ウッドゴーレム
シムルグさんと一緒に調べてみることしばし。
ウッドゴーレムに関することは大体調べられた。
まず最初に結論から言おう。
このゴーレム……村を守れる番兵としては超優秀だ!
僕は次の日の朝、デモンストレーションを兼ねて皆の前でこのウッドゴーレムの力を見せることにした。
怖がられるかもしれないけど、事情が変わったのだ。
このゴーレムは今後、村の番兵として頑張ってもらうことになる。
最初は受け入れられがたいかもしれないけれど、早いうちに彼らにも慣らしておいた方がいいという判断である。
「ウッディ、今回は何をしでかすつもりなんだ?」
「しでかすって……人聞きの悪いこと言わないでよ」
「そうですよナージャ、ウッディ様がひどいことするわけないじゃないですか。大丈夫ですよウッディ様、私はあなたがしていることが全て領民のためのことだとわかっていますからね」
「う、うん……ありがと、アイラ。あはは……なんだか照れちゃうな」
アイラの全幅の信頼が、妙にこそばゆい。
顔が赤くなっていないか心配だったので、ちょっと俯くことにした。
「(はぁ~かわいいですねウッディ様)はぁ~かわいいですねウッディ様、よしよし」
「心の声がめちゃくちゃ漏れてるぞ駄メイド! クソッ、ズルいぞ、急にウッディの心に寄り添い出すとは」
「今まで敢えて少し冷たくしていたのは、こうして落差を演出するためだったのです」
「――アイラ、お前はなんという策士なのだ……おそろしいやつ!」
僕は頬の熱が取れるのを待ってから、気を取り直すことに成功した。
そしてぐでーっとしている神獣様達を見て優しい目をしている村人候補の皆に視線を向ける。
「皆、新たな村の候補地でどうやっていくか心配していた人達も多いと思う。砂漠には危険がいっぱいだからね。けど……安心してほしい! その理由を、今から皆に見せよう!」
僕は『植樹』の素養を発動させ、一体のウッドゴーレムを召喚した。
結界で守られた空間の中に突如として現れた魔物。
当然のことながら、皆はパニックに陥った。
「きゃあああああっっ!」
「魔物だっ! 魔物が出たぞっ!」
けれどもこれは想定内。
僕は隣にいる頼りになる婚約者を、今回も頼らせてもらうことにした。
「ナージャ、お願い」
「ああ、任せろ――――喝ッ!!」
ビリビリビリッ!
彼女の一喝が、音の衝撃波となって周囲に拡散した。
『剣聖』であるナージャは、その喝に更に気迫のようなものを乗せていたため、何をするかわかっていたはずの僕ですら思わずビビってしまうくらいの迫力があった。
彼女の音の衝撃は大気を震わせ、騒いでいた人達の肌を粟立たせる。
先ほどまで樹結界を出て行きかねないほど動揺していた人達は、皆言葉を失っていた。
まだ衝撃が抜けきらず、心がついていっていない彼らに向けて僕は語りかける。
「落ち着いて話を聞いて下さい。あれは僕が素養で生み出した木です」
「木……あれは木なのか?」
「シッ、バカ剣聖、余計なこと言わないっ!」
後ろでごにょごにょ言っているナージャ達の方を振り返る余裕はない。
僕はとりあえず、ウッドゴーレムに命令を出していく。
「ジャンプ! ジャンプ! それからターン!」
僕の命令通りに、ウッドゴーレムが飛んだり跳ねたりしだす。
動かしているうちに、なんだか僕も楽しくなってきた。
もう一体ゴーレムを召喚し、二体のゴーレムに手を繋がせて踊らせる。
踊り自体はぎこちないけれど、僕の制御下にあるのは明らか。
皆その不細工なダンスを見ているうちに、ぶつぶつと文句を言う人もいなくなった。
とりあえずウッドゴーレムが敵でないことを納得してもらえたらしく、皆は僕の言葉を待っていた。
「これはウッドゴーレムといって、僕が素養で生み出すことのできる木の兵士です。戦闘能力は大体Dランク冒険者パーティー程度。皆さんにわかりやすい言い方をするのなら、公爵家騎士団の新米騎士くらいの強さと思って下さい」
ちなみに強さの判断を下してくれたのはシムルグさんなので、評価はかなり正確なはずだ。
「木の兵士……」
「フルーツだけじゃなくて、兵士も出せるだか……」
「ちょっと待て。新米騎士と同じって……めちゃくちゃ強くないか?」
どうやら冒険者のランクより、騎士で伝えた方がわかりやすかったらしい。
たしかに彼らの日々の生活に根付いているのは、根無し草の冒険者ではなく警邏や罪人の逮捕なんかもすることのある騎士達の方だもんね。
「ウッディ、ちなみにこれも……」
「うん、果樹と同じ消費量で出せるよ」
「……フルーツ武装国家、本当に作れそうですね?」
「……たしかに」
このウッドゴーレムは、そこそこ強い。
一体いれば、盗賊の集団を倒せちゃうくらいの強さはある。
そんな魔物(厳密には魔物じゃなくて魔道具らしいけど)を、笑顔ポイント4で生産できるという事実。
実際問題、これはヤバい。
今の僕は最低でも一日に200ポイントはたまるから、余っているポイントを全て生産に費やせば一日五十体は生産できる計算だ。
一ヶ月ウッドゴーレムの生産に専念すれば、千五百体作れることになる。
まあそんな上手くはいかないだろうけど……にしてもある程度数を揃えることができる兵士ユニットが手に入ったっていうのはデカい。
「替えが利くから、樹木配置と組み合わせてこんな風に使うこともできる」
僕はまず樹木配置を発動。
同時にウッドゴーレムの胸のあたりのスペースにファイアマロンを入れる。
そしてウッドゴーレムを遠くに移動させてから……ドオオンッッ!
エレメントフルーツを使って自爆させると、光点が一つ消えた。
そう、このウッドゴーレムはこんな風に自爆特攻をさせることができる。
更に樹木配置を使えば活動しているウッドゴーレムの場所は把握できるので、偵察に出すこともできる。
ウッドゴーレムが倒された場所の知覚には敵の居るとわかるわけだ。
更に更に樹木間転移の対象にはこのウッドゴーレムも選ぶことができるため、とにかく先に進ませてから行ったことのない場所に転移するようなことだってできる。
一体一体だとそこまで強くはなく、純粋な戦闘能力だけだとちょっと微妙かもしれないけど。
物量で勝負できるくらいコスパが良く、僕の素養と手に入ってきたスキルと組み合わせることで無限の可能性がある。
これはいい木だ。
「ちなみにこのウッドゴーレムは、まだもう二段階返信を残していますよ、うっふっふ……」
「な……なんだとォッ!?」
驚くナージャにふふふと笑いかけてから、僕は新たなウッドゴーレムを生み出す――。
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