そしてお嬢様モルモットも魔力攻撃に名前を付けていた。

 安直だけど悪くない。

 お嬢様だから戦いとか嫌いなのかと思ったけど、ふんすふんすと鼻息が荒いので、どうやら楽しんでくれているみたいだ。

 やっぱりかわいいな……あとでもふもふさせてもらえないだろうか。


 ファイアパンチとウォーターフォールがぶつかり合う。


「「うおおおおおおおっっ!!」」


 神獣様達の熱気に当てられてか、村人候補の皆もなぜかテンションが爆上がりしていた。


 炎の拳は、質量を伴う水に掻き消され、その勢いを一気に失った。

 けれどファイアウッドゴーレムは更に拳を前に出す。


 ウォーターウッドゴーレムはそれに合わせて、己の拳を突き出した。

 そして両者のパンチが激突する。


「「うおおおおおおおっっ!!」」


 そこから始まるのは、ガチンコの殴り合い。

 魔力攻撃の威力はそこまで高くないから、ぶっちゃけ攻撃手段として一番強いのは殴打なのだ。


 ドドドドドドッ!


 乱打乱打乱打、周囲の被害などお構いなしにお互いが、相手のことを殴って吹き飛ばし合う。

 技術なんてものはない、純粋な力と力のぶつけ合い。


「「うおおおおおっっ!!」」


 けれどだからこそ、皆夢中になって戦いに見入っていた。

 普段見れないものを見たいという欲求は、人も神獣も変わらないらしい。


 戦い続けていくうちに身体はボコボコと凹んでいく。

 そしてとうとう、ファイアウッドゴーレムの右腕が吹っ飛んだ。

 どうやら殴って殴られてを繰り返すうちに、耐久に限界が来たらしい。


 ファイアウッドゴーレムはそのまま後ろに下がる。

 それを追いかけようとするウォーターウッドゴーレムを命令で止めさせる。


 ファイアウッドゴーレムの向かった先は、僕が事前に置いていたファイアツリーだ。

 ウッドゴーレムは木を消費することで傷を治すことができる。


 ファイアウッドゴーレムは一瞬のうちに元通りになり、再びオーディエンスが湧く。


 傷ついては治し、傷ついては治し。

 もう一組の方のウィンドウッドゴーレムとアースウッドゴーレムの戦いの方も同様に楽しんで。

 大満足の結果だ。

 ウッドゴーレムのお披露目は、大成功に終わり、皆がウッドゴーレムを受け入れる土壌ができた。


 これで新しい村に行っても、ウッドゴーレム達を恐れることはなくなりそうで一安心。


 エレメントツリーと交配することで、一段階強くなったウッドゴーレム。

 本当はもう一つ上があるんだけど……皆疲れてるみたいだし、それを見せるのはまた今度でいっか。

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